黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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魔女二人 一

「いい子だ。可愛いぞ」
 嬲る言葉が、またアベルを刺激する。
 幾度となく布の上から舐められ、ときについばむように突起を吸われ、舌で突かれ、アベルは身震いした。
「ううっ、ううう……」
 すっかり色を変えた布は、べったりと胸にはりつき、淫らなことこのうえない。
 ふいに、公爵の笑い声が大きく響きわたる。
「どうした、アベル、ここを、こんなふうにして」
「ああっ!」
 透けている衣では、下肢の変化はかくせず、アベルは浅ましく燃えだした身体を見られてしまったことに、悔しげに唸った。
「あああ……あっ!」
 碧の瞳が甘やかに潤んで、苦痛と恐怖と屈辱、そしてわずかながら甘美な悦びをあらわしていることにバルバラは気づいた。
 いくら潔癖で気位たかいアベルでも、血のかよった肉体をもつかぎり、快楽から逃れえることはできないのだ。快をきわめたいという人間の本能は、生きているかぎりどうにも抑えられないものなのだろう。
「こんなに感じて……俺の方が嬉しいぞ。おまえが辛いだけなら、いっそ宴に出すのは止めようかと思っていたのだが、これなら大丈夫だ。おまえも充分楽しめるだろう」
「うう……」
 アベルを徹底的に傷つけ貶める言葉を吐いて、公爵は満足そうに笑う。
 そして、さらにとどめの言葉を告げた。
「今宵の宴には、もう一人主役がいるのだ。おまえもよく知っている人だ」
 恥辱に震えていたアベルだが、その言葉には気を引かれたのか、目を開く。
 公爵は、背後に控えていた宦官の一人に、「つれてこい」というふうに目配せをおくった。
 宦官はしばし扉の外に消えると、すぐに戻ってきた。つれだって入ってきたのは、目の覚めるような美女で、バルバラは一瞬、息をのんだ。
 波打つような黒髪は漆黒で、わずかの怯えも見せず、正面から室にいる全員を睥睨するような態度をとる。これはかなり高慢な性格だと知れる。
 上半身は胸に真紅の布を巻いているだけで、グラリオン人にしては色白な腕や腹部を惜しみなく見せている。下半身には薄桃色の綾衣の衣をまとっている。どことなく粋な雰囲気があり、グラリオンの踊り子かとバルバラは思ったが、すぐに公爵が彼女の名を呼んだ。
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