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婚約破棄の夜
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舞踏会の夜、王都の社交界がもっとも煌びやかに輝く季節。
リエンヌは、兄ユリウスの勧めでしぶしぶ出席していた。
「……兄さま、本当に帰りたいです……」
「せめて一曲だけ。おまえが頑張って来たことを、王家に見せる良い機会だ」
だがその“機会”は、あまりに残酷だった。
扉が開かれ、会場の空気が一変する。
「リオン・ヴァルフェリア公爵嫡男、ご婚約者・リエンヌ嬢に申し伝えがあります」
司会者の声が高らかに響く。
会場の視線が一斉に二人へ注がれ、リエンヌは一歩も動けなかった。
リオンが、その傍らに子爵令嬢フローラを伴って現れたからだ。
フローラは花飾りのようなドレスに身を包み、無邪気な笑みを浮かべていた。
そしてリオンは――まっすぐ、リエンヌを見た。
「リエンヌ・アレストール嬢。あなたとの婚約を、破棄させていただきます」
「……っ」
誰かが喉を鳴らす音がした。
王族すら口を閉ざすなか、リオンは続ける。
「あなたの“魅了”は、魔力ではなく、人を惑わす毒。あなたのせいで、幾人の貴族が理性を失ったか……私は、フローラ嬢のように純粋な女性と生きていきたいのです」
(……ああ、やっぱり。そうなるのね)
胸の奥が、静かに崩れた。
けれどそのとき――
「黙れ、愚か者」
低く、会場に轟く声。
セイラン第二王子が、舞踏会の壇上へと進み出た。
「魅了の魔力など、魔導省の調査で“無自覚で制御不能”と判明している。それを盾に、君が彼女を侮辱するのは筋違いだ」
「……王子殿下」
「公爵家の長男でありながら、理解も努力もせず逃げただけの男に、アレストール家の令嬢を語る資格はない」
その一言で空気は決定的に変わった。
さらに追い打ちのように、リオンの父である公爵が立ち上がった。
「この場で廃嫡を宣言する。貴様に我が家の名を継がせるわけにはいかぬ!あんな、マナーも教養もない…公爵夫人は無理だろう」
「なっ……父上ッ! フローラは悪くありません! あの子は、ただ、可愛くて……俺を愛して……!」
「意味がわからない。婚約破棄の理由はそれか?公爵家の事を考えたなら、そんな選択は出来ないだろう。お前は公爵の後継の資格がない」
場が静まり返る中、リエンヌは何も言えなかった。
ただ、震える足でその場を離れようとした時――
「リエンヌ嬢、少し歩きませんか?」
手を差し出したのは、セイランだった。
リエンヌは、兄ユリウスの勧めでしぶしぶ出席していた。
「……兄さま、本当に帰りたいです……」
「せめて一曲だけ。おまえが頑張って来たことを、王家に見せる良い機会だ」
だがその“機会”は、あまりに残酷だった。
扉が開かれ、会場の空気が一変する。
「リオン・ヴァルフェリア公爵嫡男、ご婚約者・リエンヌ嬢に申し伝えがあります」
司会者の声が高らかに響く。
会場の視線が一斉に二人へ注がれ、リエンヌは一歩も動けなかった。
リオンが、その傍らに子爵令嬢フローラを伴って現れたからだ。
フローラは花飾りのようなドレスに身を包み、無邪気な笑みを浮かべていた。
そしてリオンは――まっすぐ、リエンヌを見た。
「リエンヌ・アレストール嬢。あなたとの婚約を、破棄させていただきます」
「……っ」
誰かが喉を鳴らす音がした。
王族すら口を閉ざすなか、リオンは続ける。
「あなたの“魅了”は、魔力ではなく、人を惑わす毒。あなたのせいで、幾人の貴族が理性を失ったか……私は、フローラ嬢のように純粋な女性と生きていきたいのです」
(……ああ、やっぱり。そうなるのね)
胸の奥が、静かに崩れた。
けれどそのとき――
「黙れ、愚か者」
低く、会場に轟く声。
セイラン第二王子が、舞踏会の壇上へと進み出た。
「魅了の魔力など、魔導省の調査で“無自覚で制御不能”と判明している。それを盾に、君が彼女を侮辱するのは筋違いだ」
「……王子殿下」
「公爵家の長男でありながら、理解も努力もせず逃げただけの男に、アレストール家の令嬢を語る資格はない」
その一言で空気は決定的に変わった。
さらに追い打ちのように、リオンの父である公爵が立ち上がった。
「この場で廃嫡を宣言する。貴様に我が家の名を継がせるわけにはいかぬ!あんな、マナーも教養もない…公爵夫人は無理だろう」
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場が静まり返る中、リエンヌは何も言えなかった。
ただ、震える足でその場を離れようとした時――
「リエンヌ嬢、少し歩きませんか?」
手を差し出したのは、セイランだった。
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