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鍵尻尾
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王宮の奥深く、国家魔術研究院の大広間に、モモナはただ一人立っていた。
周囲を囲むのは、魔法士、占術師、精霊術師──異世界でも最上位とされる賢者たち。
彼らは震えていた。
「……解析不能です」
「この少女から発される力、精霊の加護ではありません。神でも魔でもない……」
「まるで、意志を持つ“祝福”そのもの」
冷静な顔でそれを聞いていたモモナが、ゆっくりと口を開いた。
「それはアピちゃんを守るためだけに、私に宿った力。誰にも説明する気はない」
「アピ……? ああ、聖女様のことか」
その言葉に、モモナの金の瞳が細く鋭くなる。
「その呼び方、二度と口にしないで。……あれは、私だけの呼び方」
ひとつ息を吐き、背を向けて歩き出す。
誰も、彼女を引き止められなかった。
⸻
その夜、青葉はモモナの膝に頭を乗せていた。
「ねぇ、モモナ。無理してない?」
「私は強いよ。アピちゃんと違って、メンタルは鉄筋コンクリート」
「ふふ、なにそれ」
アピちゃんは、モモナの尻尾をそっと手に取る。
カギのように曲がった先端を、両手で包むように撫でながら、優しく言った。
「モモナの尻尾、やっぱり“幸せの鍵尻尾”だね……。この子といると幸せになれるって、おかあが言ってた」
「……私は、アピちゃんの鍵になりたい」
「うん、もうなってるよ。モモナがいるだけで、全部開く気がする」
そう言って、青葉はモモナの頭に手を伸ばし──目の上から、優しく撫でた。
モモナはわずかに目を閉じ、猫だったころの記憶を思い出す。
静かな日差し、窓辺のクッション、指先のあたたかさ──
「……うん、やっぱり撫でるの上手。前と同じ」
「え? なに?」
「別に。感想言っただけ」
⸻
その頃、魔王城。
「聖女が潰れたと思ったら……今度は“獣人”か。おもしろい」
仮面の男が、青い炎の玉を覗き込む。
そこに映る、クールな猫耳少女と、彼女を撫でる聖女。
「飼い主に忠義を尽くす獣か……。さて、“壊す”価値はあるか?」
魔王軍が動き出そうとしていた。
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「……解析不能です」
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「ふふ、なにそれ」
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カギのように曲がった先端を、両手で包むように撫でながら、優しく言った。
「モモナの尻尾、やっぱり“幸せの鍵尻尾”だね……。この子といると幸せになれるって、おかあが言ってた」
「……私は、アピちゃんの鍵になりたい」
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モモナはわずかに目を閉じ、猫だったころの記憶を思い出す。
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「え? なに?」
「別に。感想言っただけ」
⸻
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