燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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「ウリュクセス様、私がどんなことでもご命令にしたがいます! 二度と逃げようなんてしません! ですから……、どうかアキリアを許してください」
 ヒュパティアは泣きそうな顔になり、いや、すでに白い頬に涙のあとを輝かせて、ウリュクセスに縋りついた。
「お願いです! アキリアを放してあげて!」
「馬鹿! おまえが頼んだって聞くような相手じゃない! 逃げるんだ、ヒュパティア」
 アキリアの言っていることは事実だろう。膝をついて哀願しているヒュパティアを見下ろすウリュクセスは、かすかな微笑を浮かべている。そこに一片の慈悲も憐憫もないことをリィウスは感じた。
(この男は、楽しんでいるのだ……)
 アキリアやヒュパティアが苦しむのを見て、喜んでいるのだ。
「お願いです! これからは、決してわがままを言いません。どんなお客様の相手でもします……」
 最後の言葉を言いながら、ヒュパティアは泣きだした。
 どうやら彼女はウリュクセスに買われ、彼の命令で客の相手をしているらしい。
 美しい女を商売や政治の交渉の道具に使うことはよくある。側室や愛人に客の相手をさせる男もいるという。実の娘や正妻でも、利になるならば相手の男を妻子の閨へ送りこむ夫や父もこの世には大勢いる。この世界を支配しているのは、そういうことを平然とできる男たちだ。
 女たちも己の肉体や美をみずから武器として使うことはあった。皇帝の妻や娘でも、身体を使って政治闘争を生きぬいた烈婦は歴史上いくらでもいる。
 だが、裾が汚れるのも気にせず跪いているヒュパティアは、けっしてそういう類の女ではなさそうだ。
 見るからに可憐で純情そうな娘である。二十歳は過ぎているようで、この時代ではやや年増といわれる年齢だが、それでもそのたおやかな身体からは、初々しい若さの光がにじみでている。ウリュクセスに買われたのだからすでに処女ではないだろうが、彼女からは清純さと純潔が感じられる。
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