悪役令嬢に転生したけど死亡エンド不可避?絶対に生き抜いてやる!

星華

文字の大きさ
3 / 4
第一章幼少期編

避けられない運命

しおりを挟む
「はぁ、はぁ、くるしぃ……」

一旦は回復したと思われたが、本筋に戻そうとするゲームの強制力なのか、レティシアは高熱を出した。
すぐに医師が呼ばれ、処置が始まる。
ルカスとアレクセイは、息も絶え絶えの
レティシアをただ、見ている事しか出来ず
苦悶の表情を浮かべている。

通常、この世界では魔力は10歳になってから
魔法院と呼ばれる、魔法を研究している
施設に行き、どんな魔法の適正を持っているか調べてから魔法を学び使える様になる。
学び始めは自分の限界が解らず、魔力切れで倒れてしまう者も少なくない。
魔力が枯渇してしまうと、身体の機能が上手く働かなくなり最悪死に至る。
そうならないように体力を付け、師に限界を見極めてもらいながら、適正のある魔法を伸ばして行くのが一般的だ。

レティシアは、突然魔法に目覚め自分の限界以上の力を使ってしまい魔力が枯渇してしまった。
中身は大人だが、8歳の小さな身体には
ダメージが大きく危険な状態が続いていた。

「……先生それしか方法は無いのですか?」

「はい、お嬢様は大変危険な状態です
このままでは、いつ命を落としてもおかしくはありません。魔法で一旦仮死状態にして
回復を待つしか、方法はありません」

ゲームの中で、レティシアが廃人の様に
なってしまったのは、魔法医と呼ばれる
魔法を使って医療行為を行う医師に、仮死状態にされた事で、エネルギーを使う事を最小限に抑え、時間をかけて回復していたからだった。

ーーこのまま、人形の様になった姿を
三人が見たらトラウマを与えてしまう。
それだけは避けたい……

「おと、さ、ま……」

「レティシア、喋ってはダメだ!」

「失礼致します。旦那様、ジェイド殿下
並びにフリードリヒ様、アスラン様が
いらっしゃいましたが……」

「それ所では無い、お帰り頂け!」

セバスチャンは静かに頷き、部屋を出行こうとしていた。

ーーダメ、このままでは何も変えられない!

「せ、セバス、お願い、殿下達を呼んで下さい……」

「レティシア?何をっ、ダメだ
喋ってはいけないっ!」

「おとうさま、お願いよ……」

レティシアは、ルカスの手を弱々しく握り
瞳は涙を溢れさせて懇願していた。

「レティシア、くっ、解った。セバスチャン
殿下達をこちらに……」

「はい、旦那様」

慌てた様子で、ジェイド達はレティシアの
部屋に入って来た。
虫の息で、血の気の引いた今にも儚く消えてしまいそうなレティシアを見て、三人は震えて絶句する。

「……こんな姿でごめんなさい」

「レティシア!どうしてこんな、
元気になったって……」

ジェイドは、レティシアのベッドに駆け寄り
手を握る。
フリードリヒと、アスランもショックで
顔を強張らせながらレティシアの手を握る。

「お礼が、言いたくて……」

レティシアは、弱々しくも笑顔を作り三人を見つめる三人は、ただ手を握るしか出来ずに頷く。

「アスランさま、私を庇って怪我をさせてしまってごめんなさい……助けてくれてありがと」

アスランは森で襲われた時に、暗殺者から武器を奪い、大立ち回りをした。
その際に、レティシアを狙って来た暗殺者から庇い額に傷を負ってしまった。回復士により傷は塞がったが痕が残ってしまっていた。

「い、いいんだ!レティを助けられたなら
この傷は勲章だ……」

アスランは誇らしげに胸を張る。

「フリードさまの魔道具の
おかげで、みんな耐えられました。
……ありがとう」

フリードリヒは魔道具を作る事が得意で、森に入ったのも、親に見つからずに魔道具を使って遊ぶ為だった。
暗殺者達との戦いは長時間に及び、子供の体力では到底耐えられない物だったが、フリードリヒの持っていた魔道具で、攻撃をしつつ回復をしながら持ち堪え無ければ、すぐに全滅していた。

「……はぁ、はぁ、ジェイドさまのおかげで
みんな、助かりました。
だけど二度といのち、を、盾にしないで貴方の代わりは、はぁ、はぁ、いないの」

ジェイド、アスラン、フリードリヒは、子供にしては、プロの暗殺者達に対して好戦していた。だが、時間が経つにつれ経験の差か最終的に追い詰められた。
ジェイドは、自分の命を狙って来たと理解していたため、レティシア達の命を助けるという条件で自分の身を差し出した。
ジェイドが、暗殺者に今にも殺されそうになった時、レティシアの魔力が発動して
暗殺者達を攻撃し、戦闘不能にした。
レティシアのまだ拙い攻撃では、通常であれば致命傷は負わせられなかっただろうが、三人が攻撃して弱らせていた事で、倒す事が出来たのだった。

ゲームの中では、ジェイド達は命がけで生還したのにレティシアが廃人の様になってしまったことに絶望した。
お互い顔を合わせると、嫌な思い出が蘇ってしまい、成長してもギクシャクした関係が続いた。結局最後まで、三人は仲の良かった幼馴染には戻れなかった。

ーーまだ幼い三人が命がけで乗り越えたこの経験を私のせいで無にしたくない!
お願い、あんなに仲の良かった三人が離れ離れになりませんように……

「み、みんなが居てくれて良かった。
三人はわたくしの誇りです!
……元気になったらまた遊んでくれる?」

「レティ、レティ……もちろんだ!」

ジェイド達は泣きながら頷き、レティシアの手を強く握りしめた。
その姿に安堵した表情を浮かべて、そのままレティシアは気を失った。

「レティシア、レティ?先生処置を、早く!レティシアああぁ…」

ルカスの絶叫が響き渡り、ジェイド達は部屋の外に出された。
危険な状態にあったレティシアは魔法医にすぐに仮死状態にされた。それから5年もの間、眠り続けたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

処理中です...