婚約破棄してきた強引御曹司になぜか溺愛されてます

田沢みん

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裏 あしながおじさまは元婚約者でした

嵐のあと (2)side朝哉

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 竹千代がテレビをつけると、ちょうど朝のワイドショーが今回のニュースについて報道しているところだった。
 ご丁寧にもフリップで人物相関図まで出して解説している。

『白石兄妹と白石雛子さんは従兄妹であり……』
『雛子さんは家を追い出され、寮生活を送っていたそうです』
『まるでシンデレラか小公女じゃないですか!』


「……タケ、悪いけど消してもらえるか」
「はい、そうですね」

 朝哉の言葉で竹千代がリモコンをかざし、テレビを消す。

 他人は無責任だ。
 事件そのものに関係のない部分……朝哉や雛子のこれまでの人生やキャラクター、交友関係にまで言及して、面白おかしく騒ぎたてる。

 自分たちの中で好き勝手なドラマを作り上げて、朝哉と雛子、そして大地や麗良をドラマチックな物語の配役に当てはめて……本人のいないところで勝手に感情移入し、同情したり怒ったりしている。


――こんなものはヒナに見せなくていい。

 幸いなことに、世間の皆は朝哉と雛子に同情的だ。
 パーティーへの襲撃を許し、経済界や政界の重鎮を危険な目に遭わせた責任を問われるかと思っていたが、今のところそういう声は聞こえてこない。

 転倒して逃げ遅れたところを雛子に庇われた女性は人気のある保守派の政治家で、いずれ都知事選に出馬するだろうと言われている人物だった。

わたくしは彼女の勇敢さに感動を覚えました!』

 各局のワイドショー番組に顔を出し、まるで自分の武勇伝かのように嬉々として語っている。
 そのおかげもあってか、雛子が勇敢な女神扱いとなっているのだ。

――まあ、それもいつ手のひら返しされるかわからないけどな。

 世間の風潮なんていい加減なものだ。
 散々持ち上げられてから叩き落とされると覚悟しておいたほうがいいだろう。
 

 朝哉が顔を曇らせると、雛子の両手が包帯の巻かれている右手を柔らかく包みこむ。

「朝哉、ありがとう。私は大丈夫よ」

 フワッと微笑んで顔をのぞきこんできた。

「私は誰にも恥じるようなことをしていないし、他人に何を言われようが怖くなんてないわ」
「ヒナ……」

「だって、本当の私のことは、ヨーコさんや竹千代さん、そして朝哉が知ってくれているんでしょ? それだけで十分だもの」

 朝哉も目を三日月のように細め、上から左手を重ねる。

「うん……ヒナが可愛くて優しくて、真っ直ぐな女性だっていうのを俺は知ってるよ」

「それだけじゃないですヨ。誰でもすぐに許してしまうお人好しデス。泣いたらイチコロなのです」

 ヨーコが追加すると、竹千代もすかさずフォローを入れる。

「良くも悪くも性善説の人ですよね。ピュアなんですよ。なんてったってあの場面ですら、自分を襲った人間の手を握って渾々と説教しちゃうんですから。しかもそれで大地を手懐けて大人しくさせちゃったし」

「おいおい、俺のヒナは猛獣使いかよ」

 そう言いながら朝哉は、雛子の優しすぎるところは考えものだな……と、わずかに顔をしかめる。

 あんな怖い思いをさせられて、『暴力を振るっちゃダメよ』も何もあったもんじゃないだろう。
 しかも手まで握って……ギュッて両手で、ギュッって……!

 ようは自分以外の男の手を握って優しい眼差しを向けたというのが気に入らないのだけれど……それを言うと器が小さいとドン引きされそうなので、グッとこらえる。


「まあ、とにかく……さ、俺のヒナは最高ってことだ」

「ふふっ、ありがとう。今の私は素敵なあしながおじさまが育ててくれたのよ。立派なレディーになれないはずないわ」

 ねっ、そうでしょ?……といたずらっぽく瞳をのぞきこまれて、朝哉の理性が崩壊した。

「ヒナ~、大好きだ~!」
「きゃっ!」

 ガバッと抱きついて、「痛てててっ!」と顔をしかめて……だけどしっかりキスすることだけは忘れない。

 優秀な秘書と運転手が目配せすると、そっとドアを閉めて出て行った。

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