黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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魔女二人 九

「それは、もう。でも、滅多にご自身から動こうとはしなかったわね。私はただ呼ばれた夜にご奉仕するだけよ」
 言ってから、アイーシャの瞳は一瞬曇った。こんな女でも、こういう目をするときがあるのか、とバルバラは気を引かれた。
 同時に、自分のような女でも、今のアイーシャのような目をしているときがあるのかもしれない、と気づき、自嘲の笑みをこぼす。
「あと、陛下のお好みは、ご自身がするより、見ることかしらね」
「ほう」
 公爵が興味ぶかそうな目を向ける。
「それはまた……いかにも帝王らしい好みだな」
「気に入った者同士をつがわせて、それを酒の肴にして楽しまれるのよ。私も何度か命じられた相手と、陛下の好まれる遊びをしたわ」
 番わせる、という言葉がなんとも生々しい。
 淡々と語っているが、アイーシャの目は遠いグラリオンの紅閨を映しているようで、どこかうつろである。
 それにしても、これほどはすっ葉な女でも、かつての主を語るときは敬語になるのが奇妙で、またバルバラは気をひかれる。
「相手は、誰だ?」 
「陛下のお気に入りの妾や貴婦人、ときには宦官も。……でも、普通の男とさせられたことは一度もなかったわね」
 女同士はまだわかるが、宦官とどうするのか、さすがに性の道にかけては博識のバルバラも悩んだ。だが、それを問うのは、娼婦バルバラの名にかかわる、という妙な意地が邪魔をする。
「つくづくグラリオンというのは、不思議なところだな」
 本気でそう言っている公爵を、バルバラは笑ってやりたくなる。
 帝国だとて、充分不思議なところだ。
 帝国にも女の恰好をこのむ男や、男をこのむ男、女をこのむ女、幼女と性交したがる聖職者、乱交をこのむ貴族たち、奴隷に鞭打たれることをこのむ裕福な商人など、ふしぎな人種はごまんといるではないか。
 自分を棚にあげ、常識人ぶる公爵が、ふとバルバラは小憎らしくなる。
「まぁ、グラリオンのことは、今は良いとして、さぁ、そろそろアベルのお披露目をするか。今宵は、最初の夜だからな」
 宦官の一人が、ぐったりと床に倒れ伏しているアベルを引きずりあげる。
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