燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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「よ、よせ! あっ、やめろ!」
 男たちは無言でリィウスの衣を剥いでいく。
 白い胸が、腹が、腰が、どんどんあらわになっていく。
 ほぼ全裸に近いかっこうにまで剝かれたリィウスの両腕と両脇をおさえつけるようにして、二人の兵士は一言も口をきかないまま、リィウスをトュラクスの側へと引きずっていく。
「ああ……!」
 リィウスはトュラクスの顔を見ることができなかった。観客たちの視線より、ウリュクセスの目より、トュラクスの目が恐ろしかった。
 かろうじて腰をまもる帯はゆるされたが、あられもない姿に堪らない羞恥がわく。こんな自分がトュラクスの目にどう映っているのかと思うと、いたたまれない。
 ウリュクセスはじめ、観客たちは、リィウスにとって人の皮をかぶったけだもの同然だった。だが、目の前で四つん這いを強いられている不幸な戦士は、まぎれもない人間である。リィウスにとっては。
 彼の目のまえに不様な姿で立たされている自分がたまらなく悔しい。
 そして……、トュラクスの背にある、悍ましい道具。
 それが、リィウスに身の置きどころのないほどの羞恥を感じさせるのだ。
「うう……」
 俯いていたリィウスの顎に手が伸びてきた。
「しかし、君の肌は美しいね……」
 ウリュクセスの声がねっとりと鼓膜に染みこんできて、リィウスはぞっとした。それは、料理人が料理の素材の良さに満足したときの声のようだった。これから刃物を振り上げ、素材を切りきざむことを考えているのだ。
「なんて白い……。真珠のような肌だね。私は男でこれほど美しい肌を見たことはないな。絹のようななめらかな肌触りだ」
 胸を掌で揉まれるようにして触られ、リィウスはたじろいだ。
「あっ、ああっ……! よ、よせ!」
「白い肌に、ぽつんとみのった赤い実がなんとも色っぽいねぇ」
 ウリュクセスは、言うやリィウスの薄い胸の先端を口に含む。
「あっ、だ、駄目だ!」
 人目も気にせず、男は音をたてて赤い実を吸いあげ、小馬鹿にしたように軽く音をたてて接吻する。前列の客たちの笑い声が聞こえてきて、リィウスは頬に痛いほどの熱を感じた。
「や、やめろ!」
 苦しくなり、眉を寄せて首を振った。逃れようにもリィウスの身体は左右の男たちにしっかりと抑えこまれ身動きできない。
 

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