燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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十二

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 言葉はなく、ただサラミスはうっとりとした顔で頷いた。驚くほど素直な仕草は、こんな淫靡いんびな光景を見せたあとだというのに、サラミスを純情な乙女のように見せる。
「よっぽど、良かったのね?」
 豊かなサラミスの胸を、いとおしそうに撫でさすりながら、タルペイアが言う。
「うん。良かったわぁ……。まるで、本当に天にのぼるような感じだった……」
「幸せな娘ね、おまえは」
 タルペイアは苦笑して、アスクラに命じた。
「ゆっくりと下ろして。傷つけないように気をつけるのよ。……サラミス、おまえは隅で休んでいるといいわ」
 宦官たちが慎重な手つきでサラミスを馬から下ろすのを見届けると、タルペイアは振り向き、微笑む。
その次に彼女の発した言葉は、リィウスの耳をうたがわせるものだった。
「さ、次はおまえが天へのぼるといいわ」

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