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砂鐘調教 三
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「まぁーだ。ここは、まだ、ですよ、殿下」
幼子に言うように指でつつきながら、ふざけた口調で言うと、マーメイは貝砂の落ちきった砂鐘をまたひっくり返した。
「さ、リリ、つぎは指三本よ」
「む、無理だ! やめてくれ!」
ラオシンの口調には哀願がこもってきている。
「……マーメイ様、指三本は、まだ少しきつかいもしれません。むしろ、そっちのお道具の方がやりやすいかも」
「あら、そう?」
小卓のうえに置かれてある道具に目を向けたマーメイは考えなおすような顔になった。
「そうね、こっちは細めだから、今夜は太さよりも長さを優先させましょう」
おなじく砂鐘を照らすように小卓に置かれてある銀の燭台のつくるほのかな明かりに照らされて、その不気味な物体は大きく見え、ラオシンを怯えさせた。
「や、やめてくれ……たのむ、もうやめてくれ……」
最初のときのラオシンの命令口調が完全に嘆願口調に変わり、ひそかにマーメイは満足したが、だが、それで終わるわけもなく、室の壁際にある棚からなにやら取り出した。
「大丈夫でございますよ、ラオシン様。これを塗ると痛みをまったく感じることなく、ラオシン様はこの道具で楽しめられますわ」
水晶をくりぬいた小瓶をラオシンのまえにしめす。蝋燭の光にきらきらと輝くその小瓶が、なにやら恐ろしいものに見えてオシンはいっそう怯えた顔になった。王子の威厳も誇りも傷つけられ、気が弱くなってしまったのだ。だが、それでも手負いの若獅子が牙を向けるように、なけだしの気概でもって吼えたてた。
「い、いい加減にしろ! この妖婦! く、来るな! 私に近づくな!」
「あら、まだそんなことを? 頼もしい」
小瓶を振りながらマーメイが笑いながら近づく。
「よ、よせ……」
小瓶の栓がぬかれた瞬間、室内にふしぎな甘やかな香がたつ。
マーメイはまず、ねとりとした液体を自分の手に受けると、ラオシンのまえで、それを淫靡な道具に塗りたくってみせる。
「さ、つぎはわたしがするわ。リリ、変わってちょうだい。砂鐘を見ていて」
「はい」
役割を交換すると、マーメイが今度はラオシの背後にまわり、腰布をたくしあげ、先ほどまでリリにいじられていた彼の秘めた箇所へ指をのばす。
「ああ……よせ……よせぇ」
「まずは玉ふたつぶんまで入れてみましょうね」
「ああー」
指とはまた違う感触がラオシンを悩ませる。ラオシンは怜悧な美貌をゆがませ、苦し気に吐息をはなつ。しっかりと玉綱でしばられた手足はこれ以上はないぐらい張りつめており、今も女たちのまえでぶるぶると震えている。なめし革のようなラオシンの肌のうえでは真珠のような汗粒がころがっている。マーメイは指をのばして、ラオシンの背に輝く汗粒をすくいとった。それは泣くことをゆるされないラオシンの涙に見える。だが、そこで同情をもつような女ではなかった。
「ほら、ふたつぐらいならやすやすと受け入れるわ。殿下の後ろ庭はすっかり慣らされているようね」
「ううう……あっ!」
「これで三つ。いかが?」
「……もう、もう、抜け……抜いてくれぇ」
「だぁめ」
またもふざけた口調でマーメイは反対すると、本当に下町の小娘のように目を好奇心に輝かせ、若い男の臀部を片手で撫であげた。その様子は餌をまえにした黒い雌猫のようだ。
「砂鐘を返します」
リリがそう言うや、ラオシンはのけぞっていた。
「うわぁ!」
「ほうら、これで四つ」
すでに黒い珠は四つめまでラオシンの肉に埋まり、彼をいたたまれなくさせている。
しばらくラオシンの喘ぎ声と蝋燭の燃える音がじりじりと聞こえていたようだが、リリの声がその場の雰囲気をかえた。
「砂鐘、返します」
「ほら、こんどは五つ目」
「あっ、ああ! ああ!」
ラオシンは耐えきれず、全身の身体をゆするようにしてなんとか逃れようとするが、玉綱がきしんで悲鳴をあげるだけだ。
「殿下、がんばって、もう少しです」
リリがしごく真面目に言う。
「リリ、すこし奉仕しておあげ」
「はい、マーメイ様。口でしましょうか?」
「今夜はいいわ。指でしてあげなさい」
「はい」
信じられないような女たちの会話が途絶えると、ラオシンの身体の中心に柔らかい物がふれてくる。
「ああ……」
「そうだわ、リリ、殿下は女性に触れられるのには慣れていないのよ。直接触れては駄目よ。焦らず、じっくり蕩かしていかないと」
「はい」
素直な返事がひびくと、先ほどとは違う感触がラオシンを襲う。それは、ひどくもどかしいものとなった。布ごしにリリのやわらかな手がやさしくラオシン自身をにぎりしめる。
「あっ……。ああ……! はなせ、はなせ、無礼者ども……。ああっ! ああっ! やめ、やめろぉ」
前をリリにもてあそばれ、後ろをマーメイに責められ、ラオシンは生き地獄の苦しみと悶えを経験させられた。
「ああ、ああ……! やめ、やめろぉー」
しばしの煩悶のあと、ラオシンは結局女たちの手によって生き恥をさらすことを強いられる。
夢にまで見た成人の義の日に、それがラオシンの味わった〝初めての夜〟だった。
幼子に言うように指でつつきながら、ふざけた口調で言うと、マーメイは貝砂の落ちきった砂鐘をまたひっくり返した。
「さ、リリ、つぎは指三本よ」
「む、無理だ! やめてくれ!」
ラオシンの口調には哀願がこもってきている。
「……マーメイ様、指三本は、まだ少しきつかいもしれません。むしろ、そっちのお道具の方がやりやすいかも」
「あら、そう?」
小卓のうえに置かれてある道具に目を向けたマーメイは考えなおすような顔になった。
「そうね、こっちは細めだから、今夜は太さよりも長さを優先させましょう」
おなじく砂鐘を照らすように小卓に置かれてある銀の燭台のつくるほのかな明かりに照らされて、その不気味な物体は大きく見え、ラオシンを怯えさせた。
「や、やめてくれ……たのむ、もうやめてくれ……」
最初のときのラオシンの命令口調が完全に嘆願口調に変わり、ひそかにマーメイは満足したが、だが、それで終わるわけもなく、室の壁際にある棚からなにやら取り出した。
「大丈夫でございますよ、ラオシン様。これを塗ると痛みをまったく感じることなく、ラオシン様はこの道具で楽しめられますわ」
水晶をくりぬいた小瓶をラオシンのまえにしめす。蝋燭の光にきらきらと輝くその小瓶が、なにやら恐ろしいものに見えてオシンはいっそう怯えた顔になった。王子の威厳も誇りも傷つけられ、気が弱くなってしまったのだ。だが、それでも手負いの若獅子が牙を向けるように、なけだしの気概でもって吼えたてた。
「い、いい加減にしろ! この妖婦! く、来るな! 私に近づくな!」
「あら、まだそんなことを? 頼もしい」
小瓶を振りながらマーメイが笑いながら近づく。
「よ、よせ……」
小瓶の栓がぬかれた瞬間、室内にふしぎな甘やかな香がたつ。
マーメイはまず、ねとりとした液体を自分の手に受けると、ラオシンのまえで、それを淫靡な道具に塗りたくってみせる。
「さ、つぎはわたしがするわ。リリ、変わってちょうだい。砂鐘を見ていて」
「はい」
役割を交換すると、マーメイが今度はラオシの背後にまわり、腰布をたくしあげ、先ほどまでリリにいじられていた彼の秘めた箇所へ指をのばす。
「ああ……よせ……よせぇ」
「まずは玉ふたつぶんまで入れてみましょうね」
「ああー」
指とはまた違う感触がラオシンを悩ませる。ラオシンは怜悧な美貌をゆがませ、苦し気に吐息をはなつ。しっかりと玉綱でしばられた手足はこれ以上はないぐらい張りつめており、今も女たちのまえでぶるぶると震えている。なめし革のようなラオシンの肌のうえでは真珠のような汗粒がころがっている。マーメイは指をのばして、ラオシンの背に輝く汗粒をすくいとった。それは泣くことをゆるされないラオシンの涙に見える。だが、そこで同情をもつような女ではなかった。
「ほら、ふたつぐらいならやすやすと受け入れるわ。殿下の後ろ庭はすっかり慣らされているようね」
「ううう……あっ!」
「これで三つ。いかが?」
「……もう、もう、抜け……抜いてくれぇ」
「だぁめ」
またもふざけた口調でマーメイは反対すると、本当に下町の小娘のように目を好奇心に輝かせ、若い男の臀部を片手で撫であげた。その様子は餌をまえにした黒い雌猫のようだ。
「砂鐘を返します」
リリがそう言うや、ラオシンはのけぞっていた。
「うわぁ!」
「ほうら、これで四つ」
すでに黒い珠は四つめまでラオシンの肉に埋まり、彼をいたたまれなくさせている。
しばらくラオシンの喘ぎ声と蝋燭の燃える音がじりじりと聞こえていたようだが、リリの声がその場の雰囲気をかえた。
「砂鐘、返します」
「ほら、こんどは五つ目」
「あっ、ああ! ああ!」
ラオシンは耐えきれず、全身の身体をゆするようにしてなんとか逃れようとするが、玉綱がきしんで悲鳴をあげるだけだ。
「殿下、がんばって、もう少しです」
リリがしごく真面目に言う。
「リリ、すこし奉仕しておあげ」
「はい、マーメイ様。口でしましょうか?」
「今夜はいいわ。指でしてあげなさい」
「はい」
信じられないような女たちの会話が途絶えると、ラオシンの身体の中心に柔らかい物がふれてくる。
「ああ……」
「そうだわ、リリ、殿下は女性に触れられるのには慣れていないのよ。直接触れては駄目よ。焦らず、じっくり蕩かしていかないと」
「はい」
素直な返事がひびくと、先ほどとは違う感触がラオシンを襲う。それは、ひどくもどかしいものとなった。布ごしにリリのやわらかな手がやさしくラオシン自身をにぎりしめる。
「あっ……。ああ……! はなせ、はなせ、無礼者ども……。ああっ! ああっ! やめ、やめろぉ」
前をリリにもてあそばれ、後ろをマーメイに責められ、ラオシンは生き地獄の苦しみと悶えを経験させられた。
「ああ、ああ……! やめ、やめろぉー」
しばしの煩悶のあと、ラオシンは結局女たちの手によって生き恥をさらすことを強いられる。
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