御伽噺に導かれ異世界へ

ペンギン一号

文字の大きさ
44 / 61
まさかの地球で激闘が

激怒渦巻く戦場で 2

しおりを挟む




先に動き出したのは、皇牙からであった。
「優華、お前は遠距離で牽制してくれ!『呪符、焔装』。焔聖、反対側から攻めろ!」
「がう!」
刀に焔を纏い、紡へと切りかかる。
逆側からは式神と思われる虎が牽制をかける。
「わかりました、『呪符、雪月花』」
その後ろでは、優華が雪の花弁を宙に浮かべている。
「その程度…うおっ!」
目の前に迫る皇牙へと、ぶん殴ろうとするが、その手に合わせるように雪の花弁が数枚飛んでくる。
皇牙の刀に合わせたり、虎の攻撃に隠れるように、ピンポイントで優華の雪の花弁が狙撃を行い、虎か皇牙を潰そうとすると、回避の時間を稼ぐために優華が牽制を飛ばしてくる。
へぇ、なかなかいい感じに連携してくるな。
震えながらも、必死に抗う二人と一匹に、紡は感心していた。
紡自体、人と合わせて戦った経験がほとんど無く、基本的にソロで戦って居るため、人と合わせる大切さを感じる。

だが、
「その程度じゃ、俺は倒せないな」
紡には届かない。

【お菓子魔法式 戦闘術追尾式黒弾 ホーミングかりんとう
硬質化したかりんとうが敵へと飛んでいく。自動追尾機能が付いており、空中で軌道を変えながら敵に突き刺さる。着弾時、爆発する。

皇牙の振り下ろしと、虎の斬撃が、空中に浮かんだかりんとうに阻まれる。
「ちっ!なんだよこの黒いやつ!!」
叫ぶと同時に、皇牙と虎が距離を取る。
ふっ…距離をとったな。それじゃあ、俺の番だ。かりんとうの雨に踊るがいい。
「「「!?」」」
全員に向かい、かりんとうが高速で飛んでいく。
「くそ!こんなのどうすりゃいいんだよ!!」
あーあ、刀でかりんとう切ろうとしてるよ…そんなことしたら…
「ドカンっ!!」
皇牙が切られたかりんとうと共に吹き飛んでいく。
残念ながらこのかりんとう爆発するんだよね。

「皇牙!」
「大丈夫だ、油断すんな!」
んーイメージが微妙だったか、威力はそこまでないみたいだな。
この魔法気に入ったし今度練習しようかな。
紡にとって、この戦いは実験を含んでいた。

まぁ、でもいくら威力が弱くとも…
回避を続けていた虎が空へと跳ぶ。
その途端、戦場を駆け巡っていた全てのかりんとうが一斉に上空の虎へと軌道を変えて飛んでいく。
「ドドドドっ!!!」
着弾したと同時に爆発し、上空では虎を巻き込みながら連鎖爆発を繰り返していた。
数打ちゃまぁまぁの威力だな。
空から、ボロボロになった虎が降って来た。

「っ…焔聖っ!」
皇牙が紡を睨みつける。
ふっ、残念だったな虎はもうダウンだ。
「皇牙!一旦焔聖を下げなさい!」
その一言により、ボロ雑巾のような虎がふわりと消え去っていく。


「さて、もうそろそろ俺も真面目に戦うとしようかな」
紡は上空に手を掲げる。



【お菓子魔法式 広域殲滅術 飴に願いを】
水飴を多数上空に生成し、空気抵抗により、高温になりながら降り注ぐ。



鬱陶しい後ろのやつからだ。
さあ、飴の流星へと願いをかけろ!無事に当たらない事を願うがいい!!
紡が手を振り下ろすと共に、一帯を爆撃していく。
黒く変色した水飴はかなりの熱量を持ちながら、広範囲を染め上げていく。

「きゃっ!?」
「優華!!」
必死に回避してはいたが止まぬ水飴の豪雨に、ついに優華の肩に降りかかる。
当たった場所は、重度の火傷により灼け爛れ、皮膚が溶けている。
さらにたちが悪いことに、高温の飴は肌へとへばりつき、中まで熱を浸透させていく。

優華は瞬時に肩へと雪の花弁を当て冷ましていく。
「熱っ…『治癒符』」
そして、ふところから一枚の札を肩に貼り付ける。
すると、札は崩れ去り、白い光と共に肩を治療する。

「へぇ…回復手段があるのか。それはずるいな」
俺には回復ないしなぁ。
凶悪魔法を放ちながらも、紡はそんな事を考えていた。


「優華、大丈夫か?」
「ええ、なんとか。でも、あの狐面はかなり危険よ」
「…そうだな。どうする?」
「すこし、私に任せてもらえませんか?」
そう言い、優華は紡の元へと近づいていく。

ん?いきなりどうした?
戦闘中にも関わらず、急にこちらに近づいてくる少女。
まだ、戦闘中だよな?さっき俺あの子の肩焼いたし…諦めたのか?

「どうした?死ぬ覚悟が出来たのか?」
「いえ、少し貴方と話がしたくて」
おいおい、まじかこの子は。さっきまで殺し合いしてたやつに話しかけてくるとか。

「んー…俺は話す事ないけどな」
「そうでしょうね。実力差は歴然。
正直、私には貴方が先程使った妖術も理解できていない。不明な力を持った貴方に、このまま戦い続けても私達はただ残酷に殺されて終わるだけ。
そんな勝てる貴方が私たちに何か話すこともないでしょう」
まぁ、そうだろうな。見たところそこまで強そうじゃないし。正直、テルの一件が無ければ、こいつらじゃ戦おうとすら思えないしな。

「それで?それを言いに来ただけじゃないんだろ?」
「ええ、私達は、妖樹を諦めますので、私達を見逃してもらえませんか」
ふーん、それはいくらなんでも…
「調子のいい話だな。テルを殺しに来て、自分が殺されそうになったら見逃してくださいって。それが本気で通ると思ってんのか?」
通るわけがないだろ。そんなふざけた提案。
紡の威圧が強まっていく。

「わ、分かっています!ですので、もし見逃していただけるのであれば、貴方にはこれを差し上げます」
そう言いながら紡の目の前に手を差し出す。
それは…


龍筆りゅうひつ(隠)】:龍の髭を使い作られた筆でありかなりの力を持つ。
この筆で書かれた文字にかなりの力を与え、文字を昇華させる。
筆自体の力のためか軽い隠匿がかけられている。



あれー??これ見たことあるぞ??
紡は嫌な予感がする。

「これは、天災である龍の素材を用いて造られた筆です。妖力を高める効果を持つこの筆を、見逃して頂けるのであれば差し上げたいと思います」
後ろでは、話を聞いていた聖牙が息を飲む音が聞こえてくる。
それ程この筆は希少であり、手に入るようなものではない。

だが、紡は別の意味で息を飲んでいた。
あれー?この子どっかで見たことあるよな…
いや、まだだ。まだあのこと決まったわけでない!

「聞きたいんだが、これを何処で?」
「とある文具店で出会った優しいお兄さんのお陰で、奇跡的に手に入れることができました」



…あー、そんなことあったなー。
って!やっぱりあの時の少女か!?
まじかー…そんな偶然ってありかよ…

「そ…それは、いい人もいたもんだな」
「ええ、とても優しい方でした」
残念だな少女よ。その優しいお兄さんはさっきまで君の肩を焼いていた人だぞ。
うわー…それにしてもどうしようか。
なんかこのまま戦うって感じでもなくなって来たし。
気まずいし早くテルを連れて帰りたいな…

「そ、そうか、だが、俺はその筆は必要ない」
この子に選んであげたものを、選んだ俺が奪い取るとか…いや、ダメだろ。
「え…でも、私が差し出せるものはこれしか無いです…」
いやいや、そんな泣きそうな顔になるなよ!

「あー…というか、何でお前らはテルのことを殺そうとしていたんだ?」
「…私の家は、代々陰陽師をしております、【巫家】と言います」
うわー、陰陽師の名家じゃないですか…
「今回当主の指示により、修行のために妖樹討伐を指示されまして…
分家の者と共に討伐に赴いたのです」
「分家の者があそこの奴なら、君は…」
「ええ、私は巫 優華 これでも一応、次期当主です」
ちょ!本家の者どころか、巫家の次期当主かよ…
何でよりにもよってそんな大物がくるかね…

「はぁ…次期当主ならさ、もっと自分の行動に責任を持とうや。
妖を滅するのが陰陽師かもしれんが、妖樹は無害な妖だ。
それを滅するのであればそれ相応の覚悟を持て」
そう言い放つと優華は黙り込む。それに見かねたのか、後ろの少年が話に参加してくる。

「俺たちはただ妖を滅するために来ただけだ。
感謝されても、そんな風に言われる事はないだろ!」
なるほどな、お前はそう考えてテルを甚振っていたわけか。
「もしだ、お前が普通に生活していて、急に殺されかけたらどう思う?」
「そんなのそいつをぶっ殺すだけだ」
ああ、そうだな。俺もそう思うし、殺しに来たんだ、逆に殺されても文句はないだろう。
だが…
「それとお前らがテルにした事、何が違う?」
「っ…」
その一言に押し黙る皇牙。

そうなんだよ、お前らがやったのはただ普通に過ごしていた奴を殺そうとしたのと同じなんだよ。
「もし、その殺そうとした妖が害ある者であればお前達は感謝されるだろう。だが、妖樹は無害な妖だ。俺みたいに助けたいと思う奴が居る可能性だってある。
お前達はそんな者と敵対する事を考えて無かったわけだ。
そして、現状は、逆に殺されそうになり、見逃してもらおうとしている。
それを俺は覚悟が足りないって言ってるんだ」

言い返すこともなく、二人は俯いている。
はぁ…最近の陰陽師ってこんな奴らばっかりなのか?面倒くさすぎる…

「殺しに来たなら、殺される覚悟をもて、それが殺す者の責任であり、お前らに足りないものだ」

「申し訳ございませんでした」「すみませんでした」
二人は耐えきれずに紡へと頭を下げる。
まぁ、俺はただ二人をボコっただけだから全然いいんだが…
「俺はいいが、テルにはきちんと頭を下げてこい。許してもらうまで戻ってくるなよ」
テルには謝ってもらう。それだけは譲らない。


二人は納得したように頷き、テルの元へと向かおうとする。
はぁ、漸く終わったか…街中をずっと走り回ってたし早く帰って風呂入りたいな…
そんな事を考えながら空を見上げ紡は黄昏て…








「見つけたにゃー!!!」


終わった戦場に現れた再度の乱入者。それにより、終わったと思われた戦場がまた混乱に包まれていく。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。 知らない生物、知らない植物、知らない言語。 何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。 臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。 いや、変わらなければならない。 ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。 彼女は後にこう呼ばれることになる。 「ドラゴンの魔女」と。 ※この物語はフィクションです。 実在の人物・団体とは一切関係ありません。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される

希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。 ​すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。 ​その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。

処理中です...