保護猫subは愛されたい

あうる

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「私が寝ている間にそんなことがあったんですか?」

寝室にて、寝酒ならぬ珈琲を片手に驚く晶の髪を優しくなでながら、「面倒なことにならなければいいけれどね」と、嘯く雄吾。

「いっそのこと初めから出入り禁止にしてしまえばいいのでは?」
「生憎、指名手配するわけにもいかないしね。現時点で何か悪事を働いているわけでもないし」
「ですが…」
「疑わしきは罰せよ、のほうが確実なのが間違いはないけれどキリがないよ」

有象無象が出入りするバーのような場所では、一定数のおかしな客が出入りすることはもはや仕方のないこと。
会員制を名乗る雄吾の店にしても、見覚えのない連中が入り込むことがないわけではない。

「まぁ、今回はどうやら身内がまいた餌に食いついてくれたみたいだからね。
まず様子見、かな?何が目的で、誰を探しているのか」
「店の客には連絡を?」
「したよ。厄介ごとに巻き込まれたくない子達はその日は遠慮してくれってね」
「なら少しは安心ですね。昨今はsubを対象にしたストーカー被害の話もよく聞きますし」
「腕に覚えのある連中が何人か詰めてくれると言っていたから、何かあってもすぐに対処できるようにはしてあるよ」
「何か起こった時は警察に連絡を?」
「それは最終手段かな。できる限り身内で納めたい」

警察に乗り込まれ、痛くもない腹を探られるのはまっぴらというわけだ。

「わかりました。ではそのように」
「晶?わかったって……店に出るつもりかい?」

店に出る、というのはいつものようにカウンター下で待機している意味ではないだろう。
つまりは、ともにカウンターの横に立つつもりだ、ということだ。

「そのつもりですが……何か問題が?」
「むしろ問題しかないだろう」

自分が狙われているなど考えもしない晶は堂々とした様子できょとんと首をかしげる。
だが、そんなことをされてはたまったものではないと声を震わせる雄吾。

「君は、自分も同じsubであることを忘れたのか?」
「さすがにそれはありませんが……その怪しげな客は狙っていたsub、といったのでしょう?だとしたら私は除外してもいいのでは?」
「どこら辺からその結論に達したのかはわからないけれど、店に来るのはともかく、カウンターに出るのは禁止だよ、晶」
「どうしても?」
「どうしても、だ」

強く制止したためか、少ししゅんとした様子で、「わかりました、雄吾さん」と大人しく了承する晶。
その晶を腕の中に囲い込み、「はぁ…」とため息をつく雄吾。

「君が店の事を考えてくれているのはよくわかっている。私の横に立とうと努力をしてくれていることも」
「……いえ」
「だがね、大抵のdomがそうであるように、私もまた、できる事なら君を誰にも見せたくはないんだよ。
腕の中に囲って、大切にしまっておきたいんだ」
「雄吾さん」
「ーーーわかってる。そうできないことも、そうしてはいけない理由もね」

慰めるようにお互いどちらともなく唇を求めあい、飲み物をサイドテーブルに戻した晶が、雄吾の背中に両手を回す。

「本当なら家で待っていてほしいくらいだが、最近では君が近くにいないと物足りなくてね。
どちらにせよ一人は店内の全体像を把握する人間が欲しかったところだから、晶にはそちらを頼む予定だった」
「カメラを使って?」
「そうだ。あれなら、客の前に出ずとも店内の把握ができるだろう。
私のスマホを渡しておくから、おかしな様子が見られたら、登録しておいた連絡先に状況を送信してほしい」

腕っぷしの強い連中に繋がるようになっている、とキスをしながら説明する。

「一応様子を見ていてくれるようには頼んだが、常に注視しているわけにもいかないからね」

まぁ、しょっぱなからそこまで針の筵のような状況にされて、何かできるならやってみろと思わないでもないが。
目的がはっきりしない以上、一応客は客だ。

「わかりました。そういう事なら任せてください、雄吾さん」
「頼りにしてるよ、晶」

なんとか話がうまく収まったことに安堵しながら、ぎゅっと晶を抱きしめる。

「そういえばこのバングル、なかなか好評だったよ」
「そうですか!よく似合っていますから当然ですが、なんだか嬉しいですね」
「君とお揃いであることは皆予想済みのようだったが、眠っていた君を起こしてまで確認しようという猛者はいなかったからね。明日以降はみな、物見遊山で客が増えると思うよ」
「カウンターに立っても?」
「短時間なら、ね?」

勿論、雄吾が許可をした相手の前でだけ、という条件は付くが。

「皆君の作ったカクテルを楽しみにしているようだったよ」
「プロである雄吾さんの隣で、恥ずかしいものは出せませんから」
「技術面に関しては、むしろ私の方があっという間に追い越される勢いだが」

何をするにしても真面目で小器用な晶は、とにかく物覚えが早い。
これでは仕事ができるのも当然だと妙なところで雄吾が納得をしたくらいに優秀だ。

「アルコールの種類も覚えて、いずれはフードも何か新しいものを考案したいと思っているのですが……」
「好きにしなさい。近いうちに共同名義に変更すれば、店の半分は君の物だ」
「共同名義?」

思いもよらぬ言葉だったのだろう。
腕の中から顔を上げ、びっくりした表情を浮かべる晶。

「前々から考えていたことだよ。驚くほどの事ではないだろう?私達はパートナーで、「伴侶」なのだから」
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