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<< 妹と親友への遺言 >> side 大志
21、山崎さん事件 (4)
しおりを挟む「よお冬馬、山崎さんと付き合わないの?」
カレーライスが乗ったトレイをカタンと置いて目の前に座ったら、冬馬はエビフライ定食を食べていた手を止めて、箸を置いた。
「何の事を言ってるんだよ」
「またまた、とぼけちゃって~。山崎さんがお前のことを諦め切れないって泣いてたって、彼女の親友から聞いたぞ」
「その親友、最低だな」
「いや、違うんだって!その子は山崎さんのためを思って、どうにかならないかって俺に泣きついてきたの!」
山崎さんがフラれた。あれだけグイグイ行くな、早まるなと釘を刺しておいたのに、年末の恋人イベントに間に合わせたかったのか、昨日学内で冬馬を呼び出して、階段の隅で告ったらしい。
今の距離感で告白が成功すると思ってたっていう方がビックリだ。
ーーせめて年を越すまで待てばいいものを……。
いや、それでもきっと冬馬は彼女を振っただろう……というのは既に俺の中で確信していたことだけれど、何かの弾みで上手く言っちゃえばいいのに……なんて願ってもいたわけで……。
最低なのは百も承知。
だけど俺はちゃんと協力したし、その先の選択を間違えたのは彼女自身の問題だ。
「なあ、山崎さんのどこがダメなわけ?美人だしミス法学部だし、仕事の悩みも共有できるし文句なしじゃん」
「今は勉強に集中したいし、それどころじゃないんだよ」
冬馬は再び箸を動かしながら、大して表情を動かさずにエビフライをパクついている。
そんな顔で食べられたらエビフライが可哀想だろ。もう少し表情筋を動かしてやれよ。
なんだよ、桜子が作った料理なら目を細めて大絶賛するくせに。
「山崎さんは来年お前が院に来るまで待っても構わないってよ」
「来年だって再来年だって忙しいし無理だよ」
あからさまにムッとしたので、これ以上突いても仕方がないと諦め別方向から攻めてみる。
「それじゃあさ……お前はどんな子だったらいいわけ? 」
「えっ……」
ーーおっ、動揺した。
「高校の時に付き合ってたようなスーツが似合うインテリ系?」
それには答えずご飯を口に運んでいる。
ノーコメントかよ。
「それじゃあ聞き方を変えるよ。お前が付き合うとしたら、可愛い妹系か、大人っぽいお姉さん系、どっちなの?」
冬馬は大袈裟に溜息をつくと、カタンと箸を置いて真っ直ぐに見据えてきた。
「やけにしつこいな。それって答えなきゃダメなのかよ」
「ああ、答えろよ。お前を好きな女子は多いんだぜ。山崎さんにしたって、どうして自分じゃ駄目なのかを知っときたいだろ?」
本当は山崎さんとかどうでもいいけど、この質問への反応がどうしても知りたかった。
俺の顔はきっと必死になっていたと思う。
冬馬はもう一度大きく溜息をつくと、観念して口を開いた
「そうだな……年上とか年下とかは関係なく……大人っぽくて雰囲気のある子。キャピキャピしてなくて、落ち着いてる子がいい」
ーーくそっ、確定かよ。
きっとその瞬間、俺たちは同じ女の顔を思い浮かべていたに違いない。
なのにお互いそれを口には出さず、素知らぬフリで会話を続けて……今思えば酷い茶番。
そして山崎さんは俺に巻き込まれて煽られた被害者だった。
「ふ~ん……大人っぽい子ね。分かったよ」
「そうだよ。これで納得したか?とにかく俺は今は恋愛する気は無いからな!」
「『恋愛する気はない』んだな、分かった」
ーー絶対だな! お前絶対にしばらく恋愛するなよ!
桜子にだけは……惚れるんじゃないぞ。
まあ、その時点で俺もお前も既に手遅れだったんだけどな。
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