燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

文字の大きさ
207 / 360

十四

しおりを挟む
 見るに耐えないのだろう。ヒュパティアが顔をおおって啜り泣く。
 外見に似合わず、小人たちは的確な性技でアキリアの官能をあおり、秘めていた欲望を引きずり出し、衆目のもとにあらわにさせていく。彼らはこういったことを仕事とするべく、その道の技術を剣技同様にたたきこまれているようだ。
「きひひひひ! どうだ? いくか? ほうら、行け」
「ううっ、ううっ、あうっ、あううっ……ううん……、もう、ああ、もう駄目!」
 哀れだが、彼らの異常に卓越した技の前には、アキリアは子どものようなものだった。もはやなす術なく、身の丈が自分の胸あたりまでしかないような男たちにいいようにされている。女戦士の誇りなど、もはや完全に吹き飛ばされてしまっていた。
 リィウスはやるせなく視線を下ろしたまま、目を上げることができないでいた。そばにいたタルペイアが、そんなリィウスをもどかしげに見ている。
「人のこと同情している場合じゃないのよ」
 タルペイアの声が冷たく響く。
 気づくと、近くにベレニケやサラミスが寄ってきている。
「ねぇ、気づいた?」
 ベレニケの顔は青ざめている。
「……何が?」 
「ここで〝客〟でないのは、私たちだけよ」 
 観客たちは身なりからして富裕層であり、女たちも見るからに地位のたかそうな貴婦人である。愛人や妾側室もいるだろうが、そばには男が必ずいる。
 今ひとつ意味が理解できずとまどっているリィウスに、ベレニケが説明した。
「つまり、私たちはここへ余興のために呼ばれたのよ。他の女たちはもっぱら観るだけの観客。私たちは、観せる方なのよ」
「そうみたいね」
 ベレニケの言葉にサラミスが頷いた。その目は、舞台となった石段の方に釘付けだ。頬がかすかに赤らみ、菫色の双眼は濡れて潤んでいる。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

処理中です...