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異形の娼婦 八
バルバラだけが、公爵な奇矯な言動には慣れているのか、ただ笑っている。
公爵は、また奇妙なことに、ほろ苦い笑いを浮かべていた。バルトラ公爵がこんな笑い方をすることが、彼の人生にどれだけあるのだろうか。オルティスは奇跡のような、その苦みを込めた、やるせなさと諦めをにじませた帝国有数の権力者の笑いを、また見てしまったのだ。
だが、それはすぐに消えた。
「さぁ、続きをしようか、バルバラ?」
「待ちくたびれていたよ。ああ、背を伸ばして立ってみろ」
後半の命令はアベルに向けられたものだった。
いかにも気位の高そうな、高慢とも見えるアベルの美しい横顔が怒りに張りつめた。
だが、もともとアベルの背筋は伸びている。
いかなるときでもアベル=アルベニス伯爵は背をかがめるようなことはない。処刑台にのぼることがあったとしても、おそらくアベルの魂がこの地上から消え失せる最後の瞬間まで彼は背を伸ばしているだろう。
バルバラは嬉しそうにアベルを見つめた。
「ふふふふ。どうやって遊ぼうか? 伯爵の好みも訊いてみるとするか。ねぇ、」
「くっ……」
バルバラの細い人差し指が、アベルの茎の先端をつつく。
女の手にもてあそばれる羞恥と恥辱に、アベルの真珠色の頬が赤く燃える。
「後ろの蕾に薔薇の花を挿してやろうか? 以前ある侯爵夫人にしてやったら、ひどくお喜びだったよ。こっちの先に挿すのは、さすがに可哀想だしね」
「それを喜ぶ男もいるらしいではないか?」
「まぁ、好きな奴はね。けれど、嫌がる奴にするには時間がかるしね。伯爵は初心そうだから、やっぱり基本から始めるとするかい?」
「おまえ、今更何を言っている? あの書物を読んだのだろう? この伯爵様はな、連珠や卵、ちょっとしたお道具は充分堪能されたのだぞ。木馬でもけっこう楽しまれたそうだからな」
「やっぱり、あの絵は、本当のことなのかい? さすがにそこは空想ではないかという奴もいたが、やっぱり本当だったようだね」
公爵は、また奇妙なことに、ほろ苦い笑いを浮かべていた。バルトラ公爵がこんな笑い方をすることが、彼の人生にどれだけあるのだろうか。オルティスは奇跡のような、その苦みを込めた、やるせなさと諦めをにじませた帝国有数の権力者の笑いを、また見てしまったのだ。
だが、それはすぐに消えた。
「さぁ、続きをしようか、バルバラ?」
「待ちくたびれていたよ。ああ、背を伸ばして立ってみろ」
後半の命令はアベルに向けられたものだった。
いかにも気位の高そうな、高慢とも見えるアベルの美しい横顔が怒りに張りつめた。
だが、もともとアベルの背筋は伸びている。
いかなるときでもアベル=アルベニス伯爵は背をかがめるようなことはない。処刑台にのぼることがあったとしても、おそらくアベルの魂がこの地上から消え失せる最後の瞬間まで彼は背を伸ばしているだろう。
バルバラは嬉しそうにアベルを見つめた。
「ふふふふ。どうやって遊ぼうか? 伯爵の好みも訊いてみるとするか。ねぇ、」
「くっ……」
バルバラの細い人差し指が、アベルの茎の先端をつつく。
女の手にもてあそばれる羞恥と恥辱に、アベルの真珠色の頬が赤く燃える。
「後ろの蕾に薔薇の花を挿してやろうか? 以前ある侯爵夫人にしてやったら、ひどくお喜びだったよ。こっちの先に挿すのは、さすがに可哀想だしね」
「それを喜ぶ男もいるらしいではないか?」
「まぁ、好きな奴はね。けれど、嫌がる奴にするには時間がかるしね。伯爵は初心そうだから、やっぱり基本から始めるとするかい?」
「おまえ、今更何を言っている? あの書物を読んだのだろう? この伯爵様はな、連珠や卵、ちょっとしたお道具は充分堪能されたのだぞ。木馬でもけっこう楽しまれたそうだからな」
「やっぱり、あの絵は、本当のことなのかい? さすがにそこは空想ではないかという奴もいたが、やっぱり本当だったようだね」
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