婚約破棄してきた強引御曹司になぜか溺愛されてます

田沢みん

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裏 あしながおじさまは元婚約者でした

結ばれた日、心を殺した日 side朝哉1*

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 雛子の父、宗介が亡くなった事が、悪夢の始まりだった……と、朝哉は今でも思っている。

 あの日、婚約を目前にして、明るいはずの未来が一気に暗転したのだ。


 雛子の叔父一家は、世田谷の家に押しかけ雛子を寮に追い出したばかりか、今度はとんでもないことを言い出した。

『雛子、じつはお前の父親が会社の金で私服を肥やしていたせいで、白石工業には多額の負債があるんだ。そのせいでクインパスとの合併話が頓挫している』

『会社を潰さないために自分たちも努力している。雛子も白石の娘として協力してほしい』

『高校だけは出させてやるから、卒業後は大地と結婚して家に入り、サポートをしろ』

『朝哉は麗良と結婚することになった。邪魔はするな』

 雛子から電話で聞かされた話はどれも寝耳に水で、朝哉は手にしていたスマホを思わず落としそうになったほどだ。

――そんなの冗談じゃない!

『ヒナ、そんなの絶対に嘘だから! 俺が愛してるのはヒナだけだし、結婚相手もヒナ以外考えられない。第一、ヒナという婚約者がいながら他の女と同時進行なんてある訳ないだろ!?』

『うん……朝哉を信じる。ごめんね、弱気になって』
『ヒナは悪くない。俺が父さんと話をしてくるから、心配しないで』

『朝哉……お願い。父が遺した大切な会社を潰したくないの。白石工業は白石メディカの基礎なの。一生掛かっても恩返しをしますから……どうかお願いします!』

『雛子の大切なものは俺にとっても宝物だ。大丈夫、どんなことをしたって絶対に守るから』

 雛子が自分の婚約でさえも、会社のためになるならと笑顔を見せていたのを思いだす。
 両親を失い、家さえも失った彼女から……これ以上何一つ失わせるものか。

 そう決意してクインパス本社に乗りこんだ朝哉を待っていたのは、雛子と別れろという、時宗の非情な言葉だった。

 白石メディカが経営破綻寸前の状態であること、白石大介を排除しM&Aを仕掛けるしか会社を救う道はないということを聞かされた。
 そして高いリスクを冒してまでそれを実行して欲しいというのであれば、朝哉にもそれ相応の犠牲を払えと詰め寄られたのだ。


「おまえは私に『会社の命運』と『おまえの恋人』ではかりに掛けさせた。おまえ1人の自己満足のために会社を犠牲にしてでも恋人を救えと、そう言ったんだ。なのに自分自身は恋人を失いたくないなんて、あまりにも利己的だと思わないか?」

 どうするかはおまえが決めろ……時宗にそう言われて朝哉の腹は決まった。

「わかりました。ヒナ……雛子さんとは別れてニューヨークに行きます。会社も継ぐし、父さんの言う通りにします。ですから、雛子さんを……白石メディカをどうか助けてあげてください。お願いします!」


――雛子と別れる……。

 それは朝哉にとって何よりも辛いことだ。

――俺はヒナと別れたら生きていけない。

 だからこれからは心を無くして魂を会社のために捧げよう。
 心に鍵をかけて、雛子と会えるその時まで封印しよう。

――俺が再び生き返るのは……ヒナと会えたその時だ。



 そして忘れもしない、8月最初の日曜日。
 朝哉は雛子をホテルに連れ出し……最低な行為に及んだのだ。

 あの日、久しぶりのデートを雛子が楽しみにしているのは十分すぎるほど分かっていた。
 渡米の準備のかたわら白石メディカ救済のために走り回り、彼女とゆっくり会えなくなっていたから。

 そんな彼女を裏切ることになる。それも最低な形で。

 絶対に傷つけると分かっていた。
 けれどそれでも、雛子の全てが欲しかった。

 離れている間に雛子が他の男のものになってしまうかもしれない。
 そうなったとしても絶対に奪い返す気ではいたけれど……彼女のはじめてを誰かに捧げるのかと考えたら、いてもたってもいられなかった。

 そんなの嫌だ。雛子のはじめてを他のやつになんてやるものか!
 彼女の身も心も自分でいっぱいにしたい。愛し合った印を刻みつけたい。
 たとえ恨まれるとしても、忘れ去られるよりは、よっぽどマシだ。


――俺は今日、雛子を抱く。そして……婚約破棄を告げる。

 そう決めて、朝哉は悲壮な覚悟で雛子と会ったのだった。



 あの日、寮から出てきた雛子は、満面の笑顔で車に乗り込んできた。
 濃紺のシフォンドレスは朝哉のリクエストに応えてくれたものだ。
 はじめて出会ったパーティーで着ていた思い出のドレス。

――この姿をしっかりと瞳に焼きつけておこう。離れてもすぐに思い出せるように。

 そう考えただけで既に鼻の奥がツンとして、泣き出しそうになる。
 グッと奥歯を噛みしめてこらえた。
 あまりにも無口だったから、雛子には不自然に映っていたかもしれない。

 けれどそれも、ホテル部屋の鍵を見せたことで緊張からだと受け取ったらしい。
 彼女は迷うことなくうなずいて、一緒に部屋まで来てくれた。

 躊躇しなかったと言えば嘘になる。
 先にシャワーを浴びながら、もう一度自分に問いかけた。

――本当に後悔しないか? ヒナを深く傷つけ、そして恨まれることになるんだぞ!

 けれど、何度考えても答えはイエスだ。
 どんなに恨まれようとも、ずっと憎まれることになろうとも、雛子を抱きたいと思う。

――後悔なんてするものか。

 自分を嫌悪し軽蔑することにはなるだろうが……そんなのは愛する女を抱きたいという欲望のストッパーにはならなかった。

 入れ替わりでシャワーを浴びてきた雛子を待ち伏せて、濡れた身体のままベッドに運ぶ。
 雛子は恥ずかしがり、足をバタバタさせて抵抗した。

「もう嫌だ、最悪~!」
「ハハハッ、どうせ全部丸見えなんだから顔だけ隠したって仕方ないだろ」

「馬鹿っ! デリカシーがない! もうお嫁にいけない!」
「ハハッ、ヒナの『馬鹿っ』が出た、可愛いな。それに嫁なら俺が……」

 そこから先の言葉は口にできなかった。

――ごめんよ。今はまだこの約束は出来ない。俺にはまだ、その資格がないんだ……。

「朝哉?」

 黙り込む朝哉を腕の中の雛子が心配そうに見上げている。

「だいじょう……ぶ?」

 それには答えずに、雛子をゆっくりとベッドに下ろした。
 白いシーツに広がった絹糸のような黒髪。湯を浴びた直後の色づいた肌。全てが完璧に美しい。

 出来ることなら初めてをこんな形で迎えたくはなかった。
 雛子の大切な大切な最初を、悲しい思い出にしてしまうなんて。

――俺は……最低だ!
 
 それでも目の前に横たわる張りのある身体を目にすれば、下半身がいやがおうでも反応を示す。
 ベッドに飛び乗り雛子の手首をおさえつけると、唇を重ねながら右手で胸の膨らみを揉みしだいた。

「んっ……あっ、朝哉……」

 鼓膜に響く甘ったるい声。
 勃ちあがった屹立がズクンと痛み、早く挿入はいりたいと脳に呼びかける。

――まだ、まだだ……ヒナをもっと蕩かしてから……。

 いつか迎えるこの日のために、インターネットで予習はしてきた。
 女性の初めては痛いらしい。今日、全てを終えてから雛子を襲う悲しみは避けられないけれど……せめてこの時間だけは、気持ちよくしてあげたい。

 そんなふうに思っていながらも、どんどん脳みそが沸騰して興奮状態になっていく。
 さんざん舌を絡めたあとは唇を耳に滑らせ耳朶を甘噛みする。
 耳の中に舌をねじ込むと、雛子が「あ……っ…」と鼻にかかった声を出した。

 欲情と罪悪感、ごちゃ混ぜの感情が波のように押し寄せ胸を締めつける。

「ヒナ……ヒナっ!」

 昂った気持ちをどうにも出来ず、雛子の丸い肩に噛み付いた。
 白い柔肌に自分の歯が食い込んでいく感触。

「痛っ……!」

 雛子が短く声をあげた。
 くっきりとついた肩の歯型からは血が滲んでいる。

 雛子の驚きに見開く瞳と視線がぶつかり、潤んだ瞳に劣情を煽られた。

――この子は……彼女は、俺のものだ!

 滲んだ赤い血をペロリと舐めて、そのまま胸まで舌を這わせる。
 先端に強く吸い付けば、彼女は白い喉を晒して身悶えた。

「やっ!……ああっ!」
「嫌じゃないだろ……ほら、ここも…」

 太腿の間に指を差し込むと、雛子のソコはもう濡れていた。
 割れ目を撫で上げるとクチュ……と水っぽい音がする。
 
 こんなふうに雛子に直接触れたのは4ヶ月近くも前の、あの一度きりだ。
 その時には、まさかこんな気持ちで雛子と結ばれるなんて思ってもみなかったけれど……。

 そして、こんな状況でさえも興奮している自分は本当に最低野郎だと思う。

――けれどもう、止められない!

 バスローブを脱ぎ去り膝立ちになると、朝哉は血管を浮き上がらせた自分のモノを片手で握りしめた。

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