御伽噺に導かれ異世界へ

ペンギン一号

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まさかの地球で激闘が

トレジャーハンターちびっ子隊

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紡が案内されたのは、最初の対談場所とは違う、8畳ほどの個室。
休憩のためだろうか。その部屋には小さなちゃぶ台と、座布団が人数分用意されており、布団までもが置かれていた。
ちゃぶ台の上には、可愛らしい人形がちょこんと置かれ、壁には数枚のアロハシャツが、ハンガーと共にかけられている。
この部屋からは、綺麗に整頓された、若者の一人暮らしの様な雰囲気が漂っていた。

「ふーん、最初の部屋じゃないんだな」

「彼処は、一族の総会議場。許可がない限り、基本利用できないんだよ」

あの場所はそんなに重要な場所だったのか。宗主様も気を使ってくれていたのかもしれないな。

「そうか。それじゃあ、此処は?」

「あんたの様な危険人物を他の人に任せられないからな。…本当は嫌だったが、此処は俺の部屋だ」

その言葉に紡の目が輝く。狐面の上からでもわかるほどワクワクしているようだ。
そうか、ここが此奴の。
それはそれは…面白い。
だとしたらやる事は一つだな。


「テル、フォル、にゃん吉。集合!!」


部屋を圧迫するほどの声が室内に響く。
それにより、室内で遊んでいた三匹がこちらへと集まっていた。

「どうしたにゃ?」

「お姉ちゃん…待ってです…」

「何かあったのかしら」

「皇牙君の話によると、此処は彼の部屋だそうだ。テルを傷つけた彼の」

「「!?」」

紡の言葉に、ひよこと子猫の目がギラリと怪しく輝く。
さあ、ここからお祭りが始まるぞ。

「お、おい。一体何をする気なんだ?」

未だに何をするのか検討もつかず、ただ怪しげに笑う二人に皇牙は冷や汗が止まらない。
何か、自分にとって最悪なことが起こるのだろう。それだけは薄々感じていた。
ふっ、皇牙もこれで気づかないなんて、まだまだだな。二人は今の一言でどうやら気づいた様だぞ。
男の一人暮らし、そんな場所でやるのはただ一つ―――















「始めるぞ!宝探しトレジャーハンティング!!」

「いくにゃー!」

「いきますわ!」

「え…あっ…おー…?」

見つけろ宝物、探せ財宝を。
室内を俺たちが勢いよく駆け出す。
標的は、タンスから、棚、押入れなど、この部屋にあるすべて。次々と標的へとトレジャーハンターが派遣されていく。

「ちょ!あんたら何してんだよ!!」

ここで、俺たちの目的に気づいたのだろう。皇牙が全力で止めにかかる。
残念、止めるのが遅いな。動き出してしまった俺たちを止める術などあるわけないだろうに。

「お姉ちゃん…色々開けちゃって…いいのです…?」

「大丈夫にゃ。にゃーが保証するにゃよ。それに、テルもあの男に仕返しするのにゃ!多分、そこら辺に何か恥ずかしいものがあるはずにゃよ」

「私は上を重点的に探しますわ!」

流石、フォルとにゃん吉。容赦ないな。
いくら止められようが突き進む。俺も見習わなければ。
三人の暴君達により、皇牙のプライベートスペースがボロボロと崩れ去っていく。

「あ…お姉ちゃん…何かあったです…」

「んにゃ?その箱はなんにゃ?」

おお、テル偉いぞ。ピンポイントで衣装ダンスの中にある謎の箱を見つけ出すなんて。


「そ、それはダメだ!」

その箱を見て、顔を青ざめさせる皇牙。冷や汗を流しながら開封を止めにかかっていく。
その顔からは決死の覚悟が見え隠れしている。
お、今までと違う反応。これは当たりか?
必死に止める皇牙だったが、妹を傷つけた相手に、にゃん吉は容赦しない。

「それじゃ、開けるにゃよ」

「やめろぉぉおお!!」

無慈悲に開かれていく箱。それは何も阻むものがなくするりと開かれた。

「んにゃ?なんにゃこれは」

箱の中から出てきたもの、それは一冊のノート。
にゃん吉が俺の元に、それを運んでくる。

「ご主人隊長ー、発掘したにゃー!」

「にゃん吉隊員ご苦労だったな」

紡はにゃん吉から一冊のノートを受け取る。
それにしても、あれだけ焦っていたから何か面白い物かと思ったが、出て来たのは只の一冊のノートなんてな。思ったよりもつまらな、
その時、紡はノートの表紙に書かれていた言葉が目に入る。















【超最強!究極俺ノート~必殺技集~ 著. エンペラーファング】





「…」


紡は皇牙へと、無言で近づいていく。


「…ごめん」

「…」


一切動かない皇牙に一言謝り、そっとノートを返却する。
黙って受け取る皇牙の目は、死んでいた。








まさか、お宝探していたら、黒歴史を発掘するとは…あれは心が痛い。俺ならばまず耐えられないだろうな。流石『巫家』あの様な精神攻撃に耐えるなんて。名家の名も伊達じゃないな。
この家に来て初めて、紡は『巫家』を尊敬していた。
ノートを返して以降、紡は発掘作業をやめ、にゃん吉達を眺めて過ごしていた。
おー、中々いい戦いじゃないか。
当然にゃん吉達は未だに発掘作業中。皇牙も必死に抗っている。
小さく動き回る三匹に翻弄されながらも、皇牙はこれ以上何も見つかりたくない一心で、縋る様に追いかけていく。
決死の皇牙は意外と三匹と渡り合っていた。
まぁ、魔法がなけりゃ、ただ単に、運動神経がいいだけの、ひよこと子猫だしな。

「三人とも楽しそうだしよかったな」

疲れと精神疲労で吐きそうになっている皇牙の目の前でそう呟く紡は鬼畜だった。


―――ガラガラっ

未だ繰り返される攻防の中、扉が開かれる。
そこからは、時期当主、優華一人だけが室内へと入って来た。

「やはり、ここでしたか」

「おう、次期当主。なんか用か?」

一人で来たのなら、まだ当主は話し合いの準備が終わってないのだろうな。

「ええ、あなた達を待たせる間に相手をと思いまして」

「あー、まぁ、あいつら眺めてゆっくりしとくから大丈夫だそ?」

時期当主と話すこともそこまでないしな。それにあの戦い、意外に面白いし。

「そ、そんなこと言わずに。せっかくなのでお話をしましょう!」

「いや、まあいいけどさ」

なんでこいつこんな必死なんだよ。

「ふぅ…よかった。それで、あれは何をしているのかしら」

優香の指を指す先。それは当然、三匹達だ。

「あれは、あいつらの遊び、宝探しトレジャーハンティングだな。この皇牙の部屋で、お宝を探し出すという遊びだぞ」

「それは…なんと残酷な」

おお、この遊びの危険あぶなさにもう気づくとは。まぁ、プライベートを掘り返してる様なものだし、それは当然、危険な事になるからな。

「どうだ、時期当主も部屋を提供してあげて見ないか?」

あいつらも喜ぶだろうし。

「はっ、丁重にお断りします」

鼻で笑われた。

「私は皇牙とは違い、変態ではありませんので、自身を犠牲にしたりなどしません」

皇牙…可哀想に。『巫家』の他の人達のために、我が身を犠牲にした結果、時期当主から下されたのは変態とは。なんとも哀れな奴だな。

「そうか」


「…」
「…」

急に二人の間に訪れる静寂。
紡は内心かなり焦っていた。
やべぇ、こんな時女子との会話なんて俺は知らないぞ…どうしたもんか。
彼女が一度もできたことがない男に、この状況は難易度が高すぎた。
紡の中にある、会話ストックもすでに底をつき、今できることは黙るだけ。
二人の間になんとも言い難い、気まずい空気が漂っていた。

(これじゃあ、ダメだ!考えろ!頭を回せ!会話を導き出すんだ!!)

紡ばかは、無い頭を必死に回転させ、会話を編み出していく。

そして、一つの答えが生まれた。









「最近、どうなんだ?」

「え?何ですかいきなり」

一発KO。ドン引きされた。


会話のできない父親みたいなことを言い出す紡に、優華は可哀想な視線を送っていた。

女子って…残酷だな…。
彼女すら出来たことがない俺に、女子との会話なんて無理だったんだよ…
畳の溝を指でなぞりながら紡はいじける。それ程までに、優華の視線は紡の心を傷つけていた。



そんな紡へと、今度は優華から質問が飛ぶ。

「その…ゼロさんは、今現在、お付き合いされている方などはいらっしゃるのですか?」

お付き合いか…彼女いない歴が年齢の俺にそんなことを聞くなんて…

「今まで一度もした事がないな」

相手は女性。この程度のことで怒る訳にもいかない。凍夜なら惨殺しているところだが。

「それは良かった…」

良かった…だと。流石次期当主。人の精神的な弱点を的確に狙ってくるとは。

「では、お付き合いするつもりはないのですか?」

お付き合いかー。出来るならしたいけど、にゃん吉達も居るから今はそこまでって感じかな。

「出来るのであれば欲しいかなくらいのレベルだな。
そこまで彼女などに固執してないから、必死に探してるわけでもないし」



そう答えると、優華が、こちらにそっと振り向き…

「では、私はどうですか?」

何故か告白して来た。

頰を赤く染め上げ、少し恥ずかしいのか、軽くうつむきながら話すその姿は、幼い見た目ながらも優華の大和撫子の様な雰囲気に、儚さをプラスし、更なる美しさへと押し上げていた。
和風の8畳間で見つめ合う二人と、周囲で戦う者共。
周囲に未だ流れ続ける喧騒の中でも、それは紡の耳にするりと届き、その美しい姿とともに衝撃を与える。
紡としても、女子から受ける、人生初の告白。これはきちんと返さなければと心に決め、それを言葉に移していく。















「俺、ロリコンじゃないから。ごめんなさい」



生まれて初めて、女子にビンタされた。






―――――――――――――――――――






「どうしたのです?頰なんか抑えて」

「気にしないでくれ」

現在、皇牙の部屋から、最初同様に、広場へと案内され、蒼華と向かい合っていた。
優華は、ビンタして部屋を飛び出したまま、一度もこちらへやって来ていない。
『やらかしてしまった』と、女子を怒らせた罪悪感と共に、頰に未だ感じる痛みを耐えていた。

「そうですか。では、先程の戦いを終えての、『巫家』の決定と、私達の今後の話を始めましょう」

そう語りながらも、ニヤリと笑う蒼華の目は、絶対に逃がさないと物語っていた。
な、何だろう…寒気がするな。
その瞳に、背中にぞわりと何かを感じながらも紡と『巫家』の話し合いは再度始まっていく。






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