御伽噺に導かれ異世界へ

ペンギン一号

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まさかの地球で激闘が

突如現る女の子

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「ただいま」「「ただいまー!」」
二人の元気な挨拶と共に屋敷の中へと入っていった。
「お帰りですぞ、買い物はどうだったのですかな?」
「ああ、二人ともいい子にしていて問題もなかったよ」
俺も久しぶりに色々見ることが出来て楽しかったしな。

「二人ともきちんとご主人の言う事を守れたようですね。偉いですわよ」
「「うん!フォル先生との約束守ったよー」」
いつのまにか、うちのひよこは先生に昇格していたようだ。
んー…子供の前で指導するひよこか…シュールだな。

「まぁ、色々と買ってきたからまずは片付けをしようか」
開封したりしないといけないものもあるから、時間かかりそうだしな。

皆でワイワイと開封していく。コアとチコは買ってもらった品々をフォルとピーに笑顔で自慢していた。
それを温かく見守る俺たち。片付け作業は騒がしくも楽しい雰囲気で進んでいった。

ふぅ…これがラストか。最後の一つを片付け終わりようやく一息着いた。
「お疲れ様ですぞ」
おっ、有難いな。ピーがお茶を持ってきてくれる。
あー、疲れた体にお茶が染み渡る。美味いなぁ…
和やかな空気が居間を包んでいる。

初めてのお出かけで疲れたのか、コアとチコは座布団に二人纏まり眠っている。
いろんなとこに行こうと二人とも張り切ってたもんなぁ。
「悪いがピー、二人に布団をかけてやってくれ」
「わかったのである」
そういい部屋から出て行った。


あ、そういや帰ってからずっとにゃん吉の姿を見ていないような…
あいつどうしたんだ?何時もなら帰ってきたと分かれば誰よりも先に来てくれるはずなのに。

「フォル、そういえばにゃん吉の姿をずっと見てないんだが何処にいるんだ?」
「私が最後に見たのは、ご主人の寝室に入っていく所でしたわよ」
もしかして…寝室で寝てしまったのかな?もうそろそろご飯だし呼びに行ってやるかな。

「もうそろそろご飯だし、一緒に起こしに行ってあげようか」
「そうですわね、もし食べられなければ、にゃん吉の事ですもの、起こさなかったご主人を必ず怒りますわ」
だろうな、にゃん吉の奴ピーのご飯大好きだもんな。確実に俺に当たってくるだろうな。


俺たちは揃い寝室へと向かう。
だがそこに居たのは…
「ここは通さないにゃ!!」
「いえ、私は中の布団を取りたいだけですぞ」

いきり立つにゃん吉と、困り顔のピーという珍しい光景が繰り広げられていた。

「ダメにゃ!この中には入れないにゃ!!」
「私は中の者ではなく布団しか取らないので通して頂きたいのですぞ」
にゃん吉がピーのご飯以外でこんなに粘るのは珍しい、だがもうそろそろ止めてあげないとな。

「にゃん吉、どうしたんだ?この中に何かがあるのか?」
「にゃ!?ご主人…いつのまに帰って来てたのにゃ」
俺が帰ってくるのに気づかないほど中で何かをやって居たのか。

「結構前に帰って来たぞ、それに気づかないなんて中で一体何をやって居たんだ?」
「にゃー…」
言葉を詰まらせるって事は、何かを壊したとかかな?まぁ、壊れたものはしょうがないしな。

「ほら、何があっても怒らないから中に入れてくれよな」
「本当にゃ…?」
そんな、壊したくらいじゃ怒らないぞ。この家には高い物なんて無いしな。

「ああ、約束だ。だから通して欲しいな」
「分かったにゃ…」
横にずれ、道を開けるにゃん吉。
さて、入るとしますかな。漸くドアを潜る。

入った室内は起きた時とほとんど変わっておらず、何も壊れた場所は無かった。
見渡しても、物品に変わったものはない。
だが、ただ一つ朝とは違った所があった。
それは…





ベットに見知らぬ女の子が眠っていた。


ちょ!?誰だよこの子は!
まさかの展開に紡とフォルは盛大に戸惑う。
「にゃん吉、この子は誰だよ」
「まさか!何処からか攫って来たなんて事は無いですわよね」
見たこともない寝ている女の子に俺たちは最悪の展開が頭をよぎった。
まさか…誘拐したわけじゃないよな…

「そんなことしてないにゃ!!」
あー…良かった。もし誘拐してようものなら、大変な事になっていたはずだ。
俺とフォルは露骨にホッとする。
でも、それなら逆に疑問が残るんだよな…

「だったらにゃん吉この子は何処で拾って来たんだ?」
「にゃーの、お気に入りスポットである木の下に丸まって寝てたにゃ」
あー、庭のあの木の下か。にゃん吉が一日に一度はあそこでまったりしてるので紡はすぐに分かった。

「出会った時この子は怪我をしてたにゃ。騎士として怪我した子供をほっとけなかったにゃよ…」
そっか、それならばしょうがないな。
「にゃん吉、偉いぞ」
俺は優しく頭を撫でてやる。
「怒らないのかにゃ?」
怒るわけないじゃないか、にゃん吉が自主的に行動したんだ、それを尊重してあげたいし。それに…

「にゃん吉はこの子を助けた訳だ、そんなにゃん吉を俺には怒れないよ。
逆に子供を助けたにゃん吉を誇らしく思う。偉いぞ、よくやった」
「良かったにゃー!!」
叫ぶと共に俺の胸へとダイブしてくる。
どうやら、かなり不安だったみたいだな。にゃん吉が抱きつく胸の部分が軽く湿っていた。



「安心したらお腹が空いたにゃー!早くご飯食べるにゃ!」
そう言いながら走り出すにゃん吉をやれやれといった表情で追っていくフォル。
それを見つめながら後ろをピーと追いかけてゆっくり居間へと向かっていく。

「それにしても、ピーはあの女の子の事知っていただろう?」
「…どうしてであるか?」
それは簡単だ。
「ピーだけ初対面の女の子に驚いてなかったし、俺が来た時に言ってたろ、『中の者』って。
中に居るのが女の子だと知らないと、そんな事言えないしな」
「ふむ、正解である」
やっぱりか…だったら、
「先に伝えてくれても良かっただろうに」
「紡の反応が楽しみで、つい言いそびれたのですぞ」

はぁ…この性悪ペンギンが…
「大丈夫ですぞ、あの子からは悪意を感じないのである。
せっかくにゃん吉が助けた命、紡も助けてやるのであるぞ」

それだけを残しピーは先に向かっていく。
まぁ、ピーが言う事だし一先ず信じてみようかな。

チラリと眺める視線の先、ベットの上でぐっすりと眠る女の子はとても心地よい顔で眠っていた。


―――――――――――――――――



「ここは…何処です…?」
翌日になって漸く女の子が目を覚ましたようだ。
「んにゃ、やっと起きたにゃー!」
かなり心配だったのであろう、にゃん吉は昨晩から付きっ切りで看病していた。

「猫さん?」
「にゃーはにゃん吉にゃ!」
胸を張りそう語るにゃん吉は女の子が目覚めたことが嬉しいのかかなり生き生きしている。

「にゃん吉さんが助けてくれたのです…?」
「にゃーだけじゃないにゃ。時々紡も様子を見に来ていたにゃ」
紡も心配で何度か確認に訪れていた。

「紡さんです…?」
「んにゃ、にゃーのご主人にゃ!とっても優しいにゃよ」
どうやら、その一言で安心したようで漸く少女の顔に安堵が浮かぶ。
そこへ聞こえてくる足音。

「どうやら紡が来たみたいだにゃー」
その声と共に扉が開かれる。
「お、どうやら起きたみたいだな」
よかった、なかなか起きないから心配だったんだよな。
ん?どうした?

紡が室内に入ってから女の子は明らかに狼狽した表情をしていた。
「どうした?俺の顔に何かついているか?」
そう言いながら女の子に近づく。すると…

「嫌っ!来ないで人間!!」
うおっ!?いきなりだな。俺は部屋に普通に入ってきたつもりなんだがな。
明らかに女の子は怖がっている。
理由は分からないが、震える体で必死に紡を睨みつけていた。

「あー、大丈夫。これ以上近寄らないからさ」
はぁ…女の子に怯えられるのって思いの他に傷つくな。
紡は傷ついた心で女の子に必死に笑いかける。

「ここからでいいからさ、自己紹介でもしようか。俺は御伽 紡。ここにいるにゃん吉やほかに家にいるやつらの仲間をしている」
頼むぞ。これで話すら拒否されたらもうお手上げだ。
願いが叶ったのか、未だに怯えながらも女の子は口を開く。




「私には名前無いです…。一応、人間達は私の事を妖樹って呼んでいたです…」

ふむ、妖樹ね。妖樹…。妖樹!?待て待て、妖樹って事は…
「もしかして君は妖かい?」
女の子はこくりと頷く。
あー、やっぱりか…
【妖樹】、妖気の影響にさらされたために変質し、妖としての自我を手に入れた樹木。
確か、戦闘力は低く、問題を起こすような妖では無いため式神としても見向きされない妖だったはずだが…。

「そうか、どうして怪我をしていたんだい?確か、妖樹は森の中でひっそりと過ごす、無害な妖のはずだったと思うけど」
妖樹がいる森はその影響か、かなりの実りを生み出すため、地域的には神聖視されているほどだったはずだ。
狙われるような妖では無いだろうに。

「いきなり…人間が襲ってきたのです…。私は何も…悪い事せずに…森の皆と過ごしてただけなのに…森を破壊しながら…私を殺しにきたです…」
その一言で静まり返る室内。眉間にシワを寄せたまま、紡は…

そうか、そのために俺が近づいた時に怯えていたんだな…
その陰陽師のせいで平和な日常を壊され、殺されかけながらもここまで逃げてきたのか。
昔の俺みたいに…


無意識に周囲に威圧を放っていた。

「バカご主人!やめるにゃ!!」
妖樹へと抱きつきながら、にゃん吉は俺に叫ぶ。
「っ!ごめん!」
あー…やらかしたな…無意識のうちにキレていたみたいだ。
怖がって無いといいんだけど…

「にゃん吉さん…大丈夫です…この人私の為に怒ってくれたです…
にゃん吉さんの言う通り…この人優しい人です…」

にゃん吉に抱かれながら話す女の子は紡が部屋に入って初めて、笑顔に包まれていた。
その笑顔は太陽のように暖かく、向けられた紡は決断する。

「よし、決めた。君はここにいるといい。ここが嫌になるまでこの家にいて構わないよ」
俺にはこんな良い子を放り出すなんて出来ない。
「賛成にゃー!!」
にゃん吉もはしゃいで喜んでいる。

「だめ…私は命を狙われてるです…迷惑かけれないです…」
「大丈夫、もし襲われたとしても返り討ちにしてやるから」
どんなのがきても、ぶっ飛ばしてやる。
「にゃーも戦うにゃ!」
隣で、「にゃっ!にゃっ!」と言う掛け声と共にシャドーボクシングをするにゃん吉。

「安心してくれ、必ず君を守るから」
「っ…はい…よろしくお願いするです…」

一人での戦い。急に見知らぬ人間から命を狙われ、ここまで気を張り生きるためと小さな体で頑張ってきた女の子は、漸く安心できる場所にたどり着くことが出来た。
気が緩んだからか、静かな部屋の中、笑顔で女の子は泣いていた。


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