保護猫subは愛されたい

あうる

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予定を変更し、ホテルに一泊することにした。 
あてがあるのか、現在地から少し離れた場所へ車を走らせたマスターが、目的地についたのはすでに昼過ぎ。
一見してただの雑居ビルのようにも見える建物の地下駐車場に車を止め、ビルの直ぐ入り口のフロントで受付を済ませる。
互いに顔を合わせることなく鍵だけを受け渡す様子は、よくある一般的なラブホテルを想像させるが、建物のどこにも金額の表示はなく、また部屋の案内もない。

「おいで、こっちだよ」

部屋の鍵を受け取ったマスターに手を引かれ、エレベーターへ乗り込んだ。

「晶」
「あ……、」

二人きりになった途端、腕をひかれて口づけを受ける。

「ここはその手の人間の御用達の宿なんだ。
この中では決して、私から離れてはいけないよ」
「はい、マスター」
「goodboy……私に全て任せてくれるね?」
「はい」
「今から目隠しをするよ」
「はい」

何故そんなことを、と問うことはしない。
黙ってその場で瞳を閉じれば、冷たい布が瞼を覆うのを感じた。

「goodboy」
「あ…」

暗くなった視界。

「……ん……っ」 
stay待て

揺れるエレベーターの中で、身じろぎを禁じられた晶のスラックスの中にマスターの指が潜り込み、カチリ、という音を立てて体の中心に枷がけられた。
陰茎に小さな輪のようなものを嵌められたと、見えずとも感覚でわかる。
射精管理だと言われ以前にも縛められた事はあったが、それは少なくとも室内での事。
こんな場所で行為に及ぶのは初めてだ。

kneel跪いて
「はい」

見えないまま冷たい床に跪き、マスターの足に擦り寄る。

「goodboy。……Lookこっちを見て

コマンドを受け、マスターを見上げるように頭をあげた次の瞬間、シュッ……と頚筋に感じた慣れた感触。
いつものリボンが巻かれたのだとわかる。 

「さぁ、晶。comeおいで
「う……」
「あぁ…少し苦しいかな、ごめんね」

ぐっと手綱のようになったリボンを上に引かれた。
まるで、犬の散歩のような格好だ。

「大丈夫、誰も見咎めるものはいないよ。
ここではこの程度誰も気にしない」

囁くようなマスターの声が聞こえた直後、エレベーターが止まり、扉が開いた。
目隠をしていても、どこか薄暗い空間がぽっかりと口を開けているようだ。

「さぁ、降りるよ」
「はい、マスター」

そのまま当然のように四つ足で横をついていく。
幸い床にはフカフカとした敷布が引かれているらしい。
恐らく今の晶のような格好で歩くものがいることを前提に作られているのだろう。
マスターの言っていた「その手の人間の御用達」とはそういうことだ。
都内にもプレイを行える専用のホテルは存在したが、実際に使用するのは初めて。

目隠しをされた状態で首を引かれるままに歩く。
本当に犬になった気分だが、不思議なほど嫌悪感はなかった。
むしろ、全てをマスターに委ねていることへの安堵が強い。

stop止まれ。着いたよ、晶」

目的地にたどり着いたマスターの脚が止まる。
受け取っていたカードキーで解錠を済ませたのか、微かな電子音が響いた。
マスターに連れられ、当然のように部屋の中へと足を踏み入れる。
そこですぐに気づいた。

ーーーここは……部屋ではなく風呂場?

今までのフカフカとした手触りとは違う。
冷たいタイルが指に触れる。
肌に感じる風もどこかひんやりした気配だ。

「まだ、少し冷たいが我慢だよ。じきにそんな事は気にならなくなるから」

マスターの足が止まった。
抱き上げられ、マスターの膝の上に向かいあったままの格好で載せられたようだ。
タイル張りの床とは違うリネンのサラリとした手触りが足に触れた。
これは……ベッドだろうか。

「もう少しこのままで……いいね?」

コクリと頷きけば、そのまま口付けられ、伸びた手に下肢を弄られる。
今度は陰茎だけではなく後肛にまで剝けられたその指は、晶の中をぐっと一気に奥まで貫くと、二本の指で中心を拡張するように割り開いた。

朝の行為の名残だろうか。
タラリ……と奥から精液が垂れるのを感じる。

「恥ずかしいね?服がシミだらけだ」

クスクスという笑い声とともに一枚ずつ服が剥ぎ取られ、残されたのは首のリボンと注進にはめられた輪のみ。
なんとも心もとない姿を晒しながら、見えない目でまっすぐにマスターの気配を追う。

「可愛いよ、晶」

楽しそうなマスターの声。
何度となく続けられる口づけは徐々に深くなり、飲み込めなくなった唾液が素肌を滴る。

「晶。死に関することをコマンドで命令するのは禁じられている、と私が言ったのを覚えているかい?」

覚えている。
けれど答えることはできなかった。
口に、何かを噛まされたからだ。
唾液が染み込んだそれは皮のベルト……?だろうか。
中心部には何か冷たい金属の部品があり、そこに舌を固定された。
最早飲み込むこともできない唾液がダラダラと垂れる。

「口枷をするのは初めてだね。よく似合っているが……口づけできないのはやはり寂しいな」

勧めている準備とは裏腹の穏やかな声。
ここに来るまで口枷など持っていなかったことを考えれば、これはもともとこの部屋に備え付けられた備品なのだろう。

「これは明確なルールという訳では無いかが……。たとえ同意があったとしても、domがsubの肉体に修復不可能な損傷を与えるプレイを行う場合は、慎重な意思確認が必要とされている」

subの中には主への忠誠のために自ら入れ墨やピアスを自身の身体に施すものも少なくはない為、禁止されているわけではないが、推奨はされない。
なぜならそういった行為は、コントロールするdomの扱い方次第で、酷い自傷へと発展してしまう可能性が高いからだ。
それは肉体的にも精神的にも、取り返しの着かない瑕疵となる危険な行為。

後肛から引き抜かれたマスターの濡れた指先が、晶の胸に触れ、くりくりとその先端をなで回す。
まるで、今からそこに針を穿つと予告するように。

「晶………。今から君に証をつけよう」
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