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淫虐遊戯 九
女は抱かれると、どうしても男に弱くなる――そうでない女も多いが――という定説は、この二人の男女逆の関係にも共通するのかもしれない。
オルティスはアベルの身体から、かすかに、ほんのかすかにだが、におってくる柔和さ柔眉さに気づき、内心目を見張っていた。
つい先ほどまでは、どうあってもアベルからは感じられないものであった。
ふと気づくと、先ほどまでたのしそうに見ていた公爵の顔から、笑みが消えている。
おそらく公爵も、アベルの微妙な変化に気づいたのだろう。
彼の顔が、おもしろくない、と云っていることが、またオルティスには驚きだ。
公爵のアベルにたいする複雑な感情は、しょせんオルティスに理解できるものではなかった。
「さぁ、伯爵様、つぎはこっちで遊んでみようか?」
「い、いやだ――! は、はなせ!」
うろたえて慄くアベルを見るバルバラの目は、まさに鼠にいどみかかる猫の目だ。
「そうはいかないさ。これから伯爵は、公爵の秘密の館の目玉になるのだからね。来る客はみんな伯爵を楽しみたくてうずうずしているんだ。すでに、裏の世界では噂になっているんだぜ。公爵が別邸に特殊な客を招くことになると。そこでとびきり素晴らしいものを見れるとね。今から招待状を得るために、好き者の貴族たちが奮闘しているらしいじゃないか。なぁ、公爵、そうだろう?」
「まあな」
憮然と公爵がこたえる。その顔に笑みはない。
「くくくくく。見ろよ、公爵は、俺とあんたがあまりにも仲良いものだから、ご機嫌が悪いらしい。後ろ園へは、まず公爵をお招きするかい? ハハハハハ」
「いや。バルバラ、おまえにまかせるさ。アベルはおまえの手管がお気に召したようだからな」
ちくり、と皮肉の棘をふくませた言葉を吐き苦笑して見せても、公爵の目はやはり笑っていない。バルバラがアベルに触れているのも、本当は嫌なのではないかとさえ疑いたくなる。
だが、それを察して身を退くようなバルバラではない。公爵の不興を買っても、したいようにするつもりらしい。
オルティスはアベルの身体から、かすかに、ほんのかすかにだが、におってくる柔和さ柔眉さに気づき、内心目を見張っていた。
つい先ほどまでは、どうあってもアベルからは感じられないものであった。
ふと気づくと、先ほどまでたのしそうに見ていた公爵の顔から、笑みが消えている。
おそらく公爵も、アベルの微妙な変化に気づいたのだろう。
彼の顔が、おもしろくない、と云っていることが、またオルティスには驚きだ。
公爵のアベルにたいする複雑な感情は、しょせんオルティスに理解できるものではなかった。
「さぁ、伯爵様、つぎはこっちで遊んでみようか?」
「い、いやだ――! は、はなせ!」
うろたえて慄くアベルを見るバルバラの目は、まさに鼠にいどみかかる猫の目だ。
「そうはいかないさ。これから伯爵は、公爵の秘密の館の目玉になるのだからね。来る客はみんな伯爵を楽しみたくてうずうずしているんだ。すでに、裏の世界では噂になっているんだぜ。公爵が別邸に特殊な客を招くことになると。そこでとびきり素晴らしいものを見れるとね。今から招待状を得るために、好き者の貴族たちが奮闘しているらしいじゃないか。なぁ、公爵、そうだろう?」
「まあな」
憮然と公爵がこたえる。その顔に笑みはない。
「くくくくく。見ろよ、公爵は、俺とあんたがあまりにも仲良いものだから、ご機嫌が悪いらしい。後ろ園へは、まず公爵をお招きするかい? ハハハハハ」
「いや。バルバラ、おまえにまかせるさ。アベルはおまえの手管がお気に召したようだからな」
ちくり、と皮肉の棘をふくませた言葉を吐き苦笑して見せても、公爵の目はやはり笑っていない。バルバラがアベルに触れているのも、本当は嫌なのではないかとさえ疑いたくなる。
だが、それを察して身を退くようなバルバラではない。公爵の不興を買っても、したいようにするつもりらしい。
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