燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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 ウリュクセスの指戯に官能を刺激され、リィウスはのけぞった。
「いいわぁ、その切なげな顔。うなじから男の色気が匂ってきそう」
 タルペイアが舌なめずりしそうな顔で感想を述べる。
「でも、悪戯はそれぐらで、ウリュクセス様。リィウスには、これから馬に乗ってもらって、うんと喜んでもらいましょう」
「そうだね」
「やめてくれ!」
 この期におよんでもリィウスは、自分がそんな浅ましい、醜悪な真似をませられるなど信じられなかった。
(こんな、こんなことが……)
 我が身に起こるなど、誇りたかいリィウスには納得できないのだ。 
 身を売ると決めたとき、男たちの性欲のはけ口にされる覚悟はしたつもりだった。ディオメデスの相手をして完膚なきまで精神を痛めつけられ、なかば諦めの気持ちはあった。 
 だが、単に男の相手をするというだけではなく、こんな見世物ように扱われ、複数の人間のまえで、先ほどのサラミスのように恥ずかしい姿をさらけ出すなど、どうあっても清廉なリィウスには承諾できなかった。
「いや、無理だ! 本当に無理なのだ! 私にはできない! たのむから、たのむから……!」
 死にものぐるいで抗ったところで複数の宦官相手にかなうわけもなく、リィウスは青銅の拷問具の前に引き出されてしまう。
「ああ……! いやだ!」
 半泣きになって抗議しても、誰もリィウスの言葉に耳を貸す者はいない。
「そこへ足をかけろ」
 アスクラの無情な命に、リィウスは聞き分けない幼児のように首を横に振った。
「いやだ! 無理だ!」
「困った人ね。そんなにいやなの?」
「あ、当たり前だ!」
 泣きながらリィウスは訴えた。
「そんなことを私にしたら、舌を噛み切って死んでやる!」
 タルペイアの目が剣呑けんのんそうに光る。
「あら、そう? それじゃ、仕方ないわね。リィウスが死ぬというのなら、しょうがないわ。契約書にあるとおり、弟に借金を払ってもらうことになるわね。マロ、今から弟のナルキッソスを呼びに行ってくれるかしら?」
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