燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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「さぁ、準備してやりなさい。もうすぐディオメデスが来るのよ」
 ディオメデスの名にリィウスは背骨を凍らせた。
 あの男がまた来る。リィウスをもてあそび、慰みものにし、犯すために、来る――。
「や、嫌だ、あの男だけはもう嫌だ!」
「なに言っているのよ。客をえらべる立場じゃないでしょう?」
 四肢の自由を奪われ、紐で戒められて不様にうごめくリィウスを、タルペイアが一片の明かりもなき純黒の目で見下ろしている。そして、ぱしん、と平手でリィウスの臀部をはたく。
 一瞬、リィウスは本気で舌を噛もうかと思った。だが、ぎりぎり思いとどまったのは、自分が死ねばこの恥辱と暴行をナルキッソスが受けることになると思い出したからだ。
「うう……」
 死ぬこともできず、苦悶に眉をしかめ額に玉の汗を浮かべながら、ただひたすらリィウスは耐えるしかなかった。
「これはね、今日のおまえの花代よ」
 リィウスの目に入るようにと、タルペイアは小さな革袋から、これみよがしに中の物を取り出す。
 白絹の褥の上に散らばったのは、みごとな蒼玉サファイアだった。
 ひとつ、ふたつ、みっつ……全部で五つある。
「きれいでしょう? おまえの瞳と同じ色よ。これをね……どうすると思う?」
 リィウスはサファイアの放つ妖しい光に一瞬とまどったものの、タルペイアの言葉に背をこわばらせた。
「ふふふふ。おまえの蕾に入れてあげるわ」
「よ、よせ!」
 おぞましさに、いっそう戒められたままの全身がこわばる。
「そして、ディオメデスが来たら、ディオメデスの前で出してみせるのよ」
「い、いやだ! 駄目だ、そんな!」
 そんな浅ましい真似をディオメデスの前に晒すなど耐えられない。リィウスは不自由な身体で、いや、いや、と身を左右によじった。その姿はまた壮絶に淫らであることにリィウスは気づいていない。
「ふふふふ。安心なさいよ。ディオメデスのまえで全部出し終えたら、そのあとはディオメデスが新しいものを入れてくれるわ。おまえの大好きなものをね」
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