黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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帝国、夢の宴 八

 だが、あれだけ痩せていれば、もはや彼女の命の火は燃えつきているかもしれない。バルバラは、彼女をさして気の毒にとは思わなかった。
 生きる者は生き、死ぬ者は死ぬ。それしかないのだと思っている。いや、知っているのだ。自分がそうだったのだから。
(いっそ、死ねた者の方が幸せかもしれない)
 心からそう思っていた。
 そして一瞬、ほんの一瞬だけ、路上に捨てられた女のために祈った。彼女の魂が救済されることを願って。祈るための神というものを、とっくのむかしに捨てたバルバラだが、ときにふと思い出したように、気まぐれに祈ることもあるのだ。
「客たちには、今宵一夜、異国の後宮で遊んでもらおう」
 すこしぼんやりしていたバルバラは、公爵の言葉で仮初かりそめのグラリオンの世界に引き戻された。
「おもしろそうだな。客たちは大喜びだろう」
「ああ。グラリオンの舞姫たちの舞をおおいに堪能してもらおう」
 女が気に入れば、勿論抱くこともできる。そうやって快楽を提供することで、貴族たちとよしみをむすび、利用し、取引し、この先なにかあったときは、ここでの秘密をねたにして脅迫したりするのだろう。
「今夜は、とっておきの目玉も用意しているしな」
「やっぱり……、あれ?」
「ああ。客も半ばはそれを期待しているのだ」
 公爵は満足げに笑った。
「『A伯爵調教日誌』を再現するんだね?」
「無論だ」
 公爵はずるそうに笑う。狡猾そのものの性格の男だというのに、ふしぎなことに、ずるければずるいほど、魅力的に見えるのだから、不公平は話だ。
「で、当の主役は?」
「今、用意させている。ちょっとばかり手こずったがな」
 苦笑いする公爵は、扉の方へ目をやった。
 つられてそちらを見たバルバラは一瞬、目を見張った。
 扉口のところに、ちょうど世にも奇妙な生き物があらわれたのだ。
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