燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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(こんな……、こんな!)
 しかも、最初は乱暴だったディオメデスの動きは、リィウスが抵抗をあきらめたときから、徐々に優しい、熱をふくんだものに変わっていった。そのことが、リィウスを一番困惑させ、動揺させる。
 いっそ手荒くされた方がましだった。
 男女ともに早熟なこの時代に、この歳まで純粋無垢に生きていた心身を強引に開かれていく。すでに娼婦たちの手によって開花されつつはあったが、女たちの手管とディオメデスの手管てくだはまるで違っている。
 男の方が男の生理を知っているせいかもしれないが、女たちの動作は、職業的な熱意からくるものだが、ディオメデスの動きは、本能的な情熱からくるものだ。
「はぁ……!」
 女たちにはない激しさを込めて、ディオメデスがリィウスを征服しようとする。
 心では負けたくないと思っていたリィウスも、いつしか忌み嫌う男のもたらす熱によって、身の内に秘めていた火をあおられた。
「ううっ、うううっ!」
 歯をくいしばって〝その時〟をどうにか遅らせようとしたリィウスだが、すでにどうにもならなかった。
「ああっ! あああっ! ど、どうしよう? どうしたら……!」
 そんな、自分でも思いもよらない言葉が口からほとぼしる。
「抗うな、すべて俺にまかせろ」
 リィウスも、言ったディオメデス自身ですら思いもよらない甘い言葉が室に低く響く。
「はぁ……!」
 すでに猛りはじめて身体は止められず、ディオメデスによって、最初の降伏の吐息を吐かされそうになったまさにそのとき――
「おい、もう入っていいのか?」

 一瞬、自分のみならず、ディオメデスさえ硬直してしまったことが、リィウスには意識できた。
「どうだ? 具合はいいのか?」
 酒のせいで赤くなった顔を、さらに卑しくゆがめ、ずかずかと入ってきたのはメロペだった。室に、酒臭さがただよう。
 リィウスは不覚にも悲鳴をあげそうになった。
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