黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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魔女二人 七

「は、はなせ! 私に触るな、毒婦!」
 アベルの侮辱をふくんだ抗議の言葉に、アイーシャはのけぞって笑った。
「ええ、そうよ。私は毒婦よ。貧民街に生まれ落ちて、奴隷として売られて後宮で磨かれた、生まれながらの娼婦にして毒婦、アイーシャよ」
 芝居に出てくる悪女さながらにアイーシャは麗しい悪女を演じているようだ。
「でも、その卑しい毒婦にこうして良い気持ちにさせらて悦んでいる伯爵様、あなたもかなりの好き者ね」
「ち、ちが……、よ、悦んでなぞいない!」
「あらぁ? ちがうというの? ここを、こんなふうに固くして……」
「あっ……!」
 さすがに異国の後宮で過ごしてきただけあって、男をよろこばせるコツを掴んでいるようだ。どこまで本当かわからないが、グラリオンの後宮には、性技を教え込む専門職の人間がいると聞いたことがある。
「はぁ……」
 背後から巧みに指を動かし、アイーシャはアベルの鉄壁の操を傷つけ、とろかし、やがてはアベルの魂そのものを懐柔しようとする。
「ああ……、あっ、ああっ、」
 アベルの、男にしては細く長い指が、強制的にあたえられた悦びにまどい、宙を搔くようにし、己をおさえこんでいる宦官の腕を無意識で引っかいた。
 宦官の飴色の肌に、うっすら赤い線が走るが、彼は眉ひとつうごかさず、無言でただ命じられたとおりにアベルの肩を押さえこんでいる。
 泥を煮詰めたような黒い双眼に、アベルの苦悶の横顔を映しながらも、宦官自身の顔は無感動だ。生きた道具として、ただ言われたことを淡々とこなしているに過ぎないようだ。
「はぁ……」
 いよいよ興が乗ってきたのか、アイーシャの指や腕の動きが早くなる。
「ここはどう? ほうら」
「うっ、ううう……!」
 男の秘めた蕾に指を押し込み、繊細な内部を刺激して、絶頂をきわめさせようというのだ。アイーシャの黒目は潤んで光っている。
「ああ、可愛いわ。さぁ、伯爵、一度楽になるといいわ。安心なさいよ、これで終わりなわけはないわ。このあと、たっぷり馬の上で泣いてもらうことになるのだから」
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