仮初めの花嫁 義理で娶られた妻は夫に溺愛されてます!?

<< 妹と親友への遺言 >> side 大志

14、最後の一押し

「お兄ちゃん、お風呂お先でした～」
「あっ、ああ……」

　おいおい、Tシャツがダボダボ過ぎるだろ。襟ぐりが開きすぎだ、肩紐見えてる。
　白Tを着る時は肌着は白かベージュがデフォって俺の元カノが言ってたぞ。……ってか、男の俺でさえ知ってるんだから、女のお前は知っとけよ。なんでブラが水色のチェック柄なんだよ。思いっきり透けてんじゃん！

ーーだけど、ソレを俺が言ったらエロい目で見てるとかキモいとか言われそうだよな……。

　まあ、実際結構エロい目で見てるしな。


　中3になった桜子はますます美しさと可憐さに磨きをかけ、まばゆい輝きを放つようになっていた。
　あまりにもキラキラしているものだから、冗談抜きで、アイツが何処にいてもすぐに目につくし速攻で発見することが出来る。
　学校に迎えに行った時なんかも、校門から出てくる同じ制服の群れの中で、不思議と桜子だけが目に飛び込んで来るんだ。

　そして俺は……たびたび桜子相手に勃つようになっていた。
　桜子の身体つきが女性らしくなってきたから男として仕方がない反応なのか、妹相手にこうなるのはやはり異常な事なのか、分からない。
　そんなこと友達にも聞けやしない。


「ねえお兄ちゃん、いらないTシャツってある？」

　ソファーで雑誌を読んでるフリをしながら思考の淵にどっぷり浸かっていたら、急に考えごとの対象が話しかけてきてハッとした。

「Tシャツ？えっ、なんで？」

「パジャマ代わりにしたいんだけど。友達がね、彼氏のTシャツをパジャマにするとゆったりしててちょうどいいよ……って言ってたの」

ーードクン

「へっ……へぇ～。変わったことが流行ってるんだな」

「うん。私が『お兄ちゃんので試してみようかな』って言ったら、みんな『お兄ちゃんのなんか汗臭そうで嫌だけど、桜子のお兄ちゃんならアリ！』って言ってた。お兄ちゃん人気者だよ」

「ふ～ん、桜子は兄ちゃんのなんか嫌じゃないの？」
「全然大丈夫。お兄ちゃんは汗臭くないしカッコいいし」
「ふ～ん」

ーーふ～ん、そうか。カッコいいか。

　口元がニヤけるのを必死で抑えつつ、
「それじゃ、一緒にタンスを見てみるか」
　なんて連れ立って2階の部屋に行き、Tシャツの物色を始める。

「どれでも好きなの持ってけよ」
「洗い替え用に2枚でもいい？」
「何枚でも」

　タンスを漁っている桜子を立って見下ろしていると、丸めた背中にブラがハッキリ透けて見えていて、やっぱりコイツ無防備だな……なんて考えた。

　コイツ、こんな風に男の部屋で2人きりでいて無用心に背中を曝して、俺に襲われる可能性とかこれっぽっちも考えないんだろうか。

　いや、襲わないけど。
　家族といて警戒する方が逆に変なんだけど。

　だけど……もしも桜子が俺のベッドに寝転がって誘って来たら……俺は抱けると思う。

ーーえっ？！

　ズクン

　ヤバイ。妹相手に何を考えてんだ。
　下半身が反応している。こんなの見られたら一巻の終わりだ。

「俺、トイレに行ってくるから、好きなの選んで持ってけよ」

　慌ててトイレに飛び込み深呼吸をする。

ーーヤバイな……。

　なんかいろいろギリギリな気がする。
　張り詰めた糸が切れる直前みたいな……。
　風船が破裂する直前みたいな……。

　そしてその時はもう目前に迫っているのに、俺は必死で目をそらそうと抗っていた。

　たぶん背中を一押しされたら、俺はもう……。


　トゥルルルル……

　トイレから出たタイミングで、1階の廊下から電話の音。
　慌てて駆け下りて受話器を取る。

『もしもし、八神さんのお宅ですか？ ……あっ、あの……僕は桜子さんと同じ中学の……』

ーーあっ、駄目だ。

　背中を押されてしまった……