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3章
悲しみの川底
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悲しみ川底を這うように泳ぐ魚は、いろんな人が忘れていったありふれた日常を食べている。
この町に沿うように流れる透明な川が映す大きな月は、肌寒い風に揺られながら、少しずつ形を変えていく。
大学時代に知り合った4人と、バンドを組んだ。初めは女にモテるような曲ばかり選んで演奏していたけれど、そのうちギターのやつが、泣かせるようなフレーズを並べ始め、ボーカルのやつは、それに自分の思いを乗せて、歌うようになった。
遊びのつもりでやっていた事が、後には引けない雰囲気になり、大学を卒業した後は、バイトをしながら、バンドを続けた。
何度かデビューの話しはあったが、ギターのやつは、曲をネットで配信する事にこだわった。小さなライブハウスには、溢れる程の人が入るようになっていた。
3年前、ボーカルが自分は他のところでやっていくと言い出して、バンドはあっさり解散した。
俺は大学の頃から付き合っていた彼女の家に転がり込むと、しばらくは仕事を探そうとせず、ヒモの様な生活を続けた。
ある日。
彼女はいくら待っても、帰って来なかった。
明け方、警察から電話があり、家に帰る途中、通り魔に刺されて亡くなったと、連絡が入った。
「潤、今日は遅くなるから、先にご飯食べてて。」
夏川美里《なつかわみさと》はそう言った。
「晩ごはん作って待ってるよ。何が食べたい?」
「それじゃあ、オムレツ作ってくれる?」
「オムライスじゃなくていいの?」
「私、ケチャップが苦手だから。」
「そうだったね。」
「潤、美容師の国家試験に受かったら、潤の髪、切ってあげるね。」
「早く受かってくれよ。もうずっと伸びっぱなし。髪切ったら、就職試験を受けようと思っているんだからさ。」
「わかってる。」
「美里は大きな会社に就職してるのに、美容師の免許取ろうとしたのは、なんでだよ。」
「潤の髪を切りたいからだよ。」
「それだけ?」
「それだけ。」
「別に免許がなくても、切っていいよ。わざわざ夜に学校に通わなくても、俺はどんな風になっても文句は言わないからさ。」
「潤の髪、いろんな角度から切ってみたいの。私の好きな潤じゃなくて、みんなの好きな潤にしてあげる。だから、もう少し待ってて。」
美里が亡くなった後。
もう少し小さなアパートに引っ越した俺は、いろんなバイトを掛け持ちしながら、美容師の免許を取った。
美容師になった後は、いくつかの店を廻り、自分の店の開店資金を貯めた。いつか彼女が18まで過ごしたこの小さな町で、店を出そうと決めていた。運良く空き店舗が見つかり、これからは彼女の思い出だけを抱いて、生きていこうと思った。
店はこの前きた女子高生が以来、誰も来ていない。
なかなか客が伸び悩み、店のチラシを持って訪れた大型スーパーの中にある楽器屋で、偶然ベースの講師の募集を目にした。
美里が死んでから、もう二度とベースを弾く事はないと思っていたが、結局また、ベースに頼る事になった。新しい弦を張り替えていると、美里の笑顔が浮かんでくる。美里の思い出に浸っていると、とてつもない寂しさが、いつも襲ってきた。
町へ出れば、美里はこの道は通ったのだろうか、あの橋は渡ったのだろうか、ひとつひとつの風景が、美里の面影を感じさせ、俺を暗闇の底に閉じ込めようとする。
俺の髪を切るために、美容学校に通ったせいで、美里は命を絶たれた。
娘を失った美里の両親は、美里の思い出が残るこの町にはいられず、やり場のない思いを抱えて、すでにこの町を離れたと聞いた。今は誰も知らない別の場所で、家族は細々と暮していると、店を改装にきた大工が話していた。
美里の大切なものまで、バラバラにしてしまった俺は、悲しみの川底が似合っている。これからは、昼は誰かの愚痴を食べて、夜は孤独の闇に包まれて眠りにつこう。 そのうち、姿が見えない日がきても、この町のお節介なご婦人達は、わりと早く、自分の死骸を発見してくれるだろう。
初めての客だった女子高生は、3年分の思い出を切ってほしいと言った。まだ若いのに、贅沢な事を言ったもんだ。もう少し大人になったら、切って捨ててしまいたいものなんて、山程出てくるのに。
高校時代の思い出なんて、どうせ付き合い方も知らないくせに燃え上がった恋に破れたとか、テストで悪い点をとったかくらいの事だろう。
髪を切ったくらいで泣かれたらなぁ、こっちもたまったもんじゃないよ。
まっすぐな青春してるあの子の目が、澄んだ美里の目と少し重なった。そんなふうに思うのは、きっと、久しぶりに女の子と話したせいだろう。
気が付くと、あの子は最後に見た美里と同じ髪型になっていた。
潤はベースを少し弾いた後、大切にケースにしまい、助手席にそれを乗せ、楽器店まで車を走らせた。
「夏希、どこで髪切ったの?」
クラスの女子が夏希の所にきた。
「新しい美容室。」
「そんな所あったっけ?」
「うちの町にね、この前できたの。」
「へぇ~、あんな田舎に。」
「そこって予約しなくても入れるの?」
「どうだろう。私はすぐに切ってもらえたけど。」
「今度は行ってみようかな。美容師さんて若い人?」
「うん。若い男の人。」
「その人ってカッコいい?」
「カッコいいよ。」
「ねぇ、地図描いて。」
「すぐにわかるよ。駅前のバス停降りてすぐだから。」
「城田、髪切ったんだな。」
隣りの席の廣岡が話し掛けてきた。
「切ったよ。」
「県大会、行くんだろう?練習ちゃんと来いよ。今日から砂田と一緒に、お前も別メニューだって。」
「ラケット忘れたから、今日は練習に行かない。」
「それなら、俺のラケットを貸すよ。」
「シューズも忘れたし。」
「上履きでいいだろう。」
「……今日は行かない。」
放課後。
教室から出る所を、有紗達に捕まった。
「ちょっと、城田、ちゃんと練習に来なさいよ。」
有紗が夏希の道を塞いだ。
「さっき廣岡くんと何話してたの?ラケットを貸すとか聞こえたんだけど。」
「ラケットを忘れたって言っただけだよ。人のものを借りるつもりなんてないし。今日は用事があるから、練習には行かないから。」
有紗達を敵に回したら、学校でどうなるかはわかっている。自分だってそんなに強くはない。明日から、イジメの標的になるのが確定なら、単位なんて気にせず、風邪引いたって言って、たくさん引いて休んでしまえばいい事だ。
ねえ、七海。
私達、ただ純粋にバトミントンをやっていただけなのにね。
廣岡に関わると、どうしてこんな事になってしまうんだろう。
あんまり早い時間に帰ると、母がいろいろと聞いてくるから、いつも乗る最終のバス時間まで、どこかで時間を潰そうと思い、ショッピングセンターの中にある本屋へ向かった。
いくつかの参考書を手にとってみたけれど、私、本当にヤバいかも、夏希はそう思った。
あの先生達の言いなりになるのは絶対嫌だ、そう思い、本屋の前のベンチに座り、さっき買ったばかりの問題集を問いてみる。
本屋の横には、楽器店が並ぶ。
ギターケースを抱えた人が、さっきから何人か奥に入っていった。
音楽をやる人は、きっと心に余裕がある人なんだろう。私なんか、音楽を聞く余裕すらないのに。
いくつかの問題を解いて時計を見ると、19時を回った。
夏希は食売り場で、飴とチョコレートを買うと、空いている駐車場を突っ切って、バス停まで向かった。
「夏希ちゃん?」
夏希は振り返ると、美容師の潤が車の前にいた。
「今、帰り?」
「そうです。」
「部活とか?」
「部活はサボりました。」
「正直だなぁ。」
潤は笑った。
「美容師さんは買い物?」
「違うよ。ここの楽器店で、ベースを教えてる。」
「ベースなんて弾けるの?」
「弾けるよ。少し前、バンドをやってたからね。」
「へぇ~、すごい。やっぱり手先が器用なんですね。」
「夏希ちゃん、これから帰るの?」
「うん。バスの時間があるから、じゃあ。」
「送っていくよ。帰る方向は同じだし。」
「そんな、いいですよ。」
「遠慮しないで。夜に女の子が1人で歩くのは、すごく心配になるんだよ。さあ、乗って。」
潤は夏希は助手席に乗せた。
「みんなにどこで切ったのって聞かれました。」
「そう。ずいぶん切ったねって、言われたでしょう。」
「言われました。」
「いろんなお客さんと会ったけど、思い出分を切ってくださいなんて人、初めてだよ。」
「そうですよね。自分でもそう思います。」
「もしかして、失恋とか。」
「そんな事に振り回されるのって、馬鹿みたいです。」
「アハハ、それなら、成績の事?」
「違います。友達がイジメられて死んだんです。次は私の番かな。」
小さなため息が聞こえた。
「それは重たいテーマだね。大人には相談した?」
夏希は首を振った。
「しばらく学校休んだら?」
「そうしたいけど、受験があるから。」
「高校生もいろいろ大変なんだね。」
「美容師さんは、どうしてこんな田舎に来たの?都会で傷ついて、癒しを求めてここに来たとか?」
潤は笑った。
「前も言ったけど、夏希ちゃんの言葉は、歌詞みたいだね。その通り。俺は都会から逃げてきた。」
「大人もいろいろあるんだね。」
「みんな、いろいろあるんだよ。」
帰り際、
「辛い時は、いつでも逃げてくればいいよ。」
潤は夏希にそう言った。
この町に沿うように流れる透明な川が映す大きな月は、肌寒い風に揺られながら、少しずつ形を変えていく。
大学時代に知り合った4人と、バンドを組んだ。初めは女にモテるような曲ばかり選んで演奏していたけれど、そのうちギターのやつが、泣かせるようなフレーズを並べ始め、ボーカルのやつは、それに自分の思いを乗せて、歌うようになった。
遊びのつもりでやっていた事が、後には引けない雰囲気になり、大学を卒業した後は、バイトをしながら、バンドを続けた。
何度かデビューの話しはあったが、ギターのやつは、曲をネットで配信する事にこだわった。小さなライブハウスには、溢れる程の人が入るようになっていた。
3年前、ボーカルが自分は他のところでやっていくと言い出して、バンドはあっさり解散した。
俺は大学の頃から付き合っていた彼女の家に転がり込むと、しばらくは仕事を探そうとせず、ヒモの様な生活を続けた。
ある日。
彼女はいくら待っても、帰って来なかった。
明け方、警察から電話があり、家に帰る途中、通り魔に刺されて亡くなったと、連絡が入った。
「潤、今日は遅くなるから、先にご飯食べてて。」
夏川美里《なつかわみさと》はそう言った。
「晩ごはん作って待ってるよ。何が食べたい?」
「それじゃあ、オムレツ作ってくれる?」
「オムライスじゃなくていいの?」
「私、ケチャップが苦手だから。」
「そうだったね。」
「潤、美容師の国家試験に受かったら、潤の髪、切ってあげるね。」
「早く受かってくれよ。もうずっと伸びっぱなし。髪切ったら、就職試験を受けようと思っているんだからさ。」
「わかってる。」
「美里は大きな会社に就職してるのに、美容師の免許取ろうとしたのは、なんでだよ。」
「潤の髪を切りたいからだよ。」
「それだけ?」
「それだけ。」
「別に免許がなくても、切っていいよ。わざわざ夜に学校に通わなくても、俺はどんな風になっても文句は言わないからさ。」
「潤の髪、いろんな角度から切ってみたいの。私の好きな潤じゃなくて、みんなの好きな潤にしてあげる。だから、もう少し待ってて。」
美里が亡くなった後。
もう少し小さなアパートに引っ越した俺は、いろんなバイトを掛け持ちしながら、美容師の免許を取った。
美容師になった後は、いくつかの店を廻り、自分の店の開店資金を貯めた。いつか彼女が18まで過ごしたこの小さな町で、店を出そうと決めていた。運良く空き店舗が見つかり、これからは彼女の思い出だけを抱いて、生きていこうと思った。
店はこの前きた女子高生が以来、誰も来ていない。
なかなか客が伸び悩み、店のチラシを持って訪れた大型スーパーの中にある楽器屋で、偶然ベースの講師の募集を目にした。
美里が死んでから、もう二度とベースを弾く事はないと思っていたが、結局また、ベースに頼る事になった。新しい弦を張り替えていると、美里の笑顔が浮かんでくる。美里の思い出に浸っていると、とてつもない寂しさが、いつも襲ってきた。
町へ出れば、美里はこの道は通ったのだろうか、あの橋は渡ったのだろうか、ひとつひとつの風景が、美里の面影を感じさせ、俺を暗闇の底に閉じ込めようとする。
俺の髪を切るために、美容学校に通ったせいで、美里は命を絶たれた。
娘を失った美里の両親は、美里の思い出が残るこの町にはいられず、やり場のない思いを抱えて、すでにこの町を離れたと聞いた。今は誰も知らない別の場所で、家族は細々と暮していると、店を改装にきた大工が話していた。
美里の大切なものまで、バラバラにしてしまった俺は、悲しみの川底が似合っている。これからは、昼は誰かの愚痴を食べて、夜は孤独の闇に包まれて眠りにつこう。 そのうち、姿が見えない日がきても、この町のお節介なご婦人達は、わりと早く、自分の死骸を発見してくれるだろう。
初めての客だった女子高生は、3年分の思い出を切ってほしいと言った。まだ若いのに、贅沢な事を言ったもんだ。もう少し大人になったら、切って捨ててしまいたいものなんて、山程出てくるのに。
高校時代の思い出なんて、どうせ付き合い方も知らないくせに燃え上がった恋に破れたとか、テストで悪い点をとったかくらいの事だろう。
髪を切ったくらいで泣かれたらなぁ、こっちもたまったもんじゃないよ。
まっすぐな青春してるあの子の目が、澄んだ美里の目と少し重なった。そんなふうに思うのは、きっと、久しぶりに女の子と話したせいだろう。
気が付くと、あの子は最後に見た美里と同じ髪型になっていた。
潤はベースを少し弾いた後、大切にケースにしまい、助手席にそれを乗せ、楽器店まで車を走らせた。
「夏希、どこで髪切ったの?」
クラスの女子が夏希の所にきた。
「新しい美容室。」
「そんな所あったっけ?」
「うちの町にね、この前できたの。」
「へぇ~、あんな田舎に。」
「そこって予約しなくても入れるの?」
「どうだろう。私はすぐに切ってもらえたけど。」
「今度は行ってみようかな。美容師さんて若い人?」
「うん。若い男の人。」
「その人ってカッコいい?」
「カッコいいよ。」
「ねぇ、地図描いて。」
「すぐにわかるよ。駅前のバス停降りてすぐだから。」
「城田、髪切ったんだな。」
隣りの席の廣岡が話し掛けてきた。
「切ったよ。」
「県大会、行くんだろう?練習ちゃんと来いよ。今日から砂田と一緒に、お前も別メニューだって。」
「ラケット忘れたから、今日は練習に行かない。」
「それなら、俺のラケットを貸すよ。」
「シューズも忘れたし。」
「上履きでいいだろう。」
「……今日は行かない。」
放課後。
教室から出る所を、有紗達に捕まった。
「ちょっと、城田、ちゃんと練習に来なさいよ。」
有紗が夏希の道を塞いだ。
「さっき廣岡くんと何話してたの?ラケットを貸すとか聞こえたんだけど。」
「ラケットを忘れたって言っただけだよ。人のものを借りるつもりなんてないし。今日は用事があるから、練習には行かないから。」
有紗達を敵に回したら、学校でどうなるかはわかっている。自分だってそんなに強くはない。明日から、イジメの標的になるのが確定なら、単位なんて気にせず、風邪引いたって言って、たくさん引いて休んでしまえばいい事だ。
ねえ、七海。
私達、ただ純粋にバトミントンをやっていただけなのにね。
廣岡に関わると、どうしてこんな事になってしまうんだろう。
あんまり早い時間に帰ると、母がいろいろと聞いてくるから、いつも乗る最終のバス時間まで、どこかで時間を潰そうと思い、ショッピングセンターの中にある本屋へ向かった。
いくつかの参考書を手にとってみたけれど、私、本当にヤバいかも、夏希はそう思った。
あの先生達の言いなりになるのは絶対嫌だ、そう思い、本屋の前のベンチに座り、さっき買ったばかりの問題集を問いてみる。
本屋の横には、楽器店が並ぶ。
ギターケースを抱えた人が、さっきから何人か奥に入っていった。
音楽をやる人は、きっと心に余裕がある人なんだろう。私なんか、音楽を聞く余裕すらないのに。
いくつかの問題を解いて時計を見ると、19時を回った。
夏希は食売り場で、飴とチョコレートを買うと、空いている駐車場を突っ切って、バス停まで向かった。
「夏希ちゃん?」
夏希は振り返ると、美容師の潤が車の前にいた。
「今、帰り?」
「そうです。」
「部活とか?」
「部活はサボりました。」
「正直だなぁ。」
潤は笑った。
「美容師さんは買い物?」
「違うよ。ここの楽器店で、ベースを教えてる。」
「ベースなんて弾けるの?」
「弾けるよ。少し前、バンドをやってたからね。」
「へぇ~、すごい。やっぱり手先が器用なんですね。」
「夏希ちゃん、これから帰るの?」
「うん。バスの時間があるから、じゃあ。」
「送っていくよ。帰る方向は同じだし。」
「そんな、いいですよ。」
「遠慮しないで。夜に女の子が1人で歩くのは、すごく心配になるんだよ。さあ、乗って。」
潤は夏希は助手席に乗せた。
「みんなにどこで切ったのって聞かれました。」
「そう。ずいぶん切ったねって、言われたでしょう。」
「言われました。」
「いろんなお客さんと会ったけど、思い出分を切ってくださいなんて人、初めてだよ。」
「そうですよね。自分でもそう思います。」
「もしかして、失恋とか。」
「そんな事に振り回されるのって、馬鹿みたいです。」
「アハハ、それなら、成績の事?」
「違います。友達がイジメられて死んだんです。次は私の番かな。」
小さなため息が聞こえた。
「それは重たいテーマだね。大人には相談した?」
夏希は首を振った。
「しばらく学校休んだら?」
「そうしたいけど、受験があるから。」
「高校生もいろいろ大変なんだね。」
「美容師さんは、どうしてこんな田舎に来たの?都会で傷ついて、癒しを求めてここに来たとか?」
潤は笑った。
「前も言ったけど、夏希ちゃんの言葉は、歌詞みたいだね。その通り。俺は都会から逃げてきた。」
「大人もいろいろあるんだね。」
「みんな、いろいろあるんだよ。」
帰り際、
「辛い時は、いつでも逃げてくればいいよ。」
潤は夏希にそう言った。
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