保護猫subは愛されたい

あうる

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☆前書という名の宣伝です。
番外編に出てきた榎本とモモンガちゃんが主人公のTL、「私の推しは圧の強いオーナー」が只今連載中です。 
興味を惹かれた方はよろしくお願いします。
ーーーーーーーー

「え~?ぅ~?その………」
「したんですか!?本気で!?」
「いや、だってさぁ!!」

うわーん、とdomのプライドも投げ捨てカウンターに突っ伏す客。

「出来心だったんだよ~~!!ほら、自分の方がいいお店知ってるぞっていうさ!!」
「だからってそんな怪しげなやつに……」
「でもでも!普段みんな自分の知り合いとか連れてきたりするじゃないか!別に審査があるわけじゃないしっ!」
「それは相手がsubの場合だろ。domは縄張り意識のある奴も多いし…」
「だよな…」
「ってか、ふざけんのもいい加減にしてマジな話にしろよ。考えなしでその行動はあり得ないぞ」

カウンターに集まる常連の殆どはdomだ。
グレア一歩手前の重苦しい空気が流れる中、客はとうとう両手を挙げて降参した。

「………分かってる。今更誤魔化しても、そりゃお前ら相手じゃ無駄だよな」

はぁ、と。
今までのふざけたテンションから一転し、突っ伏したカウンターから声を落とす。

「これだからお仲間は嫌なんだよなぁ…」
「考える方向性が似てるんだから当然だろ?誰だって自分のsubを危険な奴合わせたいとは思わない」
「それな」

この店が紹介制を取り、うかつに他者を招かない理由の一つは、店に出入りするsubを悪意あるdomの目にさらさない為。
ここはあくまで仲間同士で楽しく酒を飲み、愚痴を語り合う場所であって、一夜のお相手を探すための出会いの場とは意味合いが異なる。
初めに常連客達がいて、そこに新しく仲間入りしてきたdomやsubが入り、作り上げたこの店独自の雰囲気というもの。
それを乱すような真似をしたいと、一体誰が思うだろう。

確かにフリーのdomやsubがいないわけではないが、それだって店に来る目的は、お相手探しが百パーセントというわけではない。
酒の席で知り合い、運よくお互いフリー同士で気が合えば、まずはプレイしてみて、という話にならないでもないが、それだって友達の友達は友達、という安心感が根底になっている所がどこかある。
ここに初めて連れてこられた当初の晶のように、店の中に知り合いが皆無、という状況はまずありえない。
純也が晶をここに連れてきたのだって、相手がsubであり、身内に紹介しても問題のない人格だと判断してのことで、軽い気持ちで引っ張ってきたわけではないだろう。

「……どうもあいつ、誰か目的のsubがいるような感じだったんだよな」
「……この店の誰かか?」
「それは分からん。分らんが…」

多分俺に声をかけてきたのは、常連の中で比較的顔が割れていたからだと思う、とその客は言う。

「職場でもdomだってのは隠してないし、営業職で人との関りも多いしな。
店に入ってく姿を誰かに見られてたとしてもおかしくない」
「つまり、一番チョロいお前を利用したわけか?」
「チョロい言うな。……いやでも、多分そういうことなんじゃないかと……」

はぁ、と再び重いため息をつく客。

「実際さ、ここ以外にもいくつかそれっぽい店は紹介したんだよ。でも、ここの名前を出した時は明らかに顔色が変わったからな」
「―――ビンゴじゃねぇか」
「同じdomだからな、さすがに分かったよ。
ありゃ、お相手を探してるなんてもんじゃなく、狙った相手を追いつめた時の顔だった」
「そこまでわかってて紹介するとかお前馬鹿なの?」
「あの調子じゃ、遅かれ早かれ誰かを篭絡して乗り込んでくるのは時間の問題だと思ったんだよ!
それよりはまだ、俺が間に入って仲介する方が多少はましかと思って。
んで、今日はそれをマスターに相談しようとーー」
「それを早く言えよ」
「んだんだ」
「うるせぇ!……で、マスター今の話なんだけど……」

カウンターで、ただ黙って皆の会話を聞いていた雄吾は、涼しい表情を浮かべて「連絡先は?」と一言。

「先に来店予定日を確認して、相手のいないsubには、できるだけその日は遠慮してもらうことにしましょう」

すべての客の連絡先を知っているわけではないが、今回の事情を説明して皆に協力を仰げば、大体のメンバーがどこかしらで繋がるはずだ。

「なるほど」
「さすがマスター」
「店で揉められると困るもんなぁ」

迅速な対応を褒めながら、その時は自分もできる限りの仲間に連絡してみると協力を約束する客達。

「でも、そのdomは気になってたsubを取られたって言ってたんだろ?フリーじゃなくて、最近特定の相手ができたsubを狙ってるってことはないのか?」
「うわ、嫌なこと言うな、お前」
「あの、マスター。連絡先は聞いてるから、すぐ確認してみます」
「お願いしますね。できれば週末は避けていただきたいところですが」
「ですよね。人も多くなるし、連絡が回らないやつも中にはいるかもしれないし……」
「相手のいるsubをパートナーから掻っ攫うとか、下手すりゃ刃傷沙汰だもんな」

身近に感じる危機感に、警戒心も露わにざわめき始める店内。
ここ最近、丁度雄吾と晶の二人にあてられ、フリー同士でパートナーを組み始めた客が多いだけに余計だ。

「妙なことにならなきゃいいけどなぁ」
「ーーすまん」

すっかりうなだれる客。
だがこの場合、招かざる客が店を訪れることは、最早避けられない未来だったと考えるべきだろう。

「酒おごれ」
「ここにいる全員分な」
「ついでに飯も」
「んな金あるか馬鹿っ!」

がやがやがと常連達が話を詰めていく中、カウンターの雄吾は思わし気な表情で足元の晶に視線を落とす。
この状況、きな臭いものを感じずにいられるわけがない。

「マスター、その時には猫ちゃんも家に置いてきた方がいいんじゃないの?なんかヤバそうじゃん」
「確かに。猫ちゃんって、どっかふわふわしてるもんな」
「狙われてんの、猫ちゃんだったりして」

話しているうちに、まんざらシャレにならないと気づいたのだろう。
さーっと青ざめていく常連達。

「まさか、な??」
「さすがに……」
「だよな……」
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