黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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異形の娼婦 三

「うう! うっ……」
「くくくくく。そんな嫌そうな顔をするなよ、伯爵。まるで俺がいじめているみたいじゃないか?」
 ふざけた言葉に、アベルは絶望的な状況であっても、怒りの火花を瞳からはじけさせた。
「ああ、本当に可愛いな……、初心うぶでいたいけで。ふしぎだね、『日誌』によると、グラリオンの後宮でずいぶん可愛がられたとあるのに――、ああ『日誌』というのは、『A伯爵調教日誌』のことだよ、もちろん。読んでいるやつは、『日誌』と呼びならしているので」
「おまえも読んだのか?」
 公爵の笑いをふくんだ声に、バルバラは首を縦に振った。
「当たり前だろう。あんな、面白い書物を読んだのは初めてだよ。俺のまわりでも読んでいる奴は多い。いや、読んでいない奴はいない、と言っても過言じゃないね。勿論、皆、A伯爵が誰のことか知っているさ」
 アベルの肩が小刻みにふるえた。
「良かったじゃないか、伯爵。あんたは、故郷に帰ったらその日から有名人だよ。まぁ、アルベニス伯爵の名を知らない人はいないだろうけど」
 バルバラの顔に残忍な笑みが浮かぶ。
 天真爛漫に見えて、この女はとんでもない毒を身に隠しているようだ。
「その誰もが知っている有名な伯爵が、ああいう目に遭ったというのが、おもしろいのではないか?」
 アベルの顎がかすかにふるえた。
「まぁ、そうかもね。大司教なんて、俺を呼ぶたびに、文章を朗読するようせがむのだぜ」
「おまえ、声に出して読んだのか、あの文章を?」
 公爵はまたにやにや笑った。
「ああ、読んださ。最初から今出回っているところまでね。面白かったよ。読んでいて気分がのったね」
「ほう? どのあたりが良かった?」
 おもしろくてたまらない、というふうにバルバラは身体をねじった。
「くくくくく。多すぎて覚えていないぐらいだ。だが、特に好きなのは、なんといっても伯爵様が、尻に卵を入れられ、無理やり産み落とさせられるところかな? 『ああ、哀れな美しきA伯爵――。あろうことか異教徒の前に白い尻を見せ、卵を産み落とすことを強要された。白い肌は季節の先に咲く白薔薇の花弁そのもの。汚れを知らぬ聖なる奥つを蹂躙され、」
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