黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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グラリオンの夜、ふたたび 一

「な? そうなのだろう、ドミンゴ?」 
 尋ねられたドミンゴは一瞬、身体をすくめてから答えた。
「さようでございます、公爵。アベル様は、筆頭寵姫のアイーシャの手管によって、悦びの声をあげておられました」
「う、嘘だ! そ、そんなこと、あるわけがない!」
 衣をたくしあげられてあらわになったアベルの白い右胸に小さく咲いた薔薇の蕾のような乳首を、背後からまわした手でドミンゴが摘むようにした。
「はうっ……」
 びくん、とアベルの身体がドミンゴの膝の上で跳ねる。
「お許しください、アベル様……。私はあのとき、隠し部屋からアベル様のご様子をすべて見ておりました」
 声は悲しげであるが、言葉は淀みなくつづく。
「本当に、すべて見ていたのです。王は連日、私にアベル様の姿をあますところなく、すべて見るように命じました。見て、絵に描くのだと。心苦しかったのですが、しかたなく私は起こることをすべて見ていたのです」
 それが嘘か真かオルティスには判らないが、ドミンゴの言葉はつづく。
「ですから、アベル様がお気の毒に、菫と呼ばれる宦官少年たちによって……後ろ園に三色の連珠を入れられことも……、アイーシャによって卵を入れられたことも、それを産み落とすために奮闘されたことも、すべて知っているのです。この目で見て、この耳でアベル様の声も聞いていました。お可哀想に……、誇りたかいアベル様があんなに泣かれて。さぞおつらかったでしょう」
「うう……!」 
 アベルの顔が羞恥と屈辱にゆがむ様は、夕暮れの雨に打たれた白薔薇のように可憐でいじらしい。
 オルティスは、口では申しわけなさそうに言いながらアベルをいっそう貶めるドミンゴに腹は立つものの、今のアベルが、妙なる芳香をはなつたぐいまれな名花のように人の心を惹つける魅力を増していくことは否定できなかった。
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