黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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帝国、夢の宴 七

 五人ほどいる楽士たちも、肌の色や顔つきから帝国の人間でないことが知れる。楽器も、帝国ではなじみのない異国風のもので、若い楽士のかきならす竪琴の音色は、あきらかにこの国の音楽とは違っていた。
 そこに、ほのかな東方の夢がたちのぼる。
 身支度をする女たちや宦官たちの表情には、今はさほどの悲壮感も苦痛も見られない。
 この館に集められたのは、グラリオンにおいてもほとんどが親に売られたり、戦で負けて奴隷として宮殿に売られたりした者たちであり、グラリオンにいたときから権力者や上役に使われる身であったのだ。
 いわば後宮という巨大で豪華な檻で飼われていた者たちであり、グラリオンが敗北し、この地まで無理やりに連れられてきたとはいうものの、また別の檻に入れられただけで、旅の疲れはあるものの、今や新たな運命を受け入れ始めているようだ。
 女たちのなかには、物腰からかなり身分ありげに思える女人もおり、さすがに顔色は青ざめているが、それでもこの時代の女の常として、あらたな主人の命に従うことで生きるしかないと諦めているようだ。
 とはいうものの、そうでない者たちも大勢いた。帝国政府およびバルトラ公爵は、グラリオンに若く美しい奴隷を請求し、おおくの女性たちが帝国へ物のようにあつかわれて連れてこられた。そんな女奴隷たちは有力貴族に分配されたり、市場で売られ、その売上げは国庫に入ることになる。
 献上された女たちのなかには身分ある貴婦人や良家の娘もおり、屈辱をいとうて自殺したものや、旅の辛さで身体をこわした者もいるとバルバラは聞いている。そんな〝欠陥品〟は、容赦なく旅の路上に打ち捨てられ、減った分だけの奴隷を、公爵はあらたにグラリオンに要求したらしい。
 バルバラが公爵とともに帝国まで来る間にも、病気で痩せほそった女奴隷がそのまま村道に捨てられるのを見た。若い女だったが、痩せこけた身体は老女のようだった。身に着けている衣は旅の垢と自身の吐瀉物でよごれきっており、近づくと異臭がしそうで、兵士たちも彼女を遠目に見るだけで興味もなさそうだった。
 あのあと彼女はどうなったのか。ほどなく息を引き取ったか、獣に喰われたか。運よく生き延びることができても、売春宿にでも売られるか、もう少し運が良ければ土地の百姓にでも拾われて妻か妾にされるか。さらに運が良ければ善良な旅人に助けられて、自由の身となって祖国へ戻れるか。
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