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閑話 2
閑話 御伽学園 フォル先生
しおりを挟む「それでは、今日の授業を始めますわよ」
「「はーい!」」
「頑張るです…」
屋敷の居間。そこでは、ちゃぶ台にテル、コア、チコの三人が席に着き。その前には一匹のひよこが、きりっとした表情で、教鞭をとっていた。
『巫』との騒動により、紡の戦いを見てしまったテルの為、急遽行われた『特別授業』。
常識の破壊者からの救済を目的とする、フォルの戦いがそこでは繰り広げられている。
その近くで、ちゃぶ台を涙目で見つめる白い毛玉。
「テル、お姉ちゃんと遊ぶにゃ…」
先程から何度も断られ続け、泣きそうになるのを必死に耐え続けているにゃん吉が、未だ諦めきれずに再度挑戦する。
「ダメです…今は授業です…」
残念、当然断られる。
「にゃぁぁあ!!テルが反抗期にゃぁあ!!!」
諦めきれずにその場で駄々をこねてにゃん吉は叫んでいた。
「はぁ…邪魔をするのであれば、離れてもらいますわよ」
残念な者を見るように、呆れた目を向けるフォル。
「だったらにゃーも、授業受けるにゃ」
名案とばかりに、笑顔でそう提案するにゃん吉。テルと一緒にいる為に必死である。
「それはお断りするわね。にゃん吉はもう、手遅れですもの」
皇牙との戦い。それを唯一眺めていたフォルは感じていた。
にゃん吉は既に、あの戦闘狂に毒されすぎた。もう手遅れだ、と。
「うにゃぁぁあ!!フォルのバカにゃぁあ!!」
「誰がバカですのよ…」
見事な捨て台詞だけを残し、居間からにゃん吉が走り去って行く。
その瞳にはキラリと光るものが浮かんでいた。
「お姉ちゃん…」
「いいのよテル。あれはもう手遅れですわ。今は貴方達が洗脳されないようにする方が先決ですわよ」
騒音が過ぎ去り、ようやく静かになった居間で、フォル先生による授業が繰り広げられて行く。
「では、問題よ。貴方達は、敵に襲われています。近くには誰もいません。そんな時貴方達はどうするのかしら」
フォルの質問。それに、一人一人が答えて行く。
【コアの場合】
「お菓子魔法で魔法を作って皆殺しー!」
「なっ、ダメですわよ!何で皆殺しになるのよ。
それに魔法はその場で作るようなものではないの」
「でも、兄ちゃん作ってるよー?」
「あれはダメな見本ですわ。絶対に真似してはいけないわよ」
そう語るフォル。内心では、『やっぱりか』と疲労感とともに浮かんでいた。
「相手の強さも分からないのですのよ。下手に手出しをするより、先に助けを求めること。貴方はまだ子供。一人で背負わないようにすることが大切よ」
基本的なことを説得するように必死に語る。
「でも、敵は強い方が楽しいって…」
「分かったわね!!」
理解してくれることを信じて。
【チコの場合】
「首を飛ばす…皆殺し…」
「貴方もですのね…」
変わらない皆殺し発言に、フォルの疲労は加速していく。
「首が取れれば…みんな死ぬ…」
「貴方は女の子なのよ。そんな物騒なことを言ってはダメ。そんなに可愛らしいのだから、皆にきちんと守ってもらえるようにしなさい」
フォルの言葉を受け、チコは腕を組んで『うー…』と唸り始める。
年相応の可愛らしいその姿。
どうやら必死の説得がようやく伝わったよう…
「だったら…去勢に変える…」
フォルの空気が固まる。
穏やかでおとなしい雰囲気の少女。その口から放たれた『去勢』という言葉を頭の中で何度も反芻する。
未だ理解できない頭をフル回転してなんとか言葉を紡ぎ出す。
「それは、誰が言ってたのかしら」
こんな小さな女の子に去勢という言葉を教え込んだ不届き者を捜すために。
「お兄ちゃんが…男は去勢がいいって…」
フォルのこめかみに青筋が走る。
「バカご主人がぁぁあ!!!」
そこに、珍しいフォルの絶叫が響き渡る。
やはり、フォルの最大の宿敵は、紡のようであった。
【テルの場合】
「助けてもらうです…私一人じゃ無理です…」
「正解よ。よく出来たわね」
漸く出た正解に、安堵しながらフォルはテルを褒めてあげる。
褒められて嬉しいのか、頰を染めてもじもじしているテル。
その姿をこのまま変わらずにいて欲しいと願いながら、優しく見つめていた。
(よかった…まだ毒されていない子も居たようだわ)
諦めかけていたフォルに現れた一つの希望。
テルから徐々に常識を広げていければ…
隣に並ぶ双子もどうにかできるはず。
フォルは確信していた。
「あ…でも…」
そんな中、テルの口が開かれた。
「あら?どうしたのかしら」
機嫌が良くなったのか、弾んだ声で聞き返す。
「お姉ちゃんが言ってたです…」
その言葉にフォルは嫌な予感がする。
あの毒されたにゃん吉がテルの為に言ったこと。十中八九いい予感などするはずもない。
「『テルを襲ってきた奴は全部皆殺しにしていいにゃよ』って…」
妹を思っての言葉だったのだろう。だが、伝わるタイミングが悪かった…
フォルからすっ…と表情が消えた。
折角現れた希望それがにゃん吉により消えかかっている。
そんな風にフォルが感じていたその時。
「んにゃ!テル、やっぱり一緒に遊ぶにゃよ!!」
最悪のタイミングでにゃん吉が舞い戻ってくる。
「…」
「どうしたのにゃ?そんな無言で引っ張って、そっちに行けばいいのかにゃ?」
光の消えた目をしたフォルと、面白いものでも見せてもらえるのかと勘違いしたにゃん吉が、居間から消えていく。
『そんな詰め寄ってどうしたのかにゃ?
にゃ!?尻尾はダメにゃ!敏感にゃからそんな突いたら…』
『ダメにゃよ!肉球も敏感にゃ!ぞわぞわするからやめて…』
10分後…
―――がらがら…
「お待たせ致しましたわね」
笑顔でスッキリとしたフォルと、後ろでさめざめと泣くにゃん吉が居間へと戻ってきた。
「もう…お嫁にいけないにゃ…」
そう語るにゃん吉の耳は、未だにへにゃへにゃに潰れている。
「では、今日の授業は此処までにしますわ。
皆、ご主人に毒されないように、気をつけること。良いわね」
「「分かりましたー!!」」
「お姉ちゃん…大丈夫です…?」
此処に、対紡の為の『緊急授業』が終了する。
今回で分かったこと。それは…
どうやらフォルの戦いはまだまだ先の見えないものであるという事であった。
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