黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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仇花開花 七

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「これはグラリオンのものではないけれど、帝国の闇の市場で売られている……高価なお薬よ。あら、嘘ではないわ。本当にお薬よ。殿方特有の夜の悩みを消してくれるのよ」
 強壮剤か? 客の誰かの問うような声に、アグスティナはにんまり笑って答えた。
「ええ。強壮剤にして媚薬、誘淫剤とでもいおうかしらね。この気持ちよくなる薬を、伯爵、あなたのために使ってあげるわ。感謝してちょうだい。とても高いのよ」
「よ、よせ!」
 アベルは嫌悪に真っ青になりながら、怒鳴った。
「やめろ! 馬鹿な真似はよせ!」
 悲鳴のような抗議の声もむなしく、宦官たちによって上半身をおさえこまれてしまう。
「先ほどみたいに、お尻を突き出すようにするのよ」
「うっ」
 言われるままにする宦官たちの手によって、アベルはまたも四つん這いに近い格好で、尻を突き出すという惨めな姿勢を強いられてしまった。
「ロロ、もう少し待っていなさい。おまえの姫君は今準備で忙しいのよ」
 木馬の上で待っているロロは頷く。宦官が腰に卑猥な道具をつけて、ぼんやりと座っている光景は、どうにも異様で滑稽だが、今は皆そんなことは気にもならない。
「よせ! ああっ、はなせ、はなせ!」
 客たちの視線がアベルの剝きだしにされた下肢に集中する。
「もう少し開かせて」
 アグスティナの命を受けて、左右の宦官が同時におなじぐらいの力でアベルの太腿を引いた。
「うう……」
「今さらまた恥ずかしがってどうするの? もう伯爵は幾度となく身体を見られているのでしょうが」
 嬲りぬくようなアグスティナの言葉に、公爵は低く告げる。
「恥ずかしがり屋なのだ、アベル、いや、A伯爵は」
 そう言って、愛しげに白い尻を撫でる。
「……ああっ、た、たのむから止めさせてくれ」
 アベルの声は悲しげに濡れていた。
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