燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

文字の大きさ
124 / 360

十一

しおりを挟む
 ウリュクセスも室際で控えている他の宦官たちも、魅入られたようにサラミスを凝視している。
「ああ! いくわ! いきそう!」
「もう? 早いわね」 タルペイアは呆れたように首を振った。
「仕方のない子ね。いいわよ、ほら、」
 パシン、とサラミスの尻はタルペイアの平手を受けとめ、その音が合図になったかのように、サラミスの動きは早まった。
 全身を薔薇色に染め、サラミスは石の馬上でのけぞった。
 熱い吐息を天に向けて放つ。甘い体臭のかおりが漂って、あたりは淫らな熱風に満ちる。
「はぁ、ああっ、あああっ……」
 一人で極めようとしている彼女は、まるで見えない何者かに抱きしめられているような恍惚とした表情になった。
 ウリュクセスはますます興味ぶかそうな顔で、自分をふくめその場にいる全員を無視し置き去りにし、彼女だけのオリュンポスを目指している娼婦を、ふしぎな生き物でも見るような目で見ている。
「はぁっ、あああっ、あっ、いくぅ、いくぅ!」
「いけば? ふふふふ」
 タルペイアは笑いながら、サラミスの太腿を撫で、馬の背から浮き上がっている臀部を撫でた。それがあらたな刺激をもたらしたようだ。
「あっ! やぁっ! ああっ! ああああっ!」
 一瞬、サラミスの生身の身体から、彼女の魂が抜け出て、天井へと向かっていくのを、その場にいた全員が見た錯覚を起こした。
 生まれながらの淫婦、と人は彼女を笑うかもしれないが、この瞬間、彼女の魂は神しか住むことのできないオリュンポスで神々とたわむれることができた。
「はぁ……ああっ……んん」
 リィウスは驚愕しながら、サラミスの様子を見つめていた。
 彼女の身体から、一瞬、頭上に向けて真っ赤な火柱が立ちのぼったようだった。
「ああ……」
 張りつめていた彼女の肢体から、波が引いていくように力が抜けていくのが、はっきりと周囲の誰の目にもあきらかだった。
 陶酔感に酔いしれ、しばしの余韻をたのしみながら、やがてサラミスは下界へどもどってくる。
「ふぅ……」
 余韻が引くのを待ってやってから、おもむろにタルペイアがたずねた。
「気持ち良かった?」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

身体検査その後

RIKUTO
BL
「身体検査」のその後、結果が公開された。彼はどう感じたのか?

処理中です...