王を恨んだ妃 第1章~復讐~

木継 槐

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幼少期~煌の視点~

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しかしいつまでたっても攻撃は落ちてこなかった。それどころか俺の頭の横に腰を下ろすと口を開いた。

「驚きました……。」
「?」

「上の立場の方が汚物に噛み付くとは。」
汚物?
「……何の……ことだ?」

「先ほど私に噛み付いたではありませんか。……とっさで覚えてないんですか?」
いや、覚えているに決まっている。

「俺は"人"に噛み付いた……初めて噛み付いた……初めて物ではなく人に本気で攻撃をしたのだ。」

しかもあんなに死に物狂いになって。

「なかなか……恐ろしいな……人は。」
「……人ですか……」

「お前はもちろんだが…俺もこうなるんだな……。」
「ッ……。」

俺はしみじみと人の本能の恐ろしさを痛感した。
男に目を向けると、男はバケモノでも見るかのように目を剥いていた。

「……どうした?」
「あなたは……俺を人として接していたのですか?」

当たり前のことだ。
「そなたは人の心を持っているではないか。」
「ッ!?……は……。」

俺は思いのままに言葉を返した。
すると男は尚更目を剥いて口を半開きに開け息を漏らした。

「あなたは馬鹿なのですか?私はあなたを殺したやもしれないのに「でも殺さなかった。」ッ……。」

「人の心があればそれは畜ではない……だからそなたに護衛を頼んだのだ。」

男は俺の言葉に無情そうだった顔を歪め、ため息を吐いた。

「……もう体を起こしてください。もうすぐ雨が降ります。」
「ッ……あぁ。」

男は俺の背中に手を寄せ体を引き上げてくれた。
俺が上体を起こしきると、男はおもむろに先程俺が蹴り出した短刀を引き寄せた。

「ッ…。」
俺が体をこわばらせると、男は俺に目を向けると目を閉じた。

そして、

「ッ……」
「ッ!?」

刃先を自らのまぶたに押し付けた。

「そなた……「ッ!!」ッ!?」

そのまま男の瞼についた薄い肉は切れ味の悪い刃先で押し開かれた。
「ッなんて事を!!」

俺は慌てて手拭いで男の瞼を覆った。
「愚かですね。こんな下衆の傷をそのような小綺麗な布で拭うなど。」
「愚かはそなただ!目がつぶれたら生きていけないではないか!!」
「……フッ。」

男は俺の言葉を鼻で笑った。
そしておもむろに俺の目の前に手首をまとめて押しつけた。
「……私の名は夏弩シェイドと申します。さぁ、縛り上げて王室まで引きずってください。」
「ッ!?」

「あなたの従僕として王室に献上ください。それがあなたの立場を確かな者にするすべでしょう。」
夏弩はそう言うとなお俺の目の前に両拳を突き出した。

しかし俺の中では従僕させるという側付きはいらないと感じた。
むしろ、先ほどのように同等にあるような関係…そう、まるで友人のような存在が欲しい。

俺はその堂々とした両拳を押し降ろした。
「……?」
「俺の名はファンだ。この国の世子だ。」
「世子様。」
「煌だ。煌と呼ぶのだ。」

「…煌様。」
夏弩は少し戸惑った表情を隠すこともなく恐る恐る俺の名を口にした。
そう言えば、名前を呼ばれるのはいつぶりだろうか。
名前をよばれることがこんなにも喜ばしく誇らしいとは。

「よし、では王室に迎え入れよう。そなたを医官に見せねば。」
「はい?」
「安心せよ。この国の医官は皆優秀だ。」
「しかし私はッ……」

「そなたはこの国の世子の側に付く男!相応の医術を受けずにどうする。」
俺の発言に夏弩はまだ納得がいかないのか、口を開いた。
しかしここで発言される前に俺は言葉を続けた。

「それにそなたは……俺の初の友だ。俺は友を助けたい。」
「……煌様。」

こうして夏弩は渋々頷き、俺と夏弩は王室に戻った。
両親とも俺の帰りを危惧し、逃げ帰ってきた護衛を幽閉していた。
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