燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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馬上遊戯 一

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「い、いやだ! やめてくれ!」
 リィウスの叫びは、当然のごとくアスクラはじめ宦官たちに無視された。
 ウリュクセスは好奇と好色さをにじませた目で、リィウスの抵抗をながめている。先ほどまでは、たしかにあった知的な雰囲気はもはやない。場合によっては、この男はどこまでも陰険残酷になれるようだ。
 まとっていた衣はあっさりと剥ぎとられてしまい、羽をもがれた白鳥のようにリィウスは無残な姿で、宦官たちに抵抗を封じられ、床の上に立たされた。かろうじて脱がされずにすんだのは皮沓サンダルだけだが、その様子は、なまじ全裸にされるより痛ましく思える。 
「いやだ! やめてくれ! こんなことは嫌だ!」
 自分の代わりにサラミスが痴態をさらしてくれたおかげで救われたと、いったん安堵していただけに、この仕打ちは応えた。リィウスは恐怖とおぞましさ、生理的な嫌悪感に震えずにいられない。
「た、頼むから止めてくれ! やめて……!」
「大丈夫よ。恐ろしいことなどなにもないわ。おまえもサラミスのように天に昇れる気持ちになれるのよ。私たちはおまえを気持ち良くさせてやろうとしているのよ」
 タルペイアはとりつくろったような生真面目な顔で言う。かすかに宦官たちから失笑がわいた。
「ああ……、それにしても……。ご覧になって、ウリュクセス様、なんて美しい身体かしら」
「ふむ」
 ウリュクセスは芸術品を鑑賞するように後ろで手を組み、しごく真剣な目つきでリィウスの、ほとんど一糸まとわぬ裸体を凝視する。
「まったくだ。雪花石膏アラバスターの肌、ほんのり薔薇色の乳首に、あわい鳶色の茂み。まるで神が作りたもうた芸術品のようだね。おや……可哀想に、がおびえてしまっている」
「や、やめろ!」
 伸びてきたウリュクセスの手に、リィウスは嫌悪と恐怖をこめて叫んだが、相手はかまわず、指で抱きしめるようにリィウスの分身をつつみこむ。
「あっ……」
 リィウスは羞恥と恥辱に頬を染めた。逃れたくとも両腕は宦官たちにおさえこまれてしまって動けない。
「あぁっ! ああっ!」
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