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裏 あしながおじさまは元婚約者でした
親の心、子知らず
しおりを挟む朝哉のクインパス乗り込み&時宗への直談判&土下座は、書籍版収録なのと、視点変更もできないためこちらでは丸ごとカットです。
その後の時宗と定治の会話をどうぞ。
*・゜゚・*:.。..。.:* .:*・**・*:.。..。.:*・*: .。.:*・゜゚・*
クインパスは年間売上高が6000億円を超える光学機器や医療機器メーカー業界のトップで、特に消化器内視鏡では世界トップシェアを誇る日本有数の大企業だ。
体温計や顕微鏡などを手掛ける一方で外科領域にも製品拡大している最中で、白石メディカとの連携は今後の事業展開において大きな力になると期待されていた……はずだった。
肩をガックリ落とし、それでも悲壮な決意を胸に、一度も振り向くことなく出て行った息子を見送ると、時宗は給湯室に向かって声をかけた。
「会長、朝哉が帰りました」
「もう出ていっても大丈夫かな」
カチャリ……と隣の給湯室のドアが開いて顔をのぞかせたのは、クインパス会長であり相談役の定治だ。
婿養子の時宗にとっては、義理の父親でもある。
席を外していた秘書の赤城も奥から出てきて、2人分の玉露とお茶うけの和三盆をコトリとテーブルに置く。
定治は白石メディカとの提携問題、そして今回の大介氏からの麗良との婚約の申し出について、つい先程までこの場で時宗と話し合いをしていた。
そこに受付から朝哉が上がっていったと連絡が来たものだから、お手並み拝見とばかりに給湯室に潜んで様子をうかがっていたのだった。
「今回はかなり突き放したもんだな」
ソファーに座った定治が玉露を一口啜ってほぅ……と息を吐き、湯呑みを茶托に戻す。
「あいつは人の上に立つ器がありますが、経営者となるには考えが甘いですから」
「優しすぎるが故に兄を越えようとしなかった」
「仰る通りです」
黒瀬家の2人息子は、父親の贔屓目を抜きにしても、かなり出来が良い……と時宗は思っている。
将来は息子のどちらかが企業のトップとして皆をまとめあげ、もう1人は片腕として支える……どちらがどの役目になってもいいように、幼い頃から分け隔てなく英才教育を施してきた。
長男の透が高2、朝哉が中3の頃には、時宗も妻の琴子も後継者は朝哉だと確信していた。
透は頭が良くて勉強ができるが、穏やかで大人しすぎ。おっとりしていて競争することを好まない。自分が好きな学問に打ちこめればそれ以外はどうでも良いという考え方だ。経営者には向いていない。
本人もその気がなく朝哉にやらせればいいと言って憚らない。どちらかといえば一つのことに打ち込む研究者肌だから、開発部門を任せたほうが上手くいくだろう。
一方の朝哉は何をさせても無難にこなす器用さがあり、社交的で行動力がある。
何より人心を掴む魅力に長けている。
顔の造形が整っているうえに人目を惹く華があるから、放っておいても周囲に人が集まってくるのだ。
『人は見掛けじゃない』なんていうのは大嘘だ。
見た目が良い人間はハロー効果の恩恵に預かることができ、そうでない人間よりも17%も生涯賃金が高いという論文もあるくらいだ。
そうして周囲から注目され憧れられる人間は、自信を持ち、期待に応えようとさらなる上を目指し成長する。
周りの目が人を育てるのだ。
知性、身体能力、行動力、社交性にカリスマ性、そして類稀なる美貌。
ここまで恵まれた条件を備えながら、朝哉はどこか一歩引いているところがあった。
理由はわかっている。兄に遠慮しているのだ。
会社は兄が継ぐと思っていたのに、ある日を境におまえが後継者だと言われ、戸惑っているのは明らかだった。
幼い頃から兄弟を連れて行っていたゴルフコースにも、朝哉だけを同伴するようになった。
透がゴルフよりも家でコンピューターを弄っているほうがいいと言うので自然とそうなったのだが、朝哉はそれを『自分が特別扱いされている』と受け取ったようだ。
「自分は会社を継がない」と反発し、兄の手足となって支えると公言するようになった。
アイツが野心を持ち、トップに立つ気になってくれれば……と思っていた。
後継となる息子が2人揃ってやる気がないようでは会社の将来はない。
どうにかしなければ……そう思っていたところに、今回の問題が起きた。
朝哉は白石雛子に夢中だ。幼い頃から女性に追い掛けられることはあっても自分から追うことのなかった男が、唯一自ら望んだ少女。
だからあの話を聞けばすぐに飛んでくるだろうとは思っていた。
ーーまさか夜まで待てず、会社に直接乗りこんで来るとは思わなかったが……。
これはチャンスだ、利用しない手はない。
だから条件を目の前にチラつかせ、朝哉を必死にさせることに成功した。
作戦はまんまと成功したのだ。
鼻先にニンジンをぶら下げるようなことをした。
息子の恋心を利用したと言われればそれまでだが、白石メディカと雛子を同時に救い、朝哉のやる気も出させるという全方位に有益な方法を考えた結果そうなったというだけだ。
優しさと思いやりだけでは、3万人以上の従業員を束ねる企業のトップに立つことはできない。
赤城が空になった湯呑みを見て新しいお茶を準備しようとすると、定治が「もう結構」と告げて腰を上げた。
「まあ、これでアイツも全力を出す覚悟が決まっただろう」
「はい、かなり厳しい条件をつけましたが、朝哉ならやり遂げると信じています」
それでもアメリカの厳しい大学で、卒業のための単位を落とさないようにしながら条件をクリアするのは至難の業だろう。
「まあ……そうだな」
ドアの前でゆっくり振り返って、定治がニヤリと口角を上げる。
「ジジイは孫に甘いもんだって決まってるからね。私は朝哉のほうにつかせてもらうよ」
「はい、どうかよろしくお願いします」
真っ直ぐに立ち上がり深く頭を上げる時宗に軽くうなずくと、定治は赤城に付き添われて部屋を出ていった。
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