43 / 177
<< 妹と親友への遺言 >> side 大志
18、山崎さん事件 (1)
しおりを挟む-------------------
このお話は、本編55話、遺言の真相 (2) のお話を大志サイドから語ったものです。
--------------------
『山崎さん事件』の話をしようと思う。
事件というほど大層なものでは無いし、冬馬の中で彼女はそれまで振ってきた沢山の女の内の1人であって、もう顔さえ覚えていないかも知れない。
だけど俺の中では強烈に印象に残っている出来事だ。何故なら俺が大志に対して行った最初の妨害行為……桜子から遠ざけるために画策した初めての行動だったから。
そこに至るまでにはちょっとしたきっかけやら俺の心情の変化なんかがあった訳だけど、まずは流れ的に、大学に入ってしばらくした頃の俺と冬馬の下ネタ話から説明した方が分かりやすいと思う。
当時冬馬は俺の家から3駅先にあるアパートに住んでいて、7.3畳の洋間とキッチンからなる1Kの部屋に俺もたまに遊びに行っていた。
普段は大学から近い俺の家で一緒に過ごすことが多かったけれど、男同士の話をする時は、桜子のいない場所の方が都合がいい。
「なあ冬馬、お前の初体験ってどんなだった?」
冬馬のアパートで一緒にレポートを仕上げた後で、出前のカツ丼を食べながら不意に聞いてみたくなった。
「えっ、どんな……って……」
冬馬は堅物というか、どうも下ネタが苦手な節があるのでその手の話をしたことが無かったのだけど、自分が桜子に夢中なあまり、徐々に当時の彼女への興味が薄れていたこともあって、他人の性事情を聞いてみたくなったのだ。
「俺は……中2の終わりに1つ上の先輩と」
「嘘っ、マジか!」
冬馬の性格上、性交渉は遅めで高2くらいで済ませてて、相手は真面目に付き合ってた同級生の彼女と……なんて勝手に想像していた俺は、思いのほか早くて、しかも先輩というエロい響きに興奮して、その話に思いっきり食い付いた。
しかも、俺の童貞卒業とほぼほぼ同時期じゃないか。
「えっ、どんなだったんだよ、詳しく!」
「えっ……」
若干言い淀んでいた冬馬だったが、俺が『聞くまで終わらせないぞ』オーラを出しまくっていたのと、その場に俺と2人きりしかいなかった事もあって、ボソボソと白状した。
「それまで殆ど喋った事も無かったんだけど、中2の夏休みに家まで来て、『卒業まででいいから付き合って欲しい』って告白されたんだ。背が低くて可愛らしい感じの人だった。それで本当に彼女の卒業まで付き合って終わった」
「おい!一番重要な部分が飛んだぞ!それで初体験はよ」
「……彼女の卒業式の日に、『最後に思い出が欲しい』って家に呼ばれて、彼女の部屋で。お互い初めてだったけど、相手がいろいろ調べてゴムも用意してくれた。それだけ」
「ワオ、上げ膳据え膳だな」
その後のこともいろいろ追求すると、どうも冬馬は恋にもセックスにも淡白で、相手から迫られればそこそこ付き合うけれど、去る者追わずで執着が無いし、エッチも別にしなくて構わないというスタンスらしい。
エッチがそこそこ好きな俺とは違うけれど、相手に執着が無いところなんかは似ているかも知れない……と思った。
「……それで最後に付き合った塾講師は、実際に付き合ってみたら束縛が凄いし塾の女生徒にまでマウント取ろうとするからすぐに別れた」
「だけどスーツの似合うメガネ美女って男のロマンだな」
「ロマンかどうかは知らないけれど、ああいうのはもう二度とごめんだな」
「冬馬のタイプってどんなのだよ。自分からグイグイ行きたくなった事って無いの?」
「……無いな。それに今は目の前のことに必死でそれどころじゃないだろ。まずは法科⼤学院に進んで、無事に卒業しないとな。恋愛にかまけている暇なんて無いよ」
冬馬はバイトもしていたから、余計にそう思ったのかも知れない。
なのに、そんなことを言っていた冬馬が、俺の家には嬉々として通い、長居していく。
最初、俺はそれが家庭料理と家族団欒に惹かれてのことだと思っていた。
だけど徐々にそれだけじゃ無いのでは……と疑うようになってきた。
『桜子ちゃん、隣においで』そう言って桜子を手招きし、頭を撫でたあの日からだ。
堅物で慎重派で自分から派手な行動を起こすことのない冬馬が初めて見せた、あからさまな好意。
それが親友の妹に向けたただの親切心とは違うと感じたのは、俺自身が桜子に無自覚に持っていた感情と共通するものを嗅ぎ取っていたのだと思う。
そして実際に行動に移した大学3年生の冬。
あれは自分でも山崎さんに悪いことをしたな……とは思うけれど、無自覚の嫉妬が呼び寄せた悪魔の囁きが、そうさせたんだろう。
まさしく『嫉妬は人を狂わせる』を絵に描いたような浅はかで軽はずみな行動だった。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。