42 / 184
淫夢のなかで 一
「ち、ちがう、……よ、よせ、やめろ!」
アベルが焦って抗えば抗うほどに、ドミンゴの激情ははげしくなっていく。
「なにを違うとおっしゃるのです、アベル様! あなたはあの後宮で、私にさんざん見せつけてくれたではないですか!」
「な、なにを言っている?」
「事実だ。あなたは、あなたは……、女がまとう薄布を腰に巻いて、私を誘惑した!」
ドミンゴの目や顔付きはもはや常人のものではない。オルティスは鼻白んだ。
たしかにこの男は悪魔に憑りつかれている。それも彼に言わせれば、悪魔の名はアベルだというのかもしれない。
「あなたは、あんな子どものような宦官たちによって、後ろに連珠を入れられ、腰を振って悦んでいた」
「う、嘘だ!」
アベルは頬を紅に染めて首を横に振った。
「あなたは、この細い、白い肉体で卵を飲み込み、それを生んで……宦官たちの目を楽しませ……」
「よ、よせ、それ以上言えば、許さぬぞ!」
狂気の世界に足を踏み入れているドミンゴにとっては、もはやアベルの怒りは意味がなかった。
「アイーシャという妖婦やその侍女のまえで、言われるがままに、おのれを慰めてみせた!」
「やめろぉ!」
真っ赤になったかと思えば真っ青になってアベルは叫んだ。
激しく拒絶を見せるアベルの顔を見ているうちに、オルティスの頭のなかで、猥画の世界が光彩陸離と展開する。
絶世の美青年が、肌の色の違う男たちや女たちに嬲られ、いたぶられ、想像を絶するような辱しめを受け、その果てに快を得て、また泣くという、男たちの夢見る好色本の世界が脳裏でくりひろげられる。絵の美青年はアベルであり、逆にこの生きたアベルが絵のように現実ばなれしていく。
夜の楽しみにこっそり淫らな夢を想い描くことなど、誰しもあるだろう。それは夢であり、絵空事であり、実際に誰かを傷つけるわけでもない、他愛なく罪のない愚かな幻想のはずである。
だが今、異郷の地に捨ててきたはずの七色の夢が、現実に目の前で形をなしているのだ。
オルティスはひたすら圧倒されていた。
アベルが焦って抗えば抗うほどに、ドミンゴの激情ははげしくなっていく。
「なにを違うとおっしゃるのです、アベル様! あなたはあの後宮で、私にさんざん見せつけてくれたではないですか!」
「な、なにを言っている?」
「事実だ。あなたは、あなたは……、女がまとう薄布を腰に巻いて、私を誘惑した!」
ドミンゴの目や顔付きはもはや常人のものではない。オルティスは鼻白んだ。
たしかにこの男は悪魔に憑りつかれている。それも彼に言わせれば、悪魔の名はアベルだというのかもしれない。
「あなたは、あんな子どものような宦官たちによって、後ろに連珠を入れられ、腰を振って悦んでいた」
「う、嘘だ!」
アベルは頬を紅に染めて首を横に振った。
「あなたは、この細い、白い肉体で卵を飲み込み、それを生んで……宦官たちの目を楽しませ……」
「よ、よせ、それ以上言えば、許さぬぞ!」
狂気の世界に足を踏み入れているドミンゴにとっては、もはやアベルの怒りは意味がなかった。
「アイーシャという妖婦やその侍女のまえで、言われるがままに、おのれを慰めてみせた!」
「やめろぉ!」
真っ赤になったかと思えば真っ青になってアベルは叫んだ。
激しく拒絶を見せるアベルの顔を見ているうちに、オルティスの頭のなかで、猥画の世界が光彩陸離と展開する。
絶世の美青年が、肌の色の違う男たちや女たちに嬲られ、いたぶられ、想像を絶するような辱しめを受け、その果てに快を得て、また泣くという、男たちの夢見る好色本の世界が脳裏でくりひろげられる。絵の美青年はアベルであり、逆にこの生きたアベルが絵のように現実ばなれしていく。
夜の楽しみにこっそり淫らな夢を想い描くことなど、誰しもあるだろう。それは夢であり、絵空事であり、実際に誰かを傷つけるわけでもない、他愛なく罪のない愚かな幻想のはずである。
だが今、異郷の地に捨ててきたはずの七色の夢が、現実に目の前で形をなしているのだ。
オルティスはひたすら圧倒されていた。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。