眠れるsubは苦労性

あうる

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「相手先のドム、不能にしてやりましょ?」
「いやまて、早まるな!」

にっこり笑って拳をきゅっとひねる紬には不穏なものしか感じない。

「相手のせいだけじゃない。ここ最近疲れが溜まっていたせいもあると思う」
「んじゃ、あの猿もついでにきゅとーー」
「まて!だからなんでお前はそうオレのことになると途端に待てが出来なくなるんだ!?」
「そんなの相手先輩だからに決まってるでしょうが!!先輩の馬鹿っ!!」

売り言葉に買い言葉。
エリートであるはずの後輩は、俺絡みの件になると途端に子供帰りを起こす。

「相手が俺だから?違うだろ?」
「違いません」 
「相手がサブだから、ドムお前は放って置けないんじゃないのか」
「違いますってば。
サブとかドムとかじゃなく、純粋に先輩が大切なんです。
……そりゃ、先輩がパートナーになってくれたらなとは思いますけど」

二人の中学時代。
俺がサブであることを告げられたその一年後、紬もまた、ドムとしての診断を受けた。

「先輩、俺……」

どうしよう、と。
放課後の空き部屋で、親よりも先にその診断書を見せられた俺は、ただ抱きしめてやることしかできなくて。
気づけばずっと、紬は俺の大切な後輩で居続けた。
思えば、それがいけなかったんだ。

「いいか、お前のそれは刷り込みだ。
思春期の一番いい時代を俺と過ごしたから脳が勘違いしてるんだよ」

「バグだ、バグ」と、ゲーム好きな紬にわかりやすいように伝えてやったつもりだった。

学生時代ラプレイパートナー選びに苦悩する紬に、ならば俺が相手をしてやると告げてからはや10年以上。
変わることのなかった関係を、今更どうこうできるとは思えない。

「俺はいつだって本気です!先輩用のカラーだって、すでに用意してありますし……」
「まさか犬用じゃないよな?」
「………そんなわけないじゃないですか。先輩のばーかばーか」

べーっと舌を出す紬。
ふざけた口調だが、その表情は真剣だ。
……俺が、絆されてやってもいいかと思うくらいには。

「あるならなぜさっさと持ってこない?」
「へ?」

案の定、呆気にとられた間抜け顔の紬。
俺からそんなことを言い出すとは夢にも思わなかったのだろう。

「い、いいんですか?持ってきて」
「流石に外にカラーはつけていけないが、家の中でなら構わない」
「それって…!」
「お互いしかプレイをする相手がいないなら、そうするのは妥当な行為だろう」

ドムには己のサブにカラーをつけさせることで安心感を持つものも多いと聞く。
反対に不安が多いと、今のこの紬のように何に対しても警戒心を剥き出しにしたディフェンス状態をおこすと。

「あくまで仮だがな」
「仮でもなんでもいいです。俺がこれから先も一生、先輩から離れなきゃいい話なんで」

大真面目な顔で箸を置き、すっくと立ち上がる紬。

「おい、今から取りに行くつもりじゃ……


「いえ、ちょっと俺の部屋に……」
「お前の部屋じゃなく俺の書斎。ってかウチに持ってきてたのか!?」

いつの間にそんなものまで。 

「今から取ってくるんで、絶対待っててくださいよ!?」

そこに座ってて!と強い口調で言われて身体が思わずビクリと反応した。

「……あ、違います…今のはコマンドじゃなくて、ただのお願いっていうか……!」
「………わかってる。あらならさっさと持ってこい」
「はい……!」

焦る紬に、心配ないと告げると一目散部屋を目指して駆けていく。
サブである俺よりもよっぽど犬みたいなやつだ。

「いや……違うな」

箸を再び手に持ち、冷めたげんこつ揚げを口に入れる。
最初にこれを食べさせた時の、猜疑心に溢れた紬の顔を思い出した。
あいつも俺も、長い間に随分変わったものだ。

「あいつは犬じゃなく、躾けのできた狼か」
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