燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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「あっ、や、やめ……!」
「ほら、言ってよ」
「……な、ない、ないんだ!」
「この期におよんでまだ体裁ぶる気なのかい? そんな嘘つくらなら、こうだよ」
「ひぃー!」
 指一本とはいえ、根本までいきなり挿入されたときの感触はたまらない。トュラクスの背で感じたものとはちがい、生身の、血と肉を持った熱い……ナルキッソスの一部なのだ。
「言えよ、ほら、何人の男をくわえ込んだんだい?」
 リィウスは言い逃れできず、震える唇で秘密の言葉を返した。
「ひ、……一人だけだ!」
 事実だった。柘榴荘で散々道具を使って嬲られはしたものの、実際に肌をかさねた相手は、今のところディオメデス一人だけなのだ。トュラクスとは、常に道具を介しての行為なので、本当の意味では交わったとは言えない。
 リィウスが知っている男は、ディオメデスだけだ……。なぜかそのことを思うと、屈辱や恥辱とは別の意味でリィウスは泣きたくなった。
 背後のナルキッソスは、数秒の沈黙のあとに、リィウスの臀部をたたくという仕打ちをした。
「ああ!」
 痛みより屈辱にリィウスは身体を震わせる。だが、背後の弟の声は冷たかった。
「嘘ついたお仕置きだよ、兄さん」
「いや、嘘ではない。彼の〝相手〟はその男と、張り型と木馬だ」
 あざけりを込めたウリュクセスの声にリィウスは瞑目する。ナルキッソスの哄笑に閉じた瞼から涙があふれる。
「へぇー、そうだったんだ。娼館にいてもそうだったんだ」
「ディオメデスがひどく執着してね、柘榴荘にいたときは、他の男には触らせなかったんだそうだ。そのあとはここへ売られてきて、もっぱらトュラクスとつがわせていたのでね。背中でね」
 番わせる、という残忍な表現に、もはや悔しさにふるえる余裕すらリィウスにはない。
「ふうん。それじゃ、僕が兄さんの二番目の男というわけだね。光栄だな」
「や、やめろ!」
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