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<< 外伝 John Winstonへの手紙 >>
8(ラスト) 、See you again (2)
しおりを挟むボストンでタイシが、トウマもタイシと似たような境遇で、天涯孤独の身の上だと話していた。
だからこそ分かり合える部分も多く、2人で助け合って生きてきたのだと。
トウマはタイシと同級生だから、まだ31歳。
そんな彼がタイシの秘密を守り、闘病生活を支えながら事務所を引き継ぎ、タイシの死後はサクラの支えとなってきたのだ。
1人で大きな荷物をいくつも抱え、途方に暮れたこともあっただろう。
きっとサクラの前では弱音を吐けず、泣くことさえ我慢していたに違いない。
彼だって辛くないはずは無いのに……。
私は会ったこともない彼に親しみを覚え、お互い内容は違うもののタイシの秘密を抱える同志として、友を失った哀しみを分かち合いたいと思った。
「トウマ……ボストンに来ないか。君と話したいことが沢山あるんだ」
『俺も……あなたと話をしたいです』
ーーそうだな、2人でタイシの話を沢山しよう。
タイシの手紙の文面が脳裏に浮かぶ。
『いつか彼と桜子が揃ってあなたに会いに行くことがあれば……あなたが彼に会うことがあったら……その時にゆっくりアイツの話を聞いてやって下さい』
『医師の守秘義務を破ってまであなたが打ち明けるとは思っていないけれど……くれぐれもよろしくお願いします。
その秘密も、いつか俺の親友と酒を酌み交わしながら話してもらうなら構わないかな……って思っています』
タイシ、君が医師の守秘義務まで持ち出して釘を刺したボストンでの出来事だけど、トウマにだったら話してもいいんだろう?
そして、トウマが抱えている荷物を少しだけ私が引き受けることを、君も願っているんじゃないか?
だから手紙にあんなことを書いて寄越したんだろう?
「トウマ、君が来る日のために、とっておきのお酒を用意しておくよ」
『いいですね、アイツのために2人で献杯しましょう』
ーーああ、タイシの話をしながら一晩中飲み明かそうじゃないか。
電話をメアリーと変わり、私は再びガーデンチェアーに深く背中を預ける。
メアリーは桜子と2、3言挨拶を交わして電話を切ると、私の向かい側のチェアーにゆっくり腰掛けた。
「メアリー」
「はい、なんですか?」
「私はもう少しだけ仕事を続けることにしたよ」
「あら、リタイアは取り消しですか?」
「ああ……もう少し頑張ってみたくなったんだ」
「そうですか」
実を言うと、来年60歳になるのを機に仕事を辞め、フロリダ辺りに小さな家を買ってメアリーとのんびり暮らそうかと考えていた。
だけど……。
去年の秋、愛する女性のために海の向こうから決死の思いで渡米してきた男と出会ってしまった。
彼は自分の無力さに打ちひしがれる私のことを、ヒーローだと、救世主だと言ってくれた。
こんな私にも、まだまだ出来ることがある。救える命がある……タイシ、君がそう思わせてくれたんだ。
君が歯を食いしばって最期まで命を燃やし尽くしたというのに、生きている私が早々にリタイアして楽になろうだなんて、おこがましいにも程がある。
君ならきっと、そう言うだろう?
My dear friend, 君こそ私のヒーローだったよ。
君を通じて、私は改めて生きる喜びと命の尊さを知った。君が思い出させてくれたんだ。
タイシ、私はFarewell (永遠にさようなら)なんて言わないよ。
どうせあと何年もしたら私も神の元に召されるんだ。
その時になったらきっと君が天国の門の前で出迎えてくれるんだろう?
『日本の親友』よ、私こそ君との出会いと友情に心から感謝する。
そして、君の大切なサクラとトウマに幸多かれと、遠くアメリカから見守り続けるよ。
どうか天国で安らかに。
See you again
赤いパラソルの向こうに見える空はどこまでも澄んだブルーで、白い飛行機雲が真っ直ぐなラインを描いていた。
この空は日本にも……そしてきっと、タイシのいる場所までも続いているのだろう……と思った。
Fin
*・゜゚・*:.。..。.:*・' .。.:*・・**・・*:.。 .。.:*・゜゚・*
ジョン編終了です。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
残りは桜子と冬馬の新婚旅行(ボストン・ニューヨーク)、大志の最期、そして桜子と冬馬の1~2年後のお話……で番外編も終了かな?と考えています。
あと少し、最後までお付き合いいただければ幸いです。
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