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「不可能……か」
先ほどの様子を見る限り、姉は先ほどの話を認識したうえで庭にあれらのハーブを植えさせたのだろう。
だとしたら、その意図するところは。
「不安なのは私だけではない、という事だな」
それは、自分勝手なdomという性を持つ者に与えられた罰なのかもしれない。
消して消えることのない罪悪感、そして焦燥。
「私はsubとしては間もないですし、他のsubにもあまりあった事がありませんが、彼らだって、盲目的にすべてのコマンドに従うわけではないと聞いています」
「…そうだね。コマンドに従えない場合、subはsubドロップを起こす」
無理なコマンドを下されてもそれは同じことだ。
だからこそ、高ランクのdomは恐れられ、敬遠されがちになる。
強い執着と支配欲とを持つdomの要求に、求められるだけ差し出し続ければいづれ壊されるのは必然。
「以前通っていた病院で、聞いたことがあるんです。
ランクの低いものとランクの高いものがパートナーになった場合、どちらかがどちらかを引き上げる傾向にあると」
それは、domでもsubでも起こる話で、どちらかが相手についていこうとした結果そうなったのだろう、と。
「私達の場合も、そうなのではないでしょうか」
「……私が求めるだけ、君がsubとして成熟していくのは分かっていた」
コマンドを与えれば心から嬉しそうに従い、サブミッシブとしての本能に忠実になる晶。
それと同時にこうして、主であるはずの相手に助言めいた事をすることができているのも、そのランクが高位である事と関係あるのあろう。
高位のsubはただ主に従属するだけではない。
主を更なる高みへと押し上げる存在なのだ。
喉から手が出る程欲しい。
それこそ、どんな不可能を可能にしてでも。
そんなものを、棚ぼたのような偶然で手に入れてしまった。
だからこそ、こんなにも焦燥感に苛まれるのだろうかと、雄吾はようやく己の中にある焦りの理由に気づいた。
本来ならば、雄吾こそが晶に色々な知識を与え、育てていかなければならないはず。
だが晶はその全てを既に別のdomに与えられ、ほぼ完成した形でそこにある。
そしてその形こそが自分が最も美しい形だと思うからこそ、それを歪めようとも思えない。
そして何よりも。
「君を手放したく無い」
たとえどんなに自分には過ぎた相手だと理解しても、手ばしてやれるような、そんな段階はもうとうに超えてしまった。
晶は冷たく強張ったその手をぎゅっと握る。
「ならば変わればいいんです。より互いにあった形に、寄り添うように、お互いに」
「互いに、変わる…」
「唯一無二の形を作っていけばいいと、そう思いませんか」
だから、と。
晶は、もう一度、かつて口にしたその言葉を告げる。
「マスター。どうか私を躾て下さい。あなたの形に、ぴったり添うようにーーーーー」
先ほどの様子を見る限り、姉は先ほどの話を認識したうえで庭にあれらのハーブを植えさせたのだろう。
だとしたら、その意図するところは。
「不安なのは私だけではない、という事だな」
それは、自分勝手なdomという性を持つ者に与えられた罰なのかもしれない。
消して消えることのない罪悪感、そして焦燥。
「私はsubとしては間もないですし、他のsubにもあまりあった事がありませんが、彼らだって、盲目的にすべてのコマンドに従うわけではないと聞いています」
「…そうだね。コマンドに従えない場合、subはsubドロップを起こす」
無理なコマンドを下されてもそれは同じことだ。
だからこそ、高ランクのdomは恐れられ、敬遠されがちになる。
強い執着と支配欲とを持つdomの要求に、求められるだけ差し出し続ければいづれ壊されるのは必然。
「以前通っていた病院で、聞いたことがあるんです。
ランクの低いものとランクの高いものがパートナーになった場合、どちらかがどちらかを引き上げる傾向にあると」
それは、domでもsubでも起こる話で、どちらかが相手についていこうとした結果そうなったのだろう、と。
「私達の場合も、そうなのではないでしょうか」
「……私が求めるだけ、君がsubとして成熟していくのは分かっていた」
コマンドを与えれば心から嬉しそうに従い、サブミッシブとしての本能に忠実になる晶。
それと同時にこうして、主であるはずの相手に助言めいた事をすることができているのも、そのランクが高位である事と関係あるのあろう。
高位のsubはただ主に従属するだけではない。
主を更なる高みへと押し上げる存在なのだ。
喉から手が出る程欲しい。
それこそ、どんな不可能を可能にしてでも。
そんなものを、棚ぼたのような偶然で手に入れてしまった。
だからこそ、こんなにも焦燥感に苛まれるのだろうかと、雄吾はようやく己の中にある焦りの理由に気づいた。
本来ならば、雄吾こそが晶に色々な知識を与え、育てていかなければならないはず。
だが晶はその全てを既に別のdomに与えられ、ほぼ完成した形でそこにある。
そしてその形こそが自分が最も美しい形だと思うからこそ、それを歪めようとも思えない。
そして何よりも。
「君を手放したく無い」
たとえどんなに自分には過ぎた相手だと理解しても、手ばしてやれるような、そんな段階はもうとうに超えてしまった。
晶は冷たく強張ったその手をぎゅっと握る。
「ならば変わればいいんです。より互いにあった形に、寄り添うように、お互いに」
「互いに、変わる…」
「唯一無二の形を作っていけばいいと、そう思いませんか」
だから、と。
晶は、もう一度、かつて口にしたその言葉を告げる。
「マスター。どうか私を躾て下さい。あなたの形に、ぴったり添うようにーーーーー」
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