燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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「ううっ、うううっ、」
 リィウスは今にも絶頂に達しそうだが、その甘い破滅のときは、なかなか訪れない。ウリュクセスがたわむれに絹紐でリィウスの中心を戒めてしまったせいだ。
 リィウスの白い横顔に銀色のしずくがはしる。
 客たちの熱をふくんだ視線に、全身を焼かれる苦しさに悶えつつ、脚に力をいれる。最初はそうすることで、悦楽から逃れようとしたのだが、今では、快楽を待ちわびてみずから身体を揺さぶるために四肢の筋肉を張りつめていた。
 絶世の美青年という言葉がぴったりな美男子のあられもない姿から客は誰も目を離せない。匂うような色気が全身からたちのぼるのを、皆固唾かたずを飲んで陶然とうぜんとなって見つめていた。
 リィウスは、いっそ心のぞうが破れてくれないかと本気で願いながら、この気の狂うような羞恥と恥辱の時間に耐えていた。
 自分にこんな仕打ちを与えたウリュクセスやエリニュスは勿論、タルペイアや、亡父すら恨み、なによりこんなことを強いられて今なお生きている己自身を憎んだ。
 ほとんど生理的にあふれる涙の霞の向こうに、見たくない人物がよぎる。
 ディオメデスだ……。リィウスは発狂寸前になっていた。
 ディオメデスだけではない。アウルスも見えた。背が高いのでよくわかる。おそらくは、メロペもいるのだろう。今のリィウスを見て、さぞ笑っていることだろう。
(いくらでも笑うがいい……!)
 とことん笑って貶められたい。いっそ、そんな被虐めいた気持ちがわいてきて、リィウスは自棄やけになったように自ら浅ましく腰を、動かせる範囲で必死に動かした。文字どおり尻を振って、客たちを沸かせた。
 嘲笑の鞭が音高く響く。
 いっそ、誇りも自尊心も完全に捨てきれるように、とことん責められたい、とすら半ば本気で思っていた。
 すべてを失くしてしまえば、この引き裂かれるような胸の痛みもやわらぐかもしれない。そう思っていたリィウスだが、さすがに見慣れた面影おもかげが視界にかすかに入ったときは、うろたえた。
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