124 / 184
月夜に見る夢 三
にやにやといやらしく笑いながら言う公爵の尻馬に乗るように、エンリケは口をはさんだ。
「グラリオンの王や宦官たちが忘れられないのかもしれませんよ。絵の伯爵は、本当に楽しそうだった。悔しいかな、東方の男たちは帝国の男たちより、楽しませ方のコツを知っているようですな」
このとき、初めて公爵の顔から余裕の笑みが消え、エンリケは内心満足した。
自分の言葉によって、この不敵な権力者の感情を一瞬でも揺るがすことができたのだ。
「ほう。そう言われては立つ瀬がない。どうかな、アビラ伯、このじゃじゃ馬を、今宵はあなたが躾けてやれば?」
怒気が含まれた声で、公爵が挑発するように言う。エンリケは引き下がらなかった。
「それは望むところですな」
エンリケは実をいうと勝負事が好きでない。
おそらく、御前試合でアベルに負けた衝撃から、敗北することに異常に恐怖心を持つようになったからかもしれない。口に出しては絶対に人に言えないが。
普段のエンリケなら、喧嘩を売られれば言葉巧みにかわして逃げるし、無傷で逃げることこそ勝利だと思っているが、今はこの勝ち負けのかかった賭け事に、どうしても退く気がしない。
「では、遠慮なく。伯爵、こんどの相手は私が勤めましょう」
まるで舞踏の交代を告げるように、エンリケは気取った言い方をした。
「よ、よせ、来るな! 来るなと言っているのだ!」
激しく手で肩をたたかれても、エンリケは怯まなかった。
先ほどの行為の疲れか、アベルの抵抗も弱々しく、正面に来たエンリケを撃退する術もなく、アベルはひたすら叫びつづけた。
「いやだ! いやっ」
「しっ、お静かに。誰かがきてこの様子を見たらどうするのですか?」
ほぼ裸にちかいアベルは分が悪い。
「エンリケ、よせ!」
「おお、私の名を呼んでくだった」
伯爵であるアベルに対しては、エンリケは礼儀を守らなければならない。言葉遣いは丁寧だが、手の動きは弱めなかった。
「グラリオンの王や宦官たちが忘れられないのかもしれませんよ。絵の伯爵は、本当に楽しそうだった。悔しいかな、東方の男たちは帝国の男たちより、楽しませ方のコツを知っているようですな」
このとき、初めて公爵の顔から余裕の笑みが消え、エンリケは内心満足した。
自分の言葉によって、この不敵な権力者の感情を一瞬でも揺るがすことができたのだ。
「ほう。そう言われては立つ瀬がない。どうかな、アビラ伯、このじゃじゃ馬を、今宵はあなたが躾けてやれば?」
怒気が含まれた声で、公爵が挑発するように言う。エンリケは引き下がらなかった。
「それは望むところですな」
エンリケは実をいうと勝負事が好きでない。
おそらく、御前試合でアベルに負けた衝撃から、敗北することに異常に恐怖心を持つようになったからかもしれない。口に出しては絶対に人に言えないが。
普段のエンリケなら、喧嘩を売られれば言葉巧みにかわして逃げるし、無傷で逃げることこそ勝利だと思っているが、今はこの勝ち負けのかかった賭け事に、どうしても退く気がしない。
「では、遠慮なく。伯爵、こんどの相手は私が勤めましょう」
まるで舞踏の交代を告げるように、エンリケは気取った言い方をした。
「よ、よせ、来るな! 来るなと言っているのだ!」
激しく手で肩をたたかれても、エンリケは怯まなかった。
先ほどの行為の疲れか、アベルの抵抗も弱々しく、正面に来たエンリケを撃退する術もなく、アベルはひたすら叫びつづけた。
「いやだ! いやっ」
「しっ、お静かに。誰かがきてこの様子を見たらどうするのですか?」
ほぼ裸にちかいアベルは分が悪い。
「エンリケ、よせ!」
「おお、私の名を呼んでくだった」
伯爵であるアベルに対しては、エンリケは礼儀を守らなければならない。言葉遣いは丁寧だが、手の動きは弱めなかった。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。