黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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魔窟の夜 五

 どれほど熱心な異教徒であっても、拷問を受けて秘めた信仰をかくしとおすことは難しく、不運な異教徒たちは死ぬか改宗するかのどちらかを選ぶことになる。
 なかには、異教徒ではないが、周囲の疑惑や讒言によって、獄におくられた者もいるといわれている。
 数年前には、大司教のひとりが異教徒の疑いをかけられ、投獄された。身分を考慮して拷問こそかけられなかったが、執拗な尋問の果てに心身を病んで牢死した。最後まで嫌疑を否定して。死後、彼は異教徒ではなかったかもしれないという噂も流れたが、後の祭りである。
「くくくくく。純粋で無垢な伯爵さまに、いいことを教えてやるよ。俺がこれを学んだのは牢のなかさ。教えてくれたのは、お偉い司教様さ」
 言いながらバルバラはアベルの象徴をしごいた。
「はぅっ……!」
 辛そうに身をよじりつつも、あまりにも異様なバルバラの告白にアベルは目を見張っていた。
「信じられない、という顔をしているね。けれど、真実だぜ。裕福な商人だった父が異教徒だと告発されて牢屋に入れられたあと、残された俺は、母親と二人の姉とともども罪人たちを閉じ込める塔に監禁されたのさ」
 俺はそのとき六歳だった……。バルバラはつづけた。
「塔のなかは薄暗くて、じめじめして、とうてい居心地良いとは言えなかったね。外部の人間とは連絡もとれず、食事も満足にあたえられない。それだけならまだしも、しょっちゅう司教や異端審問官の連中がやってきて、自白しろ、神の名のもとに真実を言えとか、俺たちを連日責めたてたのさ」
 勿論、母親は否定したという。
「俺の先祖はたしかに放浪の民だったし、祖父母の代までは異教徒だったが、帝国に来てからはすでに古い信仰は捨てていたと両親は訴えた。けれど、司教たちは聞く耳もたない。……そして、最初は母が連中の餌食になった」
 オルティスはぎょっとした。アベルも信じられない、という顔になった。公爵だけは動じていない。
 おぞましい話を告げる当のバルバラの顔は、おだやかで、微笑んでさえいた。
「俺たちのまえで母は司教もふくめて三人の男たちに弄ばれたのさ。ハハハ……」 
 さすがに笑い声には苦いものが混じっている。
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