燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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十八

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 リィウスが耳朶も項も赤く燃やして、必死にディオメデスの首にしがみついてくる。そんな無我夢中の様子が、またディオメデスの嗜虐心を強め、喜ばせていることに、やはり気づかない。いや、気づいたところで、もはやどうしようもないのだろう。
「可愛い……。こんなに感じて……」
「ううっ!」 
 リィウスの頬を涙がつたう。蝋燭一本の薄闇に、真珠色の頬に銀色に光るしずくを、舌ですくってみる。甘露であった。
「ううっ……! ああっ!」
 そうしている間にも、右手の指を止めることはなく、リィウスを苛めつづけた。
「はっ……! ああっ!」
「ここがいいのか?」
 ある箇所に力を入れると、どうやらそこはリィウスにとっての官能の泉だったようで、今まで以上に反応がつよくなる。
「いいのか?」
 リィウスは首を振った。だが、
「ん……んん!」
 白い頬は赤らみ、のけぞる項からほのかに桃色の霞が放たれているような官能の発露に、かくしようなどない。
「……ここだな。よし」
「あああああ!」
 唇から漏れるのは、まちがいなく欣悦きんえつの叫びである。
「ああ! も、もう止めてぇ!」
 純潔の喪失に怯える乙女のような悲鳴じみた叫びは、ディオメデスの内の獣を呼び起こしただけだった。
「駄目だ。いいか? いくぞ。好きなだけ叫べ」
 指が、それ自体が、ディオメデスとはべつに命を持ったべつの生物のように、自らの意志をもって動きはじめたようだった。
「はぁっ! ああっ! ああっ! あああああっ!」
 屈辱、恐怖、羞恥、それらを圧倒的にうわまわる、生まれて初めてあたえられた壮絶な快楽に、リィウスはのたうち、数秒後、気を失っていた。

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