燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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「金払いの良い客がいいのか? あの、あのウリュクセスとかいう客を取りたいのか?」
 我を忘れたようなディオメデスが吼えたてるように言う。
「お、おまえ、何故、そのことを知っているのだ?」 
 おぞましい男の名を耳にして、リィウスは血の気が引くのを感じた。
 ディオメデスは顔を真っ赤にしてわめくように言った。
「見ていたからだ! おまえがあいつの前で喘いでいたのを! おまえ、またあいつの前であんなことをしたいのか?」
 リィウスは全身の血が凍り付いた気がした。
 咄嗟に閉じた瞼の裏側に、あのときの屈辱の行為がよみがえる。
 見られていたのだ。あの、おぞましい姿を。
 物言わぬ巨大な性具の上に無理やり乗せられ、すさまじい刺激に禁をやぶってみずから腰をふり、あられもない痴態をさらしたあの恐ろしい夜。
(ああ……!)
 女のようにリィウスは両手で顔をおおった。
 もうディオメデスの顔を見ることができない。目を合わせる勇気もない。
 手酷い精神的凌辱を受けた事実よりも、その痛みに怯え、ディオメデスの目を見れない今の自分がリィウスはなにより恥ずかしく、恨めしい。
 どれほど辱しめられても、動じることなく、頭をもたげ毅然としていたかった。そうすると自らに誓っていたはずなのに、今、ディオメデスを前に顔を伏せている。
(この場から消えてしまいたい。いっそ、死んでしまいたい……)
 弱くなっていく自分が口惜しく、リィウスは唇を噛む。
「おい……」
 リィウスの動揺に、ディオメデスの方があわてた。
「いや、その、俺は……」
 狼狽うろたえているディオメデスなど見たことなかったが、今のリィウスは自分の感情をもてあまし、人のことを気にする余裕などない。
「泣いているのか? リィウス、俺は……俺は、」
 先ほど怒りに顔を赤くしたときよりもさらに頬を赤く染め、ディオメデスはリィウスに手を伸ばしてきたが、リィウスはその手を力いっぱいはたいていた。
「……」
「出て行ってくれ!」
「リィウス、」
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