黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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魔窟の夜 四

「どうだ、アベル? バルバラの技はなかなかたいしたものだろう? これで昇天させられなかった男はいないというぞ。潔癖な聖職者だろうが、六十の爺だろうが、バルバラの舌で勃たない男はいまだかつていないそうだ」
 この時代の六十はかなりの高齢である。明日死ぬかもしれない年寄りでさえ、この女の舌にかかっては男に戻るらしい。
 公爵はおもしろそうに、両腕を組んでアベルが快楽にくずれていく様を見ている。
「ああっ、ああっ……! いや……いや! よ、よせ!」 
 首を必死に横に振り、閉じた瞼から涙をながしながら、アベルが拒絶に泣く。その様子はいじらしくも、なまめかしい。 
 巧みで執拗なバルバラの責めに、やがてアベルは苦悶の表情のなかにも、かすかに愉悦を見せはじめた。
「んん……!」
 淫らな水音がひびく。
 バルバラはいったん口をはなした。
「気分はどうだ、伯爵? あんたたちの望む天国へ行けそうだろう?」
「おまえは、残念ながら、そこへは永遠に行けないな」
 まあね……。公爵の言葉にバルバラは皮肉げに笑う。
「でも、俺は満足だよ。こうやって、帝国の男たちを天国を送りこんでやっていられるんだからな」
 二人の会話に、奇妙なものを感じたオルティスは、やや訝しむような顔になっていたようだ。
「こいつはな、〝改宗者〟なのさ」
 笑ってそう言う公爵に、オルティスはぎょっとした。
 では、この女は異教徒だったのか。
 ぐったりとしていたアベルでさえ、かすかに身じろいだ。
 帝国に住む者がすべて同じ神を信じているというわけではない。なかにはひそかに異教の神を信仰する者もいる。それは帝国では邪教であり、その神を信じる者はすなわち罪人とされた。
 隠れている異教徒たちは告発され、罪に問われることになる。異端審問を受けた者は、財も地位もうばわれ獄舎につながれ、過酷な拷問を受けて自白を強要される定めだ。自白したあとは、改宗を誓った者だけが許され、抵抗した者には死が待つ。
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