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六
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泣き出したくなった。
「子馬に乗る」という言葉が、たまらなく淫らで残酷な行為を予想させ、得体の知れない恐怖をリィウスに感じさせるのだ。
「アスクラ、子馬を用意しなさい」
無情にも残酷な女王は獄卒に命じた。
言われた宦官は室外で控えていた部下たちになにやら命じ、やがてゴトゴトという物音とともに、現れたのは……。
リィウスは息を飲んだ。
全身が鈍色に光るそれは、馬をあしらった青銅の彫刻品だった。
巨大な置物のようにも見える。
だが、背の部分には、天鵞絨の敷布がかけてあり、その上になめした細い革が背から銅にかけて斜め十字にかけられており、革が交差した中央のところには、やはり青銅の突起物が見えた。
「そ、それは……」
リィウスは二、三歩あとずさり、その異物を凝視していた。足が震えているのが知れたかもしれないが、それを気にする余裕もない。
「ほほほほ。どう? 見事なものでしょう」
タルペイアは満足げに、その一個の不気味な芸術品を眺めている。
タルペイアが言うように、精巧に彫られたその作品は、おそらくは名のある匠によって作られたものであるらしく、馬の目といい、鬣といい、実に巧妙にできている。等身大よりかは、やや小さめだが、身近で見ると、充分迫力がある。
リィウスはますます青ざめていた。
「まぁ、そんな怯えた顔になったということは、これの使い方がわかるようね?」
リィウスは首を振っていた。わかるわけがない。わかりたくなどない。
「そうよ。こういう場所に、こういうものがあるということは、もうそれしか使い道がないでしょうよ。ほほほほほ」
のけぞって笑うタルペイアに、ウリュクセスがとぼけた声をかけた。
「いいや、私にはさっぱりわからんね。教えてくれ、ドミナ。この馬はなんのために使うのかね?」
「まぁ、いやだウリュクセス様。おとぼけにならないでください」
「子馬に乗る」という言葉が、たまらなく淫らで残酷な行為を予想させ、得体の知れない恐怖をリィウスに感じさせるのだ。
「アスクラ、子馬を用意しなさい」
無情にも残酷な女王は獄卒に命じた。
言われた宦官は室外で控えていた部下たちになにやら命じ、やがてゴトゴトという物音とともに、現れたのは……。
リィウスは息を飲んだ。
全身が鈍色に光るそれは、馬をあしらった青銅の彫刻品だった。
巨大な置物のようにも見える。
だが、背の部分には、天鵞絨の敷布がかけてあり、その上になめした細い革が背から銅にかけて斜め十字にかけられており、革が交差した中央のところには、やはり青銅の突起物が見えた。
「そ、それは……」
リィウスは二、三歩あとずさり、その異物を凝視していた。足が震えているのが知れたかもしれないが、それを気にする余裕もない。
「ほほほほ。どう? 見事なものでしょう」
タルペイアは満足げに、その一個の不気味な芸術品を眺めている。
タルペイアが言うように、精巧に彫られたその作品は、おそらくは名のある匠によって作られたものであるらしく、馬の目といい、鬣といい、実に巧妙にできている。等身大よりかは、やや小さめだが、身近で見ると、充分迫力がある。
リィウスはますます青ざめていた。
「まぁ、そんな怯えた顔になったということは、これの使い方がわかるようね?」
リィウスは首を振っていた。わかるわけがない。わかりたくなどない。
「そうよ。こういう場所に、こういうものがあるということは、もうそれしか使い道がないでしょうよ。ほほほほほ」
のけぞって笑うタルペイアに、ウリュクセスがとぼけた声をかけた。
「いいや、私にはさっぱりわからんね。教えてくれ、ドミナ。この馬はなんのために使うのかね?」
「まぁ、いやだウリュクセス様。おとぼけにならないでください」
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